〈本社と営業現場が一体となってブランド価値を伝える〉
――1〜9月を振り返っていかがですか。

ビール類総市場は、前年を若干上回っているのではないか。8月までは7月の冷夏もあり、1〜2%減だったと思われるが、増税前の仮需で9月単月が大きく伸長したことが寄与したようだ。カテゴリー別には、狭義のビールは約3%減、発泡酒は約6%減、新ジャンルは約7%の増と推定するが、カテゴリーごとの差が依然表れている。

そのなかで、当社はビール類計で3%弱のプラスとなり、市場を上回ることができたと考えている。とくに新ジャンルは14%増と好調だ。ビールは約4%減、発泡酒は約5%減。やはりお客様の価格志向を背景に、ビール・発泡酒から新ジャンル、RTDに移行するという流れが継続したのではないか。

新ジャンルはまずは「本麒麟」だが、昨年3月の発売以来、お客様のご支持を頂いており、本年も1〜9月で前年比7割増である。年初計画は1,380万ケースだったが、現在、計画を1,580万ケースに上方修正している。すでに9月に1,000万ケースを突破していることから計画は達成できると考えている。1月下旬にリニューアルして、更に力強いコクと飲みごたえを向上させた。これがしっかりとお客様に伝わっている。コミュニケーションと営業活動が一体となり、現場も含めた全員でこのブランドを育成するという共通認識ができているので、今後も間口をしっかり広げていきながら本麒麟ブランドをさらに浸透させたい。

次に「のどごし生」だが、ほぼ年初の計画通りに推移している。年初来、“ごくごく飲める爽快感”という「のどごし」の価値を継続して伝えてきたが、幅広い層のお客様にその価値を再認識頂いている。

ビールでは「一番搾り」が、単体でほぼ前年並み。狭義のビール市場全体が3%程度のマイナスと思われるなか健闘している。特に、家庭用主体の缶は5%増だ。一番搾りは、2017年秋にフルリニューアルし、本年4月にはさらに磨きをかけて再リニューアルを行い「新・一番搾り」とした。ビール本来のおいしさのところにフォーカスしたコミュニケーションで、“やっぱりビールはおいしい、うれしい”を訴求しているが、これがお客様の共感を得ている。こちらも「本麒麟」と同じように、ブランド価値を、現場と一体となって理解しながら、しっかり育成していくということができてきており、それが一定の成果として表れている。

特筆すべきは「ハイネケン」だ。ラグビーワールドカップのワールドワイドパートナーということもあり、1〜9月で前年比5割増の伸びだ。ワールドカップを核としたマーケティング施策の成果が出ている。年間計画も年初から1割増やし対前年40%増に上方修正した。スタジアムで楽しんでいるお客様に、しっかりと冷えたビールを提供するのは当然の責務だが、加えて、周辺エリアの料飲店とも協力して、来店者に一層楽しんでもらうという工夫を行っている。発泡酒は、市場が厳しく、「淡麗グリーンラベル」は若干前年を割っているが、お客様に根強い支持をいただいている。糖質70%オフの価値を継続して発信し、店頭の存在感を出せるようにしていきたい。

クラフトビールは「タップ・マルシェ」が順調に拡大している。今夏、取扱い店舗1万店を超えたが、クラフトビールを身近にカジュアルにお客様に提供することで、ビールの楽しさをますます伝えていきたい。

〈「氷結」、新鮮な切り口で間口を拡大〉
――ビール類以外はいかがですか。

RTDは1〜9月で約9%増。「氷結」はスタンダードを4月製造品から順次リニューアルしてから伸びが加速している。今年は「ALL is NEW」をスローガンとして「赤」と「緑」といった、味わい以外に「色で選ぶ」楽しさやレモンとグレープフルーツ味のNo.1決定戦など新鮮な切り口での提案を続けてきた。その結果、間口が順調に拡大している。

「キリン・ザ・ストロング」はコーラやホワイトサワーといったフレーバー展開が、比較的若年層の支持を得て3割増、「本搾り」も「果汁とお酒だけ」のコンセプトへの支持をいただき2ケタ増と好調だ。RTD市場の拡大は今後も続くとみており、スピード感を持って注視していく。

洋酒は約7%増。国産ウイスキーは「富士山麓」の終売で前年を割っているが海外ブランド、特にスコッチの「ジョニーウォーカー ブラック」が2割弱、「ホワイトホース」は3割弱の増と全体をけん引している。

ノンアルコール飲料は10月15日に発売した「キリン カラダFREE」に大いに期待している。史上初となる熟成ホップ由来苦味酸を使用した機能性表示食品で、お腹まわりの脂肪を減らす機能を実現した商品だ。営業現場では、この価値をしっかりとお客様に伝えていきたい。

――第4四半期の方針は。

年初来、核となる既存のブランドに投資や活動を集中し、全員が一丸となってブランドを育成していくことに注力してきた。成果も出てきていると思っている。「一番搾り」にしても「本麒麟」にしても、ブランドごとのコミュニケーションと現場の活動をしっかり掛け算にしていくことが大事である。本社と現場が一体となって活動し、しっかりとお客様に商品の価値を伝える工夫をする。店頭販促も、全体のマーケティングをしっかり考えながら、歯車を合わせ、バラつきをなくしていく。一人ひとりが考えてレベルを上げていく。これをしっかりとやり切ることに尽きる。

鳥越康博(とりごえ・やすひろ)1967年生まれ、鹿児島県出身、慶大経卒、1989年4月キリンビール入社、2007年キリンビール国内酒類カンパニー営業本部マーケティング部主査、13年キリンビールマーケティング中四国統括本部営業企画部長、18年キリンビール・マーケティング本部営業部長、19年3月同執行役員。

〈酒類飲料日報 2019年10月28日付〉