ヤマザキ ポテトサラダの看板商品化に着手、袋物惣菜は多くのチャネルで可能性/山崎朝彦社長インタビュー

ヤマザキ 山崎朝彦社長
2019年2月期のヤマザキグループ売上高は5%増270億円と増収だった。うち、袋物惣菜の売上高はPB(プライベートブランド)・NB(ナショナルブランド)含めて5億円増103億円と、約5%増加した。

同社は17年6月に静岡県吉田町に「ヤマザキグループ総合研究所」を開設。研究開発・原材料調達・マーケティング・品質保証・営業拠点を集約させ、農業から取組み、畑から工場、家庭までをつなぐ『垂直統合型』の商品づくりを加速させた。さらに、18年8月、同研究所と同じ敷地内に吉田住吉工場を竣工し、原料野菜の下処理をする「原菜加工センター」および、「チルド包装惣菜(袋物惣菜)製造工場」、グループ会社であるユニフーズ社の大手CVS(コンビニエンスストア)向け「グラタン製造工場」を1カ所にまとめることで、合理化・生産性の向上を図っていた。山崎朝彦社長に話を聞いた。

――袋物惣菜の市場環境について

CVS、食品スーパーが我々にとって主要なチャネルであることは言うまでもないが、DgS(ドラッグストア)は引き続き注目の市場だ。ただ、生活雑貨・調剤を重視するところと、食品にしっかり取り組むところと二極化すると思う。食品を重視する企業からすれば、袋物惣菜は一般加工食品と比べてある程度の“出来立て感”があるという市民権を得て、惣菜らしさを表現できる商品となってきている。こういう方々と積極的に組み、売場を作ることでDgSの惣菜で一定の役割を果たせると思う。

次に注目しているのが、生協などの宅配チャネルだ。どのようにお客様に届けるか、物流がますますキーになってくる。当社は家庭で使う調味料を使った惣菜づくりを目指しており、それをご理解いただけるチャネルでもある。まずは地道に、生協様の共同購買の商談に時間を割いて取り組んでいる。

宅配は恐らく、アマゾンのような所を含め、まだまだ新しいものが出てくるだろう。たとえば牛乳宅配や新聞販売店は、自宅までの配送網が伸びており、彼らが新しいサービスを展開しようという動きも出てくるだろう。我々の商品は宅配にきちんと乗せられる形になっていると思っており、まだ顕在化していないチャネルだが、チャレンジしていきたいと思う。

もう1つ顕在化していない市場として介護市場が挙げられる。介護保険の予算の中で行われるので、非常にコストを求められる一方で、おいしいものを食べたいというニーズは高まっている。以前はコスト面で折り合わなかったが、今は既にいくつかの介護食業者から、ポテトサラダ等サラダ系の商品への引き合いが出ている。現時点で介護食商品を開発しようという意図はないが、既存品でも介護食として使える商品もあり、見逃せないチャネルだと捉えている。

さらには、調理現場の人手不足の中で、外食での引き合いも増えている。袋物惣菜はオペレーションの容易さ、廃棄ロス削減など外食の調理現場でも便利な商品として認知されてきており、我々もしっかり取り組みたい。

〈2~3期先に冷食を40~50億円のビジネスに、冷凍惣菜も検討〉
――今期の重点施策

1つの方針として、“ポテトサラダ”の看板商品化に取り組みたい。いわゆるプロモーションをしていこうということではない。当社の中ではまだ10数年の新しい商品で、社内でもポテトサラダが看板商品と腹が固まっていない人も多い。まずは社内でその意識を植え付けたい。そして、最も重要なのは「味」にほかならない。毎日のようにブラッシュアップしていこうという風土があってこそ、本当の看板商品になっていく。素材の切り方、蒸し方の調整など改善のポイントはいくらでもあり、おいしい商品づくりを追究し続けることを社内一丸でやっていく。それができて初めて、プロモーションにも繋げられるかもしれない。

――今年6月1日付で、袋物惣菜38品で2.8~3.4%値上げする価格改定を実施した

原材料や物流費などのコスト増のためだ。コストダウンの工夫はさまざまに進めているが、コストダウンでできた原資は、従業員の昇給等に充てることが現状の優先課題だと考えている。単純に収益を拡大したり、もっとリーズナブルな価格の商品を出したりすることは、社会情勢を考え、求められる仕事かを慎重に判断しなければならない。消費税増税を考えれば、従業員の給与をせめて2%上げないと生活水準が下がってしまう。省人化の取り組みもいろいろ進めている。ユニフーズのラインは1つのモデルケースで、従来のベンダー型の工場と比べると半分以下の人で運営できている。人がやらなくても良いところは徹底的に機械化しながら、人がやるべきところは人がやるという切り分けを進めている。

――グラタン類での商品拡大について

言葉の捉え方によるが、NBの商品は現時点では取組めていない。一方で、大手CVS のPB 以外に、量販店や卸企業の留型という形では当社の名前が付いた商品を作るようになっている。

自分たちのブランドの袋で商品を並べるのが手っ取り早いが、現行のいわゆる市販冷食NBは損益分岐点が高すぎて、体力的に追いつかない。おいしさを追求し、より付加価値があるもので、単価もある程度取る商品で勝負していく。温度帯では、現時点でフローズンチルド、フローズン双方で取り組んでいる。

――中長期的な目標・計画

商品のバラエティをしっかりと確保しながら、事業拡大を図っていきたい。前述のグラタン類、外食向けなども含め、惣菜の新しい形を模索しながら目指していく。

生産設備の投資では、2020年秋にCVS 向けカットフルーツの工場が稼働し、この事業をしっかり確立したい。その先は、2~3期先に冷食をおよそ40~50億円の商売にしたい。グラタン類だけでなく、冷凍惣菜も積み上げることを考えている。

〈冷食日報 2019年8月26日付〉