“最後発”サッポロビールのRTD戦略 出荷数量は前年比2倍以上、「99.99」を柱に

サッポロビールのRTD商品
2018年夏の「99.99」発売以降、快進撃が続くサッポロビールのRTDだが、今年の1~5月ではなんとRTD全体で昨年比208%と前年の倍以上の成績で推移している。その快進撃の主力となる「99.99」は5月15日をもって、発売以来シリーズ累計売上が1億本を突破。同社RTD商品では初めてとなる。

※RTD=Ready To Drink、チューハイ・サワー等のふたを開けてすぐ飲める低アルコール飲料。

自らを「最後発」とは称するが、「99.99」「レモン・ザ・リッチ」などを投入しRTD市場において日々注目が高まるサッポロビール。好調の要因や今後の戦略について、同社ブランド戦略部の臼井勝彦RTDグループリーダーに聞いた。

サッポロビール 臼井勝彦RTDグループリーダー

サッポロビール 臼井勝彦RTDグループリーダー

〈SNSで他を圧倒、ニーズを捉える「ホンモノ感」と「高級感」〉
まずは主力の「99.99」だ。同商品は純度99.99%の高純度ウオッカを使用した透明感あるクリアな味わいと飲み飽きないスムースな飲み口が特長のRTD商品。
 
同商品の好調の要因について臼井GLは「“味わい”“コンセプト”“ネーミング含むパッケージ”の3つの要素が一体となって消費者に支持された結果」と説明。発売の経緯については「これまで消費者がRTDに求めていた価値というのは、“安価”“酔いやすさ”“お酒感”が中心であったように思えるが、我々が行った大規模な調査ではそういった価値に加えて“ホンモノ感”や“高級感”等、丁寧に作られているものに対するニーズも存在することを発見。これはチャンスということで“99.99”の発売に至った」と話す。

「99.99 クリアドライ」

「99.99 クリアドライ」

「商品の特長に加えて、これまでにない“商品のカラー”を強調したシンプルなパッケージや当社のRTD商品としては12年ぶりに制作した、長谷川博己さんを起用したCMも相まって商品は大ヒット。華やかな見た目が小売店や量販店の担当者の心を掴み、冷蔵ケースはもちろん、売り場演出にも活用されることも多い商品となった。SNS上でも高アルコールRTDとしてはかなり“バズった”商品。投稿を見ていても味わいやパッケージをかなり評価していただいている。市場は40代男性が中心となっており同商品もその層に向けてマーケティングを行っているが、競合品に比べて20代男女の支持率が高い商品となっている」(臼井GL)。

長谷川博己さんを起用した「99.99」CM「クリアなうまさが加速する」篇

長谷川博己さん出演「99.99」CM「クリアなうまさが加速する」篇

今年の5月にはリニューアルも実施。商品発売後初のリニューアルとなるが、「99.99」のフォントをプロモーションでも用いられるタイポグラフィーへと変更したほか、缶体の帯の位置を微調整した。また「プリン体0」の訴求も行う。
 
「消費者から支持されている3つの要素が魅力の同商品だが、やはりRTDを愛飲する層は健康にも気を使っている。改めてそういった方にも支持していただけるようにその点においても訴求を行っていく。また、パッケージや味わいについては味、高い評価をいただいており、一部の変更に留めた。あくまでも“99.99らしいリニューアル”を行った」と話す。
 
〈「レモンの良いとこ“選りすぐり”」を訴求、増加するレモンサワー需要に対応〉
次に今年4月発売の「レモン・ザ・リッチ」。キャッチコピーの「果汁を超えた贅沢ブレンド」とあるように、レモン果汁のみならず果皮、レモンオイル、レモンパルプのいいところだけをさらに加えている。これらの果汁を使用することで薫り高く深みのある濃い味わいを実現した。

