日本アクセス 情報卸・EC活用などデジタル化を加速、「BtoBの先のtoCへも」/佐々木淳一社長・2021新春インタビュー

日本アクセス・佐々木淳一社長
――2020年度の業績概況と総括

上期(4〜9月)連結業績は、売上高が前年同期比0.1%増1兆0,995億8,900万円、営業利益21.1%減80億2,000万円、経常利益20.4%減82億9,100万円、純利益17.9%減58億6,100万円と、増収減益となった。

売上では、業態ごとに好不調の明暗が別れた。スーパーマーケット、ドラッグストア、ディスカウントストアなどの量販店は前年比2ケタからそれ以上伸びたところもあった。

一方、外食チェーンは緊急事態宣言下の4〜6月が特に苦戦し、徐々に回復するも平均で10%減前後となった。コンビニエンスストアはコロナ禍の影響でテレワークなどが進み、オフィス立地を中心に苦戦した。

利益面では、ロジスティクス事業でコンビニエンスストアの通過額が減少する一方、固定費は変わらず、物流受託収益が悪化したことが影響した。また、純利益では4月末に宮城県岩沼市の物流拠点で火災が発生し、特別損失約17億円を計上したことも影響した。ハブとなるセンターの火災により横持ち費用が発生した。

コロナ禍で状況が大きく変わったため、本来、今期は3カ年の第7次中期経営計画最終年度だったが、昨年2019年度は増収増益で純利益140億円をクリアしたため、前倒しで達成したものとみなし、あえて1年間の短期経営計画と位置づけ取り組んだ。コロナ禍で見えた課題を先送りせず業務改革を推進することを目指した。

コンビニエンスストアや外食がコロナ禍等で苦戦しているが、ライフスタイルが変化する中で元に戻るとは限らない。大きな課題の1つとして、仮に90%の売上になっても収益をあげられる体質、ビジネスモデルを作ることが挙げられる。

また、ここまで巣ごもり需要で好調な量販店がコロナ禍の収束後どうなるか。元に戻るのではなく、安定したビジネスになるようにしなければならない。

――消費環境・市場環境をどう見るか

新常態が続く中で、大きな流れの変化がある。具体的には、コロナ禍の影響で雇用者数減、残業減で可処分所得の減少が始まっており、財布の紐が固くなり、価格志向が鮮明になる。当然毎日の食にも影響があり、少しでも安くという動きはすでに出てきている。コロナ第3波もあって、2021年の消費環境は非常に厳しいものとなりそうだ。

食品流通においては、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアなど業態を超えた競争が激化し、中でも低価格のディスカウントストアが強さを見せてきている。

さらに2020年2月以降は巣ごもり消費の特需があり、そのウラに当たる2021年は普通にやっていては前年比90%ほどにもなりかねない。メーカー様の力も借りて販促を強化し、売上拡大を続けるよう取り組みたい。

当社の取り組みの1つとして、12月16日に結果発表した「フローズン・アワード」がある。冷凍食品・アイスクリームの人気商品を消費者投票で選出するもので、今回で8回目を迎えた。グランプリ、各部門上位の商品について掲出するPOP、チラシ等販促物を作成し、2021年1月から全国の量販店で店頭販促につなげていく。

――デジタル化の取り組みについて

従来から進めていたデジタル化がコロナ禍で早まった。当社では、子会社のD&Sソリューションズの機能を活かし「情報卸」を標榜し、デジタルマーケティングを進めている。D&Sソリューションズを窓口に店舗のID-POSデータを分析し、購買履歴を基に個々の消費者にクーポン、ポイント等を提供する、実質的なダイナミックプライシングを実現し、販促に繋げる。既に上期、有力量販チェーン4社と具体的な実証実験を進めている。この分析を踏まえ、多くの小売業との取り組みを進め、この事業単体での収益化を目指す。

また、Eコマースでは従来のBtoBにとどまらず、BtoBtoCの機能を強化している。2019年1月、Amazonマーケットプレイス内に「SmileSpoon」の屋号で出店を開始。2020年6月に楽天、10月にYahoo!と3大EC事業者への出店を果たした。当社倉庫に3温度帯の商品を保管し、自社庫出しによるドロップシップモデルの構築を目指している。Webマーケティングおよび「toC」までのラスト1マイルのノウハウ蓄積を目指している。

〈冷凍マザーセンターが始動、物流の課題解決へ〉
――物流の社会的課題解決への取り組み

当社は「冷凍マザーセンター構想」を掲げ、2020年11月、埼玉・岩槻に「関東フローズンマザー物流センター」を設置し、冷食・アイスの大手メーカー10社と試験運営を開始した。物流機能を川上領域にまで拡大するもので、メーカー工場から各センターへ運ぶのではなく、マザーセンターで一括仕入れし、そこから各センターへ横持ちする。これにより、特に冷凍で物流がひっ迫している中にあって〈1〉取引メーカーの営業倉庫に対する寄託在庫の削減〈2〉受発注集約で業務効率化〈3〉納品車両の集約による物流削減〈3〉パレット運用による荷降ろし時間短縮と待機時間解消――という4つのメリットがある。

今後、半年から1年で費用・運用面を検証し、1〜2年のうちに全国への展開を進めたいと考えている。また、その先にはチルドでも同様の取り組みも検討したい。

――2021年の方針と中長期的な取り組みについて

コロナ禍の影響があり、アプローチには変化があるが、フルライン卸戦略の実行や、生鮮・デリカ・外食事業の中核事業化といった重点施策を進めていく。

具体的に、デリカでは昨年、惣菜メーカーのカネ美食品に出資し、新しいスタートを切った。量販デリカ、CVS(コンビニ)デリカ、外食デリカといった3つの業態に横串を通す。そして商品開発を強化し、SPAとして多くのチャネルに拡販していく。たとえば、外食のブランドを活かした商品を開発して、ECも含めた各チャネルで売っていくビジネスモデルを作る。これにより、コロナ禍で変化した環境に対応し、生鮮・デリカ・外食事業の強化につなげる。

また、中長期的な取り組みとして、SDGsを重要な目標と捉え、持続可能な社会の実現に貢献しようと「日本アクセスSDGs宣言」を行い、取り組みを強化している。その特長は単なる言葉の宣言ではなく、2030年で目指す定量目標を定めていることだ。組織全体で具体的活動を展開することで、持続可能な社会の実現を目指していく。

〈冷食日報2021年1月14日付〉