マルハニチロ コロナ禍で2ケタ増推移、米飯・麺・農産が大幅増/綿引建司市販用冷凍食品部長インタビュー

マルハニチロ・綿引建司市販用冷凍食品部長
――2019年度の業績振り返り

家庭用冷凍食品ユニットの連結業績は、売上高6億円増596億円、営業利益1億円増16億円と増収増益だった。市販冷食は合計で3%増だった。前半は麺・米飯の値上げもあり厳しかったが、下期以降販促強化策を打ち出し、コロナ禍もあって期末の3月に押し上げられた。収益面では、昨春の麺・米飯値上げおよび売上増による効果で増益となった。労務費は増加したが、生産効率の改善も引き続き行っていることも寄与した。

カテゴリー別では、弁当品99.5%、惣菜100%、米飯113%、麺111%、ピザ94%、グラタン95%、農産108%だった。弁当品は前年を若干下回ったが、19年春発売の「ブロッコリー3種のおかず」が好調だったこともあって市場を上回った。惣菜は今春新商品の「五目シュウマイ 香りと旨み」を含めてシュウマイ系中華惣菜が好調だったが、全体では前年並に留まった。

米飯は昨春より展開する「WILDish」の個食提案がうまくいき、上乗せとなったほか主力の「あおり炒めの焼豚炒飯」「炒飯の極み」も後半に伸びて2ケタ伸長、麺類は昨秋、主力の「横浜あんかけラーメン」「五目あんかけ焼そば」でCMを投入するなど販促を強化したこともあり2ケタ伸長した。

2019年度の重点施策としては、米飯・麺類の主食系商品の強化が挙げられ、前述の通り販促強化、CM投入なども実施し、成果を上げることができた。個食提案強化では、「WILDish」を中心に、モンスターハンターとのコラボ、実演販売士・レジェンド松下さんとのコラボ販促などを実施し、成果を上げることができた。

――コロナ禍の影響を受けた足元の状況

市販冷食合計で前年比推移を見ると2月110%、3月120%弱、4月120%、5月110%と伸長している。この間、米飯・麺類は150%強、農産品が130~150%など大きく伸長している。反面、学校が休校となった影響もあって、当社で構成比が高い弁当品が80%台となり足を引っ張った。

チャネル別では、SMが110%ほどと伸長する中で、CVSで130~140%、ドラッグで150%と、他のチャネルはそれを上回るほどの伸びとなっている。

生産面では、供給を維持するため増員・時間延長で増産して対応した。また、主力品に集中するため6アイテム▽豚カルビねぎ塩焼そば▽そばめし(400g)▽ペヤングそばめし▽WILDishチキンライス▽同エビピラフ▽パイシート(現在は販売再開)――を休売とした。

原料調達面では、3月には輸入原料で若干の影響があったが、現時点ではコロナ禍の影響はほぼない。

総じて見れば、コロナ禍から市販冷食の需要が高まり、物量が急激に増加したが、調整しながらうまく乗り切ることができた。一方、弁当品の在庫が増加したが、底は脱したと見ており、今後おかず提案など店頭訴求も強化したい。

〈コロナ以降は情報発信強化、「WILDish」はさらなる認知度向上を〉

――今期の方針

売上をきちんと増やし、工場稼働率を高めることが1つの大きな目標だ。コロナ禍以降、米飯・麺類・惣菜を中心にベースは上がると見ており、弁当品が不調でも105~106%程度に伸長するのではないか。コロナ禍が収まる中では、お客様への情報発信も重要となる。SNSなどを使ったブランディング活動や弁当品のおかず提案など実施していく。

「WILDish」については、個食の容量なので単価は安いが、ユニットプライスとしては高い商品だ。今般のコロナ禍の中での販売増やCMなどでお皿の要らない「個食」商品であるという認知度は高まったとは思うが、まだまだの部分もあり、さらなる認知度向上を図りたい。

また、物流費や労務費が確実に上昇しており、経費負担となっているが、簡単には解決できない課題だ。在庫の削減など効率化を図るとともに、単品ごとに損益を改善できるよう努めたい。

〈中食惣菜に品質・価格で勝てるような商品開発を〉
生産面設備への投資では、中長期的には増強することも検討するが、今期に関しては老朽化した設備の更新程度にとどまる。

キャンペーンとしては、現在(4月1日~7月31日)、「五目シュウマイ」を対象に平野レミさんとのコラボで「レミパン」や調味料セットが当たるキャンペーンをWEB上で実施している。

――中長期的な課題は

中長期的には、弁当品の拡大はあまり考えられず、重点カテゴリーでもある惣菜の品質向上が必要だと考える。ただ、揚げ物であれば中食惣菜との競争となるとどうしても厳しい面もあり、たとえばシュウマイやギョーザなど、中食惣菜にも品質・価格で勝てるようなカテゴリーで商品開発をしたい。

また、それとも関連して冷食全体のベースは増えていくと考えられ、生産ラインの再編も含めて考えていかねばならない。

〈冷食日報2020年7月2日付〉