台湾政府、冷凍フルーツ「釈迦頭(しゃかとう)」日本への輸出拡大目指す

台湾産フルーツ「釈迦頭(しゃかとう)」
台湾国際貿易局および台湾貿易センターは今月以降、台湾産フルーツ「冷凍釈迦頭(しゃかとう)」の日本へ向けた輸出強化を進める。9月24日、都内で台湾冷凍釈迦頭記者会見を開催し、台湾貿易センター東京事務所の陳英顕所長らが台湾釈迦頭の特徴や、今後の展開などについて説明した。

釈迦頭(しゃかとう)は、日本ではあまり馴染みがないが、台湾では非常に人気のあるフルーツの1つだという。台湾釈迦頭には2種類あり、現在台湾国内で主に流通しているのは「大目釈迦」(釈迦頭、バンレイシ)という種類。口当たりが非常になめらかで、甘さが際立つ特徴を持つ。

もう1つの「パイナップル釈迦(アテモヤ)」という種類は、弾力ある食感で甘さの中にも酸っぱさがあり、パイナップルの香りが特徴だ。通年海外に輸出されているフルーツの中でも不動の人気を誇るという。

生鮮の釈迦頭は長期の保存と運搬にあまり適さないため、台湾の台東県では5年をかけて改良を行い、釈迦頭の追熟と冷凍果実の新しい技術を開発した。この技術で、冷凍解凍後でもとろけるような口当たりと濃厚な甘みは変わらず、よりジェラートに近い味わいを可能にした。

また、パイナップル釈迦についても、冷凍技術を開発し、現在商品化のテスト中で、日本市場への投入は年末から年明けを見込む。この品種は解凍後の食べるタイミングを注意する必要がある大目釈迦と比べると冷凍・解凍後でも食感が変わらず楽しめるという。

なお、生の釈迦頭は現在、日本への輸出は許されておらず、冷凍釈迦頭としての輸出拡大を図る。

〈情報発信強化で知名度向上図る、加工品流通も検討〉
現在、日本ではHarawii(富山県富山市)1社が冷凍釈迦頭の輸入を行っている。同社は2018年11月に設立。2019年3月、FOODEX JAPANで冷凍釈迦頭5トンを日本初輸入し、これまで各SNSなどでPR活動を行ってきた。日本での課題は釈迦頭の認知度の低さにあり、今後も情報発信を強化する構えだ。

また、アジア最大級の旅行体験・オプショナルツアー予約サイトの「KKday」では、コロナ禍の影響がある中で台湾フルーツのECでの取扱を強化。コロナ禍で旅行が難しい中、前年比700%増の約16トンと販売が拡大しているという。同社でも台湾釈迦頭応援企画として、冷凍釈迦頭のお試し5~10%割引キャンペーンや、SNSを活用したプロモーション、釈迦頭オンラインツアー実施による認知・理解度アップなどの施策を進めるという。

釈迦頭はビタミン、ミネラル、タンパク質、食物繊維が豊富で栄養価も高い果物だ。生で味わうだけでなく、冷凍やペーストに加工するほか、ジェラートやアイスクリーム、ドレッシングにも応用されるなど調理法は多岐にわたる。今後、日本市場においてもペーストなどの加工品の流通も検討しているという。

〈背景に最大輸出先・中国の禁輸も〉
今回、台湾が政府を挙げて日本などへの輸出拡大を図る背景には中国との関係が挙げられる。2021年1~8月の台湾フルーツの輸出先では、中国が前年比33%減7万1006トン、日本が2倍以上の144%増3万5926トン、香港が64%増2万2063トンなどとなっている。

中国への輸出が減っている背景には、対中輸出額1位のパイナップルが今年3月から禁輸となったことが要因として挙げられる。

さらに陳所長によれば9月19日に突然、翌20日から、対中輸出額2位の釈迦頭、3位の蓮霧(レンブ)も禁輸が告げられたという。その理由として中国側は虫害の影響を挙げるが、政治的な背景もあると考えられる。

輸出額のうち中国向けの割合は、釈迦頭は95%、蓮霧は93%を占める。日本を始めとする東アジア各国で釈迦頭と蓮霧の海外販売目標を掲げ、バイヤー誘致の強化を目指す。

なお、陳所長によれば、現在冷凍釈迦頭の日本への輸出量は7~8トンだが、今年は15トンほどを目指すという。

〈冷食日報2021年9月28日付〉