「小正醸造 嘉之助蒸溜所」を竣工、ウイスキー事業に参入

小正醸造はウイスキー製造販売に参入した。「小正醸造 嘉之助蒸溜所」を竣工し、24日に、施工業者と日置市長など来賓合わせて100名超を集めて落成式とプレス発表会を行った。3月21日に起工し、11月9日にウイスキー製造免許を付与された。総工費10億円。来年4月に、ニューポットの販売を開始し、樽熟成したウイスキーの販売は3年後となる。当面はフランスなどヨーロッパでの販売を中心として、国内では丁寧なマーケティングと販売を行う。ブランド名は「KANOSUKE」。新蒸溜所の裏手はすぐ海で、夕日の美しい砂丘として知られる。バーカウンターなども設置した。観光スポットとしても準備をすすめる。来年4月には一般開放する計画。また、長期的にはジンの製造も視野に入れる。
新蒸溜所の裏手はすぐ海で、夕日の美しい砂丘として知られる

小正芳史社長は落成式であいさつして「ずっと温めていた着想ではあったが、3年前に芳嗣専務が海外に焼酎の売り込みに行った際にウイスキー市場の現状に触れ、正式に提案があった。そこから本格的に事業構想が始まった。17年ほど前に、専務はまだ大学生だったが、1週間かけてスコットランドの蒸溜所を訪ね歩いたことがある。その確固たる歴史・伝統に感動したことを覚えている。吹上浜の見えるこの地は2代目の嘉之助が国道のそばでもっとも海に近い土地を購入していたものだが、いつかはこの地でウイスキーづくりを、との想いは、心の片隅にあった」と経緯を振り返った。

また参入の理由として「当社は早くから、海外で焼酎販売を行ってきたが、焼酎はどうしても知名度が低い。市場は日本レストランが多く、地元の方たちがウイスキーのように焼酎を飲むというふうにはなかなかなっていない。ここで何か一点突破を模索していたのも事実だ」と語った。

「しかし、もちろん葛藤もあった。国内外でウイスキーには追い風が吹いているが、これはどこまで続くだろうか。相当な資金も必要になる。大いに悩み、相談したり、社内で協議したりしたが“虎穴に入らずんば虎児を得ず
”ということわざどおり、社員で立ち上げ、立派に育てようじゃないか、とのベクトルの一致をみた。ローカルのウイスキーメーカーは本坊酒造さんが先行していて鹿児島では2番目ということになる。様々な難題を乗り越えて落成し感無量だ。設計・施工業者はじめ関係各位に感謝したい」と述べた。

 

〈ポットスティルは3基揃える〉

小正芳嗣専務は「酒類市場は、小規模生産にこだわったクラフトビールやクラフトディスティラリーに注目が集まっている。当社は明治16年創業、134年になる。昭和32年に、樫樽で貯蔵した“メローコヅル”や近年の“赤猿”“黄猿”“白猿”など、134年の焼酎の技術・スキル・ノウハウを駆使すれば、ウイスキーをつくることができると判断した。スコットランドから直接麦芽を購入し、シングルモルトのウイスキーを造っていく」と語った。

ポットスティルは3基揃える

ポットスティルは一般的に初溜器と再溜器があればよいが、2つのタイプの再溜器を揃えた。これにより「組み合わせが大きく広がり、独自性のあるウイスキーを造ることができる」(同)。来年4月のニューポットの発売ののちに、半年樽で熟成したニューボーンを発売する。今後、焼酎を熟成した樽をウイスキーの貯蔵に、また逆にウイスキーの樽を焼酎の熟成に使用するなど相互活用する。

【嘉之助蒸溜所】所在地=鹿児島県日置市日吉町神之川845-3番地▽敷地面積=8,760㎡、延床面積1,714㎡、コの字型2階建て▽主要製造設備=麦芽粉砕機、糖化槽、酵母タンク0.6kl×2基、発酵タンク6kl×5基(ステンレス製密封式タンク)、蒸溜器3器(初溜器=6kl、再溜器=3kl、再溜器=1.6kl ランタンネック)▽初年度製造期間=11月14日~2018年7月31日、製造規模・数量=麦芽1トン(仕込み)、162仕込み、ウイスキー原酒(アルコール分60度換算)、約90kl の製造見込み。ノンピート麦芽を基調とし、製造期間の後半にピーティッド麦芽を一部使用予定。

〈酒類飲料日報2017年11月28日付より〉

「小正醸造 嘉之助蒸溜所」を竣工、ウイスキー事業に参入