外食市場は回復傾向も前年割れで推移、「Go To Eat」に期待の声

2020年1月~8月の外食産業市場動向(全店、前年同月比)
外食市場は依然として前年を下回る水準で推移しているものの、緊急事態宣言の解除後から回復傾向にある。テークアウトやデリバリーに活路を見出す企業もある中、業態変更や本来の営業とは異なる取り組みを行うなどの変化も見られる。「Go To Eat(ゴートゥーイート)」キャンペーンへの期待も大きく、中小店や大手チェーンらの参画も目立ち始めた。

業界関係者は「売上は3月・4月に比べて回復したが、やはり前年ほどではない」と語る。様々な施策を打ち出すことで多くの企業で売上は徐々に回復している。しかし、ファストフード業態を除くと、ほとんどは前年を下回る水準にある。

日本フードサービス協会が発表した2020年1~8月の外食市場の動向は、2019年同期比16.9%減となった。緊急事態宣言に伴う外出自粛などで全体的に客数は大幅に減少した。特に飲酒を伴う業態は影響が大きい。その中で、ファストフード業態のハンバーガーチェーンなどの洋風業態は、元々テークアウトの需要が高く、売上は前年同期比5%増と、コロナ禍でも売上を伸ばした。

客単価もデリバリー需要の伸長で、前年同期比17.7%増と大幅に増加した。「モスバーガー」の広報担当は「店内喫食の比率が下がり、テイクアウトやデリバリーの比率が上がった。売上も伸長した」と話す。

和風や麺類など、他のファストフード業態は軒並み前年割れだった。4~5月に大型のショッピングモールなど商業施設の閉鎖や時短営業の実施などで苦戦した。

ファミリーレストランの売上高は前年同期比24.1%減となった。大手チェーンはデリバリーやテイクアウトの強化を進めている。焼肉業態などは直近の売上が前年同期と同水準まで戻りつつある。

売上の落ち込みが激しいのは居酒屋業態とディナーレストラン業態で、居酒屋業態は前年同期比45.9%減、ディナーレストラン業態は63.6%減だった。

居酒屋業態の関係者からは「ふらっと立ち寄っていただけなくなった」、「宴会など大人数で集まってもらうことを前提としてたため、この需要がなくなり回復は遅れている」などの声が寄せられた。

〈産業構造も変化か 、「Go To」期待も〉
飲食業界は急速に変化している。テイクアウトメニューの強化や、デリバリーは多くの店で実施している。これまで行っていなかったランチ営業を新たに始めた飲食店もある。

特にデリバリーは、海外と比べて日本の市場は非常に小さい。韓国は10%、中国やイギリス、オーストラリアなどは8%と言われている。しかし、日本は3%程度と規模は小さい。今回の新型コロナにより需要の高まりを期待する声もある。

出前館やUberなど既存のプレイヤーに加えて、ドイツのデリバリーサービス「foodpanda」は現地法人を立ち上げて2020年10月から本格展開を開始した。加盟店数の一層の拡充を図る。フィンランドのフードデリバリーサービス、「Wolt(ウォルト)」も、今年3月から広島でサービスを開始し、10月22日からは東京でのサービスをスタートしている。

10月から開始した「Go To Eat」キャンペーンも業界からの期待は大きい。予約サイトの事業担当者は「問い合わせは非常に増え、中小規模の飲食店に加えて、普段は行きにくい高級店からも多数問い合わせがあった」と話す。

別の予約サイトの担当者は「これまで当社の予約サービスは、ある程度の規模間の飲食店で利用されてきた。今回のキャンペーンで、小規模かつ単価の安い店舗の加盟も増えた」と語る。大手飲食チェーンも参画を続々と表明している。居酒屋チェーンのワタミでは、キャンペーン初週で客足の大幅な改善が見られたという。レインズインターナショナルで運営の「土間土間」でも予約は大きく伸長した。

物語コーポレーションで運営の「焼肉きんぐ」や、DDホールディングス、スシローグローバルホールディングスらもキャンペーンへの参画を発表している。

一方で、一部の中小の飲食店からは「手続きが煩雑」、「効果が見込めない」などの声もあった。

回復傾向にある中で、新型コロナの「第3波」に危機感をにじませる人もいる。各社とも、先が読めない中、様々な可能性を考慮しつつ施策を打ち出し続けている。

〈冷食日報2020年10月27日付〉