極洋、水産商事と食品事業の利益額を3年後同等に 今井賢司社長「真のメーカーとしての食品事業をつくる」

極洋 今井賢司社長
極洋は14日、東京都港区の同本社で年末記者会見を開いた。この中で今井賢司社長は、現在7対3の水産商事事業と食品事業との利益額の比率を3年後に同等にする目標を明かした。直系工場の製品を拡販し、生産性を高めることで収益を積み上げる「真のメーカーとしての食品事業を作る」と強調した。塩釜工場は採算ラインの年間5,400tを今期大幅に上回る見通しで、来期は7,000tが視野入る。カニカマのキョクヨーフーズ(愛媛)も7億円ほど投資して現在の5,000tから7,000tに生産ライン増強を図る計画だ。

今井社長は次期中計について説明した中で「方向性としては、まず事業バランスの均衡だ。水産商事の収益への依存度が高いが、早期に食品事業の収益力を高め、水産商事に肩を並べる程度に拡大することが重要課題だ」と強調した。

そのために「真の食品メーカーを目指し、工場を中心とした商品開発、技術開発を行っていく。生産面では直系工場にロボットによるイノベーションを積極的に取り入れ、ローコストオペレーションを推進し、生産性の向上を図る」。また「水産原料を活用した洋食メニューの提案」などマーケット分析を強化し、強みを生かした取引先との共同開発商品や新しい生産技術による商品開発によって商品群を増やしていくと述べた。

塩釜工場では生産量を来期7,000t、稼働時間を伸ばすことでさらに8,000tも視野に入れる。同工場ではすでに箱詰めに機械を導入、今後パレット積みも機械化する予定だ。キョクヨーフーズは今期、冷凍機を入れ替えて凍結能力を高めた。今後生産ラインの増強に着手し、来年の生産量を7,000t規模にする考え。商品開発についても触れた。「機能性食品やロカボ、ヘルス&ウェルネスをキーワードにした商品など、ニーズを的確に把握した商品開発のスピードアップが重要。人材育成のほか、公的機関や大学との共同研究など多方面からの開発アプローチを考えている」として「より消費者に身近で特徴のある家庭用食品を開発して、極洋ブランドのファンを増やし認知度を向上させたい」と述べた。

現中計で差別化戦略の進捗については「だんどり上手シリーズのラインアップ拡充、本マグロの極み、指宿山川産カツオタタキ、オーシャンキング――など当社の強みを生かした差別化商品の販売を伸ばしてきた」と説明し、特に市販用冷食について「最優先課題であり、時短、簡便、使いやすさにこだわった魚惣菜の商品開発に努めコンビニや量販店への導入が着実に進んでいる」と話した。

また「魚を中心とした総合食品会社として事業展開するが、消費者の嗜好の変化に合わせた商品開発とともに、幅広くカテゴリーを拡大していくことも必要だ。強みを伸ばすとともに、当社に不足している部分を加えることで一層の拡大を望める」とも述べて、事業領域の拡大にも含みを持たせた。

現中計「バリューアップ・キョクヨー2018」ではグローバル戦略として「世界的な水産物需要の高まりを背景に、米国をはじめ中国、韓国、東南アジアにも三国間取引を含めて強化している。国内直系工場からの輸出に向けて、各工場へのHACCPの導入促進、省人化、効率化による生産力の増強を図り、他方で東南アジアへの拠点の分散化も行い供給ルートの多様化を図っている」と説明した。

次期中計における海外展開について「現中計で北米中心に拠点整備したので、これを具体的成果につなげること、また北米ではさらなる拠点拡大を検討する。東南アジア、欧州など選択肢を限定せずに取り組む」とした。鰹鮪セグメントでは今期、完全養殖クロマグロの初出荷が実現した。「次期中計では当事業を収益軌道に乗せる」。また「加工拠点の指宿食品、極洋フレッシュはHACCP認証を取得しており、海外販売を視野に入れている」と述べた。なお完全養殖では種苗生産は今期4万尾から6万尾に増加し、早期に年間200t体制に近づける計画だ。

現中計の最終年度となる今期は売上高2,500億円、営業利益40億円を見込む。中計の数字(売上高2,600億円、営業利益50億円)には届かない予想だが、3年間で売上高は14%増、営業利益は63%増となる。

〈冷食日報2017年12月15日付より〉