消費税増税前後の酒類販売、9月は10%前後増、10月は反動減も11月は前年並み/酒類飲料日報・流通小売アンケート

本紙「酒類飲料日報」はこのほど、首都圏のスーパーマーケットチェーン各社に対し「消費税増税について」のアンケート調査を行った。10月1日に消費税が引き上げられ、食品に軽減税率が適用される中、増税対象となった酒類について増税前後の販売動向、対応を聞いた。

〈駆け込み向け販促は有効、増税後は売上戻るも安価な商品にシフト〉
質問では、消費税増税前までの販売について、9月の駆け込みの販売状況と消費税増税後の10、11月の酒類の販売状況を聞いた。9月の駆け込みについては、回答のあった全てのSMチェーンで前年増となり、酒類の売上高は105~115%程度となっている。

9月中の駆け込み需要に対応した販促では、バンドル販売やフェース増などの対応を行ったか聞いたところ、

▽焼酎やウイスキーなどをプラスした
▽“ビール類ケース販売”の売り込み強化を行った
▽チラシや販促物を活用し、“まとめ買い”をアピールした
▽ビール類のケース販売、ウイスキー4Lのチラシ掲載、ワインの販促も大容量(1.5L~1.8L)を中心として実施。ビール類のケース販売は大幅なアップ、ウイスキー4Lも効果が大きかった
▽ビール類のケース売り、ウイスキーの販促、ともに反応は良かった
▽通常行わないケース販売を実施、効果があった店舗もあり

――などの回答があった。各社の対応に消費者の反応は良かった模様で、消費税増税前のまとめ買い需要は強く、消費者の通税感の大きさがうかがえる。

消費増税後の酒類の販売状況については、10月はおおむね90~95%程度となっているが、チェーンによっては15%程度と大きく下回った場合もある模様。11月については、一部前年を割り込むチェーンもあったがおおむね100~105%程度と反動減は終わっている。増税後の動向については、

▽9~11月ではプラスだった
▽在庫にならないよう無理はしなかった
▽“ビール類”→より低価格な“RTD”“ノンアルコール”への流出
▽今回は前回の反省や傾向を踏まえ、メーカーの新商品が10月に多く発売された。缶チューハイや新ジャンルなどは、10月も前年売上を越えた。ウイスキーも伸びているカテゴリーなのでほぼ前年並み
▽前回増税時より駆け込み需要が弱い
▽10月は駆け込みの反動で厳しかったが、11月はポイント還元もあり元に戻りつつある
▽前回同様駆け込み需要が9月にあったため、10月は大幅な前年比減。しかし、消費者還元店舗になっていたため、11月には前年並みに回復
――などの回答があった。

増税後の政府によるポイント還元事業の対象企業などもあり、9月の駆け込みと10月の反動減はほぼ想定内に収まり、11月は酒類の購入は前年並に戻りつつある様子。ただし、RTD・新ジャンルなどの安価な商品が伸びて売上が前年並みになっていると見られるため、清酒、焼酎、ワインなどは厳しいようだ。増税後は消費者の節約志向もあり、RTD・新ジャンルなどの安価な商品の食卓、晩酌への定着が進んだとすれば、これらはさらに厳しい状況が続くと考えられる。また、この状況下でもウイスキーの好調に言及があった。

また、近年の酒類の販売、酒類市場について感じるところはあるか、メーカー、卸への要望はあるか聞いたところ、

▽EPA等、規制緩和の恩恵をお客様(消費者)に提供できていない
▽“消費税率”“酒税”変更等により、毎年のように仮需、仮需反動を繰り返すことになるため、非常に慌ただしく感じる。また、現場の立場からすると、“消費税率”“酒税”変更は、お客様に説明しづらいので、もっとマスコミ等で“変更”があることを事前に周知してもらえるとありがたい
▽ウイスキーやワインの日本国産への取組が弱く感じられる。原料輸入で国内でボトリングし、国産表記になっている商品比率が高すぎる
▽若い人たちのお酒離れが進んでいる。もっと若者に受ける商品開発を要望する

――などの声があった。若者への訴求や、国産洋酒類の課題のほか、税率についての消費者の認知向上についても言及された。今年10月の酒税変更では、消費増税以上の分かりづらさが予想され、認知向上の取組がさらに必要になる。

〈酒類飲料日報 2020年1月20日付〉