日EU・EPAとTPP11の経済効果、豚肉の影響額は236億円・248億円

畜産日報2017年12月22日付
〈牛肉はEPAで188億円、TPP11で399億円、米国離脱で鶏肉は影響なしに〉

政府は21日、日EU・EPAとTPP11の経済効果分析をまとめた。農林水産物の生産額への影響は、日EU・EPAで600億~1,100億円、TPP11では609億~1,093億円の減少額を試算(15年12月24日公表のTPP12では878億~1,516億円)。後者については、TPP12と比べて鶏肉など“限定的な影響”が見込まれるとした16品目について、米国以外のTPP参加国からの輸入増加が見込まれ影響が緩和されると分析している。この試算は、どちらも協定が発効し、関税の段階的な引下げなどの条件が全て済んだ後のモデル。関税率10%以上で国内生産額10億円以上の品目を対象とした。

[日EU・EPA]試算は英国を含むEU28カ国を対象。畜産物への影響額では、牛肉が94億~188億円、豚肉で118億~236億円と試算した。鶏肉の生産額の減少はなく、EUからの輸入実績がわずかであること、その大半を用途が限定されるフローズンの丸鶏や骨付きもも肉を占めていることから、国内生産は維持されるとしている。

牛肉では、EU産牛肉の関税削減相当額を1kg当たり136円とし、国境措置変更後のEU産牛肉の輸入価格を1kg当たり504円と試算している。このEU産牛肉の輸入増加により、和牛・交雑種の1~2等級で34億~67億円、乳用種(全量)で61億~121億円の影響が及ぶとしている。1kg換算では、和牛・交雑種1~2等級で69~137円、乳用種で68~136円の減額となる計算だ。

16年度の乳用種の中央市場枝肉卸売相場を1kg当たり1,056円(16年度畜産物流通統計、2~1等級の平均)とした場合、EPAによる国境措置変更後の乳用種の相場は1kg当たり988円にまで下落する計算となる。同様に和牛・交雑種1~2等級の場合は16年度の2,132円(同)から2,063円の相場となる。ただ、生産コストの削減や品質向上など国産優位性確保の体質強化対策により、影響額は半分に緩和されるとしている。そのうえで、想定を超えた価格下落に対しても経営安定対策により農家所得を確保するとしている。

豚肉の試算の前提として、差額関税制度が維持されたことにより、EUからの豚肉輸入の9割が分岐点価格(524円/kg)で、残る1割が従量税部分での輸入と見込んでいる。このため、EU産豚肉の関税削減効果は1kg当たり40円、輸入価格は同507円と想定し、「競合する国産豚肉の7割程度で、国産豚肉との品質格差が小さい」としている。そのうえで、国内生産額への影響は、銘柄豚肉で23億~46億円、銘柄豚以外では95億~190億円で、国産豚肉全体では118億~236億円の影響と試算している。1kg換算では銘柄豚で6~11円、それ以外で20~40円の影響となる。

これを中央市場枝肉相場(12~16年度の5中3平均)で比較すると、銘柄豚では1kg当たり746円から国境措置変更後は740円に、銘柄豚以外の国産豚は677円から657円に下落するとしている。牛肉と同様、飼養管理の高度化など生産コストの削減、品質向上など国産優位性確保の体質強化対策により、影響は半分に緩和されるとしている。経営安定対策で農家所得を確保されるとしている。

[TPP11]TTP11となったことで、TPP12で「影響は限定的」「影響は限定的だが、一部低価格な外国産の輸入も懸念」とされた鶏肉(TPP12での生産減少額:19億~36億円)など16品目について、今回「影響は見込み難い」と緩和された。ただ、牛肉と豚肉については、米国が離脱しても、前回と同様に「当面、輸入の急増は見込み難いが、長期的には関税引下げの影響が懸念」されると位置づけられている。

このうち、TPP11による生産の減少額は、牛肉で200億~399億円(TPP12:311億~625億円)、豚肉で124億~248億円(同169億~332億円)と試算している。牛肉ではTPP11の牛肉輸入の関税削減相当額は1kg当たり169円で、国境措置変更後の輸入価格は1kg当たり623円と試算。輸入増加により、和牛・交雑種(全量)で123億~246億円、乳用種(全量)で77億~154億円の影響が及ぶとしている。1kg換算では、和牛・交雑種で53~105円、乳用種で85~169円の減額となる計算だ。

TPP11からの輸入豚肉の関税削減効果は1kg当たり43円、輸入価格は同504円と想定している。そのうえで、国内生産額への影響は、銘柄豚肉で22億~44億円、銘柄豚以外では102億~204億円の影響と試算している。1kg換算では銘柄豚で5~10円、それ以外で22~43円の影響があるとしている。

牛肉と豚肉について、日EU・EPAとTPP11の影響をみると、米国が脱退したとはいえ、チルド製品の輸入割合が高いTPP11の影響額が依然として高いことが分かる。

〈畜産日報2017年12月22日付より〉