〈ノンアルコールビール、19年の販売数量は1.6%増〉
2019年のビール4社のノンアルコールビールの販売数量は前年比101.6%の1,949万ケース(大瓶20本換算)となった。ビール4社のビール類(ビール・発泡酒・新ジャンル)の販売数量は3億8,458万ケースなので、ビールテイストという括りでいえば4.8%を占め、ビールテイストのおおよそ20本に1本までに成長したことになる。

酒類市場全体でも数量ベースで2.9%を占める(食品産業新聞社推定)。母数が大きいので、決して少なくない数字だ。それだけニーズがあるということでビール各社も取り組みを加速している。「ビールと互換性があるというのもポイント。ノンアルビールがビール本体の需要の入り口にもなる」と考えるのも各社共通だ。

WHOがアルコール規制強化を重点課題としていることも背景にして、アルコールを控える動きが世界的な潮流となっている。キリンビールによると、海外におけるノンアル飲料カテゴリーの伸びは、容量ベースで2019年と09年を比較して、カナダ431%、英国300%、フランス179%、ドイツ174%という(ユーロモニター調べ)。17年に蘭ハイネケン社がブランド史上初となるノンアルビール「ハイネケン0.0」の販売を地元オランダで、19年には、英ディアジオ社がノンアルカクテル用蒸留液メーカーの英シードリップ社を買収している。

メーカーの予想を超えてノンアルコールビールの需要は多岐に渡っていた。

国内におけるノンアルコールビールの歴史を振り返ると、先鞭を付けた2009年のキリン「フリー」など当初は、飲酒運転防止はじめコンプライアンスの観点からの提案が多かったが、メーカーの予想を超えてノンアルコールの需要は多岐に渡っていた。当初のロードサイド型料飲店、ゴルフ場から、バーベキューなどのアウトドア、風呂上り、友人との集まり、運転を控えている時など、あらゆるシーンでニーズが広まった。

2015年、消費者庁がトクホ(特定保健用食品)として、ノンアルコールビールテイスト飲料を初めて許可し、各社が参入し市場を拡大した。

〈「ビールに近づく」から「ビールから離れる」まで〉 
一方、16年から17年にかけては、機能性よりも“ビールらしい本来の美味しさ”に回帰したといえる。

キリンビールは満を持して、17年4月に「零ICHI」を発売。一番搾り製法を採用し、よりビールに近い味を実現した。「あえて機能性にこだわらず、ビールに近い味わいを実現した」と同社。18年に入ってからも、各社は主力ブランドで「よりビールに近い味わい」を目指して磨きをかけた。

18年6月にはサントリーがペットボトル入りの透明な液色の「オールフリー オールタイム」(380mlPET)をCVS限定で発売。ノンアルビールを〈無糖炭酸市場〉として捉える新提案を行った。アサヒビールは、夏に期間限定で「ドライゼロスパーク」(500mlPET)を発売、19年からは通年商品として発売している。

この〈無糖炭酸市場〉として捉える新提案の段階を、さらにに画す商品がこの3月に発売される。キリン「グリーンズフリー」だ。あえて「ノンアルコール」を謳わず“自然派ビールテイスト炭酸飲料”として訴求。「ビールに近づけるという発想から脱却した」(同社)。

「ビールに近づく」から「ビールから離れる」へ。この幅の振り方の大きさが、大きな可能性を秘めた市場であることの証左だろう。

〈食品産業新聞 2020年3月2日付より〉