例年全国各地の日本酒関連イベントが賑わいを見せる10月だが、今秋は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、清酒メーカーや酒造組合などによる恒例イベントが多数見送られている。

一方、オンラインでの乾杯イベントや酒蔵主催の「オンライン飲み会」「オンライン蔵見学」といったイベントが隆盛を見せている。販促面でも、従来の店頭販促に加えてSNSを活用したキャンペーンや発信が強化されるなど、清酒メーカー各社の販促ツールにも変化が見られる。

10月1日「日本酒の日」、日本酒造組合中央会がオンラインで「全国一斉 日本酒で乾杯!2020」を開催した。「日本酒エンターテインメントイベント」と銘打ち、日本酒セミナー、トークセッション、音楽ライブなどを国内外に向けて配信した。「全国一斉乾杯」時刻の午後7時には、オンラインでつながった会場と国内外の参加者が、一斉に杯を掲げた。

灘五郷酒造組合は9月19日、オンライン日本酒イベントプラットフォーム「灘の酒オンライン酒場」を立ち上げた。同サイトには「灘の酒」関連のオンラインイベントの情報が集約されており、おつまみやお酒を購入できる仕組みも用意されている。隔週金曜には、参加費無料の定例イベントも実施する。また、「浦霞」の佐浦がSNSで蔵内の様子を配信したり、出羽桜酒造や天山酒造が商品購入者限定でオンライン蔵見学会を実施したりと、各地の酒蔵も精力的にオンラインを活用している様子が伺われる。

そんな中、茨城県は9月16日から18日までの3日間、東京都千代田区の日比谷ゴジラスクエアで、「いばらき地酒めぐり」を開催した。合計8社が登場し、参加者は久々の試飲イベントを楽しんだ。同県の担当者は「当初は7月と8月にも予定していたが、新型コロナの再拡大により中止となった。今回のイベントも直前まで保健所をはじめ関係機関と調整を重ね、何とか開催までこぎつけた」と苦労を語った。

大阪では、10月1日から11月30日までの2カ月間、こだわりの日本酒を提供する飲食店23店が参画するイベント「NGCはしご酒」が進行中だ。主催する髙村光有氏は、数ある酒類の中で日本酒が選ばれるには「飲食店でどう提供するか」が肝。「店主と会話を楽しみながら、従来のイメージを覆すような日本酒との出会いを体験することができる。店を回るうちにお客同士のつながりもできて、より楽しめる。人との交流、お酒、おつまみの『幸せ三原則』」と、同イベントの魅力を語る。

新型コロナウイルス感染拡大を機に急激に加速したオンライン活用。各メーカー・団体とも手探りながら、日本酒ファンの裾野拡大につなげるべく工夫を重ねている。

ヴィッセル神戸のイニエスタ選手をアンバサダーに起用している菊正宗酒造は、同チームの試合結果と連動してプレゼントが当たるSNSキャンペーンを展開した。「これをきっかけに30代、40代が手にとってくれている」というように、効果も表れ始めているようだ。

SNSを含めたオンラインツールと実際の飲酒体験が、今後の日本酒と消費者とを結ぶ「場」づくりの両輪となることは間違いない。

〈食品産業新聞 2020年10月12日付より〉