「レモン・ザ・リッチ」

「レモン・ザ・リッチ」

同商品の開発には長年レモンと向き合い続けてきたグループ会社のポッカサッポロのノウハウも活用。「開発は足掛け5年ほど。他社の“レモンサワー”とは差別化できる商品が完成した。計画にはまだ及ばないが安定したスタートを切り、大手CVSや量販店、ドラッグストアでも採用が決定。少しずつじわじわと評価を頂いている。地道に魅力を訴求しながら、商品を支持してもらえる方を増やしていきたい」。
 
プロモーションも個性的だ。戦略として、ユーザーボイス、オーソリティーボイス、メーカーボイスのトリプルボイスを活用しており、こちらも良い影響が表れている。「オーソリティー」からのプロモーションについては各業界のレモンサワーをこよなく愛する方に同商品を飲んでもらった感想を掲載。
 
「50名の専門家に協力を頂いたが、中には“自分が認めたものしか書かない”という方もいらっしゃった。そういった方にも納得いただいている商品。もう1つの発信源であるユーザー(SNSなど)からも“今まで飲んだレモンサワーの中で最もおいしい”と評価を頂いている」とクオリティの高さをアピールする。
 
販売戦略については「数年前から業務用市場で火が付いたレモンサワーだが、量販店の売り場においてもレモンサワー専用の棚を作る店舗も現れている。他社もレモンフレーバーのRTDに力を入れており、売り場でのライバルが増える現状ではあるがこうした流れは当社としては大歓迎。さらに市場の幅が広がればと考えている」とのこと。
 
今後の戦略についても「“レモンのいいとこ“選りすぐり”が同ブランドの第一の魅力。その部分は訴求し続け、商品展開についても軸からぶれることなく魅力を伝えられるようにしていきたい」としている。
 
〈コラボ系では「男梅」で業務用市場開発、専用ジョッキも導入〉
同社のRTDはコラボレーションを行ったブランドも魅力の1つ。そんな「コラボ系」の中でも最も販売数量が多い「男梅サワー」では家庭用のみならず業務用市場の開拓も積極的に行っている。
 
「業務用市場では専用ジョッキを用いることで認知度向上を図っている。家庭用でも飲んでもらえるように業務用でも力を入れた結果、大手CVSやGMSでも新規採用を頂くことができた。今後もこの家庭用と業務用の“ブリッジ”を意識しつつ、両面でしっかりと取り組んでいく」。

「男梅サワー」

「男梅サワー」

南日本酪農協同(株)とコラボレーションした「愛のスコールホワイトサワー」は「元々“愛のスコール”の知名度が高い地域では反応が良い商品。若年層から“昔飲んでいた”という40代以上まで幅広く支持していただいている。とはいえ、まだまだ飲料の認知が高くないエリアがあるので協働して認知を上げて行きたい。」とのこと。

「愛のスコールホワイトサワー」

「愛のスコールホワイトサワー」

「キレートレモンサワー」シリーズについては、「レモン・ザ・リッチ」とのカニバリは「ほとんど確認されていない」と自信を見せた。
 
「キレートレモンサワーは味わいに加えて機能性も評価されている商品。その部分を評価していただいている方に愛飲されており、“レモン・ザ・リッチ”のユーザー層とはかぶっていないので、そもそも心配はしていなかった」と述べる。加えて「機能性が評価されているブランドなので、“キレートレモン”を多数取り揃えているドラッグストアなどで採用が広がっている。また、今年3月に行ったリニューアルでは果汁の割合を13%から20%まで引き上げた。これは1996年~2018年8月までに世界62カ国で発売されたレモン果汁を使用したRTDにおいて史上NO.1果汁量となる」と説明する。

「キレートレモンサワー」

「キレートレモンサワー」

臼井GLは最後に、「まだまだ大手4社と肩を並べるまでは遠いかもしれないが、“99.99”を中心としてチャンスを逃さないようにし、RTD市場において存在感を出せるようにしていきたい。“99.99”発売以来現場の営業担当者の意識も変化している。まずは同商品を柱として”まずは99.99、今こそ99.99、とにかく99.99”で走りたい」と締めくくった。
 
〈酒類飲料日報 2019年7月8日付〉