ニチレイフレッシュ「グループ全体で提案力を強化」、水産の苦戦を畜産でカバー/2020年末会見・金子社長

ニチレイフレッシュ・金子義史社長
ニチレイフレッシュの金子義史社長は12月8日開催されたニチレイグループ年末会見で、2020年度業績見通しと主要な取り組みについて説明した。

水産事業は主要販売ルートの外食産業の低迷で苦戦するが、畜産事業は食品スーパー向けの強化により増益とすることで、全体では減収としながらも増益を見込む。持続可能な社会の実現に向けた取り組みについても強調した。金子社長は会見で、以下のように説明した。

〈ニチレイフレッシュ・金子義史社長〉
2020年度上期は連結売上高705億円、営業利益6億円で減収増益となった。新型コロナウイルス感染症の影響で主に外食向け販売が低迷し減収となったが、内食・中食需要の取り込みに注力し、増益を確保した。

水産事業は上期売上高293億円、営業利益はゼロと減収減益だった。ここ数年注力してきた外食向けが大幅減少、主力のエビが苦戦した。通期では売上高600億円、営業利益2億円を見込む。注力してきた外食向けは主力とする回転ずしに回復の兆しが見られる。巣ごもり需要は底堅い。これらに適切に対応していきたい。

柱の事業となるベトナムTPS(Trans PacificSeafood)社が2020年で2年目となるが、順調に拡大している。当初100人から2年かけて400人体制となった。今月もフル操業している。寿司ネタが中心だが、日本向けだけでなく外国向けの生産や、サケの骨取り製品なども始めた。

畜産事業は上期売上高412億円、営業利益6億円で減収増益となった。外食・中食向け輸入品が減少したが、生協や量販店向けに国産品中心に内食・中食需要を取り込み増益となった。通期で売上高860億円、営業利益13億円と前期より4億円増益を見込む。外食は下期も引き続き厳しい状況が見込まれるが、精肉売場や加工品の販売に注力するとともに、SM(食品スーパー)向けに生鮮食肉の加工・包装・出荷を担うプロセス事業の稼働を向上させることで、通期の増益を見込む。

九州を中心とした西日本の鳥インフルエンザについて、この時期にこれだけ発生するのは過去に例がない。年末に向けて供給面の心配がしばらく続くと予想している。お客様の棚に物がなくならないような活動をしていきたい。

通期業績は売上高1,460億円、営業利益15億円と減収増益を見込む。水産・畜産事業のこだわり素材をニチレイフーズに供給するなどグループの総合力をさらに発揮していく。素材供給に加えて、今後、新たに求められる商品に対応するため加工技術や生産機能を含め、グループ事業間で情報を共有し、グループ全体で提案力を強化していく。

ニチレイグループの中で唯一、一次生産者と深くかかわっており、産地から食卓までを丁寧につなぎ、個々の商品に込められた思いを生活者に心を込めて伝えていくという信念をもって事業を継続していきたい。

〈水産認証、ミライ・ミートなど積極取組〉
マーケティング視点のトピックスとして3点挙げた。

1つはSDGs 関連。水産事業ではASC、MSC認証の水産物の取り扱いの増加。2006年からインドネシア・カリマンタン島では持続可能なブラックタイガーの粗放養殖と、マングローブの植樹による自然保護活動“生命の森”プロジェクトを始めている。近年はさらにスマトラ島のバナメイエビでも活動を広げた。

畜産事業では同社が養鶏・販売している「純和鶏」が10月に持続可能性に配慮した鶏肉の特色JASに認定された。農林水産省認証による鶏肉の特色JASとしては国内第1号となる。金子社長は「大手量販店から多数の問い合わせがあり、想定以上の反響をいただいている。今後も純和鶏の養鶏・販売を通じ、持続可能な社会の実現に貢献していきたい」と話した。

もう1つが昨年発売した水産加工品の「だしの恵み」シリーズ。当初想定していた外食ルートはコロナ禍で苦戦したが、巣ごもり需要の拡大や老健施設など新たな販売ルートで販売が拡大している。既存の4品に加えて今秋は「赤魚竜田揚げ」など3品を追加した。

3つ目が「MIRAI MEAT(ミライ・ミート)」プロジェクト。次世代のアスリートをネットで公募し、オメガ脂肪酸を豊富に含んだ、同社の畜産品「亜麻仁の恵み」でサポートしている。

〈冷食日報2020年12月14日付〉