ヤマザキ・山崎朝彦社長インタビュー 伸長する中食市場、製品の幅を広げ変化するマーケットに対応

ヤマザキ・山崎朝彦社長
ヤマザキ(静岡県吉田町)は袋物惣菜からサラダを中心としたデリカまで多岐にわたる製品を手がける総合惣菜メーカー。同社は農業から取組み、畑から工場、家庭までをつなぐ「垂直統合型」商品作りを掲げる。今期より、日本惣菜協会の理事にも就任した山崎朝彦社長に、市場の現在と同社の概況について話を聞いた。

――中食・惣菜の市場について

日本惣菜協会の中でも中食はまだ伸びるという見方がされており、すぐにシュリンクする可能性は非常に低いと思う。とはいえ、業態・売場による特性やニーズの違いに目を向け、様々な対応が必要だと考えている。

中食全体としてのニーズが伸びる中、CVSやSMは、引き続き大変有望な市場であると感じる。また、最近はドラッグストア(DgS)でも中食を取扱う動きが見られる。当社の袋物惣菜NB「もう一品」シリーズはSM、DgSなどの業態で幅広くお取り扱い頂いている。DgSでも食品の品揃えに力を入れる動きが見られるが、業態として本来の機能があるはずで、中食がどこまで市場を得ることができるか、当社の商品に限らず注視すべきだと感じる。

宅配・通販という市場も有望な市場だと考えている。従来から続く生協は堅調であり、新たに成功するビジネスモデルも、今後次々に登場する可能性があるため、取り組みを強めていく必要性を感じる。宅配はネットとの繋がりが強まるだろうが、ネットで中食はまだまだ模索中の領域だ。

ほかにも、カフェ業態で中食と外食を融合するような動きも出てきている。消費税増税の際に、(中食には適用され、外食には適用されない)軽減税率が導入されることとなれば、中食・外食の垣根がどうなるか、マーケットが劇的に変わる可能性もある。

これらに対応するためには、製品の幅を増やし、将来的な成長に繋がるようにしたい。

〈省人化・機械化進めるも人手は不可欠、外国出身者の力も〉
――人手不足の影響

当社に限らず、人手不足の影響は深刻で、何か手を打って合理化ができなければ、成長も厳しくなる。惣菜業では 人の力が欠かせないが、省人化・機械化できる部分 もあると考えている。一般的に、現段階で人間1人分の労働を機械化・ロボット化するのに約3,000万円かかると言われている。必ず無くならない仕事に対しては、何とかペイできる金額だ。ただ、それが明日には別の仕事になるような所には、ロボットが使えなくなるリスクがあり、その辺りが難しい。

当社で言えば、充填、殺菌、箱詰めと、調理以降の段階は、検査工程を除き自動化できる可能性がある。ではその前の調理のロボット化は、ものによって不可能ではないかもしれないが、基本的には人の力が欠かせない。

外国人技能実習生の受け入れについて見れば、惣菜業は衛生的な環境で、ある程度合理化された仕事ができるため、他の業界に比べても海外の方々から見て魅力を感じてもらえる仕事だろう。その方々にできるだけ定住的な立場になってもらいたい。そうすれば惣菜業の中にも外国出身で技術を持った人たちが育ち、業界を支える形になるかもしれない。また、日本人の生活のために外国人が作るというだけでなく、日本に入ってきて作っている人は既に惣菜にとってお客様でもある。日本在住外国人という新しいセグメントに対して、惣菜業というのはフレキシブルにすぐに商品を作ることも可能だ。外国人が生活しやすい環境を食べ物の面から作ることに貢献できるのも、惣菜業の一面ではないか。

〈今期は冷凍グラタンに参入、グラタン以外の冷食開発も〉
――前期の業績について

18年2月期のグループ売上高は前年比2億円増の257億円、うち袋物惣菜の売上高は2億円増98億円だった。当社はチルドの袋物惣菜、デリカ(サラダ類中心)、グラタン類が柱だが、デリカの一部縮小があった。一方、袋物惣菜のNBが2ケタ増と好調で補ったが、競合も多く、安心できるとは思っていない。

――今期の計画と方針

19年2月期はグループ売上高7%増275億円、袋物惣菜12%増110億円を計画している。伸長を見込んでいる部分には、冷凍グラタンに参入することを織り込んでいることもある。また、フロチルカテゴリーにも参入予定だ。冷凍食品の開発面では、グラタン意外にも自社の特徴を活かしたものができないか、力を入れて開発している。

デリカでは、CVS向けサラダの鮮度延長に取組み、温度管理を徹底することなどで2日から4日に伸ばすことに成功した。単に日持ちのためではなく、レタスのシャキシャキ感を残すというおいしさのための取組みが奏功した形だ。

これにより、配送エリアを拡大できるほか、昼間集中生産して夕方に出荷できるため、人手不足の中、労務面でも貢献している。

同様にSM向けのデリカ商品は、アイテム数を得意なものに絞り、味の面でもコストの面でも競争力のある商品に集中し、鮮度延長をすることで製造ロットを大きくするようにしている。

営業面ではここ5年ほどは「もう一品」シリーズのブランド化に取組んでおり、場合によってはテレビCMの放映エリア拡大なども検討したい。

また、惣菜は皿の上で食べるだけでなく、パンに挟んだり、回転寿司の上だったりとさまざまな所に登場シーンが拡がっている。大きく拡がりを捉えた中では、業務用への参入もありうると考えている。

もう少し細かい点では、昆布の新商品を和日配の枠にとらわれず、佃煮売場に投入して売場活性化を図ったり、メンマ、ザーサイを漬物売場やチルド中華売場に持っていったり、袋物惣菜をカット野菜売場でクロスMD展開したりと、皆様が惣菜に何を期待しているかを細かく丁寧に営業方針に盛り込んでいこうとしている。

〈8月末に合理化・生産性を高めた新工場稼働計画〉
――ヤマザキグループ総合研究所設立から1年が経過した

分散していた各部門を1カ所に集め、原料調達から商品開発、マーケティングから営業まで垂直統合で一貫した体制を目指した。単に建物を作っただけではなく、開発スピードが上がり、ノウハウの蓄積が進んでいる。情報の集約拠点ができたことで、他の部署の動きが見えて、集まって議論する密度と深度が上がったことは大きい。

――生産設備面での計画

本社・グループ総合研究所と同じ敷地内に、8月末の稼働開始を目指し新工場を建設中だ。川尻工場の袋物惣菜、グラタン類のユニフーズの工場を拡大移転するとともに、野菜の下処理・原料加工する工場と、3工場を1カ所にまとめた新工場となり、全体を合理化・生産性を高めている。グラタン類の乳製品に加え、野菜加工工場ではピューレを作るラインもあり、可能性としてはチルドスープを作ろうという構想もあり、幅広い製品を手掛けることができる。

〈冷食日報 2018年8月8日付・9日付より〉