〈豚コレラ〉飼養衛生管理基準の徹底が重要、一丸となって終息に向け努力/自民党

畜産日報 2019年2月8日付
〈豊田市農場と岐阜農場では同一飼料会社が出入り、車両消毒が不十分と確認〉
自民党は7日、鳥インフルエンザ等家畜防疫対策本部(江藤拓本部長)を開き、愛知県や岐阜県での豚コレラの発生状況・対策などの報告を受け、今後の対応などを審議した。農水省の説明によると、愛知県豊田市の発生農場周辺では野生イノシシが少ないこと、岐阜県の発生農場と同一の飼料会社が出入りしており、車両の消毒で不十分だった事実が確認されたとした。引続き、現地での疫学調査を進め、感染経路の解明に努めるとした。

江藤本部長は「今までとステージが違う。事態を掌握してやるべきことをやる。農水省だけの問題ではない。一丸となって終息に向けて努力しなければならない。これまでの対応の反省点を踏まえて対応する。各自治体は、摩擦を起こさずに、共通に目標に向かう必要がある。ワクチンは清浄国であることが重要になる。今後は差別化された豚肉輸出を目指している。この会議が再度開かれないようにしたい」と述べた。

野村哲郎農林部会長は「恐れていたことが現実味を帯びてきた。中国では春節を迎え、アフリカ豚コレラ(ASF)が怖いと思っていたが、岐阜で封じ込めの努力を行っていた豚コレラが、愛知に飛び火し、4府県に飛び火した。生産者と役所の努力がマッチしていないと飛び火することになる。皆で気を引き締めて取り組まなければならない」と危機感を露わにした。

会合では、農水省の池田一樹消費・安全局長が発生状況・対応状況を説明した。愛知県豊田市の農場では4日に検査を実施し、6日に陽性となった。発生農場は、愛知県田原市、長野県、岐阜県、三重県、滋賀県、大阪府に子豚を出荷しており、出荷先で検査を実施し、6日に三重県を除く5府県5農場で陽性となったとした。現在、飼養衛生管理基準の徹底を指導するとともに、国の疫学調査チームによる原因究明にあたっているとした。

この日の会合では、日本養豚協会(JPPA)が豚コレラ対策への要望を行った。JPPAの松村昌雄会長代行は、「1週間で状況が大きく変わり、不安を抱えている。国からの指導体制を再構築する必要がある。搬出制限区域など経済的にきつい思いをしている農家もあり、一日でも早い支援をお願いしたい。養豚農家は豚コレラ以上にASFを警戒している。協会では全国の空港・港でキャンペーンを実施している。国家レベルで観光客への防疫強化を最高レベルに引き上げることが、日本の養豚産業を守ることに直結する」との思いを述べた。続けて岐阜県養豚協会の吉野毅会長が、「9月に岐阜市で発生し、生産者は飼養衛生管理基準の遵守を徹底・努力をしているなかで由々しき事態となった。現在も大事なブランド豚を処分している。抜本的な解決をしなければ、岐阜県の豚、日本の豚に未来はないと思う。岐阜県では3割の豚を失った。再開できる保証はない。発生から5カ月を越し、愛知県などにも広がっている。岐阜県の声としては、ワクチンによる撲滅、終息の方向に1日でも早くシフトすることが、国益となり終息への早道だと思う。殺処分されている状況を打開していただきたい」と要望した。参加した議員からは、感染原因の究明を求める声や、ワクチン接種の目途、豊田市の農場から異常を確認し、患畜の疑いがあるにも関わらず、出荷が行われたことの事実関係を問う声が多く聞かれた。

務台俊介議員(衆・長野2区)は「松本の食肉処理場でも陽性が確認された。発生農場から宮田村に子豚を運んだトラックで、食肉処理場に出荷された。トラックを経由して感染した。問題は発生農場で検査を実施しているのに、宮田村に出荷された。業者も問題だが、愛知県はなぜ出荷を許したのか」と語気を強めた。一方で八木哲也議員(衆・愛知11区)は、「派生農場では近代化を進めており、若い農場主が経営し、3階建の豚舎はなかなかない。山があってイノシシが来る地域ではない。農場主も行政もなぜ感染したのかが分からない。徹底した原因追及をお願いしたい」と述べた。

農水省の池田局長は「これまでの岐阜県の事例ではイノシシなどの野生動物を介しての感染が考えられる。飼養衛生管理の徹底が重要になる。豊田市の農場では現在調査をしている。岐阜県との接点を探っているが、現時点で豊田市の農場と岐阜県の発生農場と飼料会社が同一であり、飼料会社の車両消毒が不十分であった形跡がある。養豚家には車両消毒の徹底を指導していく」と述べた。

〈畜産日報 2019年2月8日付〉