都内でパタゴニア産牛肉のPRイベント、業界関係者170人が参加/アルゼンチン大使館・IPCVA

試食でアルゼンチン風炭火焼き「アサード」を提供
〈世界的評価のあるアルゼンチン産牛肉に高い関心〉
駐日アルゼンチン共和国大使館とアルゼンチン牛肉振興研究所(IPCVA)は9日、東京港区の大使公邸で、今年6月に輸入解禁されたパタゴニア地域産牛肉のプロモーションイベントを開いた。日本向け輸出認可を受けている食肉パッカー「FRIDEVI S.A.F.I.C」(以下、フリデビ社)の協力のもと、国内の流通・小売および外食業界関係者に、世界屈指の牛肉大国であり欧州市場などで高い評価を受けているアルゼンチン産牛肉の味わいや今後の可能性を知ってもらおうと企画されたもの。イベントには誉れ高いアルゼンチン産牛肉の品質を実際に確かめようと170人を超える業界関係者が訪れ、業界内での関心の高さが伺えた。

当日は、アラン・ベロー特命全権大使が「今年アルゼンチン産牛肉の輸入が解禁され、日亜修好120周年のこの年に祝うべき出来事がひとつ加わったが、我が国は引続きアルゼンチン全国の牛肉が輸出できるよう、日本の衛生当局と積極的に対話を続けていく所存だ。皆さんはアルゼンチン産牛肉が世界で最も品質の高い牛肉として評価されていることを知っていると思うが、我々もアルゼンチン産牛肉は国の誇りだ」とあいさつ。

アラン・ベロー特命全権大使

アラン・ベロー特命全権大使

その後、IPCVAのウリセス・フォルテ所長がアルゼンチン産牛肉の動向について、フリデビ社のセルヒオ・セイスデドス氏(ゼネラルマネジャー)が同社の概要についてそれぞれプレゼンした。

フォルテ所長によると、世界有数の牛肉生産大国であるアルゼンチンでは、北部の地域で多くの肉用牛が飼養されているが、▽現在、日本へ輸出できるのは口蹄疫ワクチン非接種清浄地域である南部のパタゴニア地域に限定される▽品種はアンガス、ヘレフォード、ショートホーン、ブランガス、ブラフォードとそれらの交雑種が中心▽近年の品種改良や飼料研究を通じて、非常に柔らかく、赤身牛肉としての品質が大きく向上している▽放牧に適した気候に恵まれ、ストレスなく開放的な状態で飼育されるため、非常に良い肉質に仕上がる▽約10年前から成長ホルモンの使用が禁止されている――ことなどアルゼンチンの牛肉産業の特長を紹介し、「世界各国には多くの素晴らしい牛肉が存在するが、アルゼンチン産牛肉は十分それらと競い合うことができるおいしい牛肉だ」と強調した。

IPCVA ウリセス・フォルテ所長

IPCVA ウリセス・フォルテ所長

フリデビ社のセイスデドス氏は、アルゼンチンの肉牛飼養頭数は全国で5,400万頭に上っており、このうちパタゴニア地域には110万頭が飼養されていると説明。そのうえで、フリデビ社に関して▽会社は北パタゴニア地域にあり、周辺にパタゴニア地域の牧場の75%が集中している▽2007年のEU向け輸出を皮切りに、13年にはロシアやブラジルなどへも輸出を行い、18年は日本への輸出も認められた▽輸出向け肥育牛を集荷するため、パタゴニア地域の複数の牧場と契約して一定のプレミアム価格で購入することで安定的な供給を確保している――ことなどを説明。そのうえで、「アルゼンチン産牛肉を日本市場に輸出することは、非常に責任を伴うことでもあると実感している。透明性のある形で、強い責任感と誠意を持って日本の消費者の方々にアルゼンチン産牛肉をお届けするよう努力していく」と理解を求めた。

試食では、アルゼンチン産牛肉本来の味わいを体験してもらおうと、アルゼンチン風炭火焼き「アサード」や「エンパナーダ」(ミートパイ)が振る舞われたほか、部位による食べ比べができるようリブアイロールやストリップロイン、ランプなど各部位が提供された。

この日、イベントに参加した都内の食肉卸・加工業者は「すでにサンプルを取り寄せたが、予想以上においしく、外食や加工分野にも可能性があると感じている」とコメント。別の都内の卸売業者は「ほとんどが放牧飼育と聞いており、当初グラスフェッドのような風味を予想していたが、リブアイなど思った以上にジューシーでおいしいと感じた。あとは価格の問題だろうが、現地の生産動向などもっと知りたい」と興味深い様子だった。

〈ステーキ商材など日本市場の可能性に期待/フリデビ社セイスデドス氏〉
今回のプロモーションイベントを機に来日したフリデビ社ゼネラルマネジャーのセルヒオ・セイスデドス氏は、会場で本紙らのインタビューに応じ、日本向けにステーキ商材を皮切りに、市場のニーズを見ながら将来さまざまな料理に適した部位を提供したいと意欲を見せた。

フリデビ社ゼネラルマネジャー セルヒオ・セイスデドス氏

フリデビ社ゼネラルマネジャー セルヒオ・セイスデドス氏

今回、日本向けに輸出できる牛肉は北部のパタゴニア地域に限定される。輸出向け生体の集荷についてセイスデドス氏は、「我々は1983年の創業当初から株主であるビエドマ農協とアルゼンチン農協連合会の参加の牧場と連携を取っている。今回、日本向け輸出解禁となったことで各牧場と新たに契約を結び、プレミアムを支払うことで、輸出向け専用の去勢牛を生産してもらっている。具体的な価格は申し上げられないが、購入価格に何%かのプレミアムを上乗せして支払っている。そのパーセンテージも変動するが、ほかのEU向けの去勢牛を販売している農家よりも高いプレミアムで調達している」と、安定供給に向けた集荷体制を取っていることを説明した。また、アルゼンチンの肥育牧場は大部分が放牧主体となっており、「日本向けに生産している牛肉はほとんどの飼養期間が牧草肥育だが、出荷前の90~100日間は補完的に穀物飼料を与えている。だが、フィードロットでの肥育ではなく、あくまで開放的な牧場で牛たちが自由に穀物飼料を食べられるような環境に置いている」としている。

今後の日本市場向け輸出の展望については、「これからの目標というよりも、いまは輸出が始まったばかりのため、日本市場のニーズがどの程度あるのか見極めながら調整していく。まずは少量から取り組み始め、将来的に増加させていく。パタゴニア地域の生産状況を踏まえると、将来、日本市場向けには1,000t程度に上ると期待している。部位は、ストリップロイン、リブアイロール、テンダーロイン、ランプなど、お客の要望に応じて、こうしたステーキ商材を提供していきたいが、将来的には、ハインドクォータ、フォアクォータなど含め、ステーキ以外の料理に適した部位も提供できれば」とし、「日本では豪州産や米国産などの牛肉が輸入されているが、それらの牛肉と違って、アルゼンチン産牛肉はほぼ100%放牧されている点がある。フィードロットで肥育される牛肉とは肉の味わいも違うし、放牧でストレスなく自由に育てられていることも、日本の消費者に評価されるポイントだと確信している」と期待感を示した。

〈畜産日報 2018年10月11日付より〉