双日食料、TPP発効を機にカナダ産牛肉の取組み強化、新たなマーケットを創出

畜産日報 2019年2月20日付
〈海外拠点のサポート、ミートワンとの協業通じて、シェア拡大はかる〉
双日食料(SOFCO、曾我英俊社長)は今年、TPP11発効や南米産牛肉の輸入解禁、将来の北米産牛肉の月齢制限撤廃など貿易環境の変化を見据えた事業展開を行う。

すでにビーフ事業では冷凍北米産牛肉の約3割強、とりわけカナダ産の取扱量は国内トップシェアを誇っているSOFCOだが、今回のTPPによる関税引下げを背景に、カナダ産牛肉を通じた畜肉加工品など新たなマーケットを創出する考えだ。さらにタイやベトナムに展開している双日のグループ企業を通じて、南米産牛肉を新たな主力原料とした加工品を現地および日本市場に供給していく。昨年2月に設立した畜産関連事業を展開する(株)ミートワンとの協業もさらに強化していく方針だ。畜産第一本部の池本俊紀副本部長(兼畜産加工品部部長)と畜産第一本部ビーフ部の小穴裕部長の2人に方針を聞いた。

SOFCOのビーフ事業は、大手冷凍食品および畜肉加工メーカーやCVS向け弁当、外食チェーンなど大口需要家中心に、北米・豪州産のショートプレートおよびそれら周辺部位、トリミングを供給している。日本で輸入される北米産牛肉の3割強を取り扱うその圧倒的な買付量を背景に、成長市場である東南アジアでの現地オペレーションも展開している。さらに、畜産加工品事業では、非加熱一次加工品を中心にCVSなど向けに商品開発を進める一方、国内パートナー企業の技術力を生かして二次加工、焼成済み製品も含めたオペレーションを提供している。

小穴部長によると、SOFCOは長年にわたってカナダ産牛肉の取扱い数量が多く、フローズンで5割以上、チルドでも2~3割のシェアに達する。物量の規模だけでなく、周辺部位を含めた数多くの規格も扱っており、その規格づくりも長年培ってきたノウハウを踏まえスキルアップがなされているという。

そこで、今回のTPP発効による輸入関税のメリットを受け、SOFCOとしても伝統的に強みを持つカナダ産の取扱いを強く進めていく方針だ。とくに畜産加工品部では、オセアニア産とは違ったカナダならではの原料の優位性を訴求する。「当社が扱っているカナダ産牛肉はアルバータ州の大麦肥育(カーギル・ハイリバー工場)とオンタリオ州のコーン肥育(同グエルフ工場)の2つの特長がある。とくに大麦肥育は、味わいがアッサリしているという評価あるが、加工品にしたときにタレとの相性が非常に良く、コーン肥育とそん色のない高品質の商品を提供しており、今後はその取扱いをさらに広げていく」(池本副本部長)。

商品群としては、量販店向けに簡便調理品のNB商品をはじめ業務用向けにスライス、挽肉、加熱加工品の開発を強化、エンドユーザーに対してコストメリットを十分生かした商品提案を強化していく考えだ。とくに量販店向けNB商品はミートワンとの協業を通じて展開する方針で、現在、ミートワンの参画企業とともに商品開発を進めており、早ければ4月から発売していく計画だ。

ビーフ部としても、TPP11発効を機に、カナダ産を通じて新たな挑戦に挑む。ターゲットは挽肉のマーケットだ。「プレート関係については、以前からある程度ハマっているため、TPP発効以降も大きな動きはないとみている。むしろ、業界が期待しているのは、豪州産と同じ関税水準になることで、豪州のマーケットを取ることができないかという点だ。長年、米国とカナダはショートプレート、豪州は挽肉関係がフローズンビーフのマーケット構成だった。今後も米国産はショートプレート中心の展開となるが、豪州産が今年も現地価格が高値で推移し、かつ中国の輸入が増加するとなると、カナダ産のバラ周辺部位やクロッドなど使った良質な挽き材原料を提案していく。それに、TPP11で関税が下がったこと、カナダ産のグレインフェッドを使っているといったストーリー性もつくることができる。また、こうしたカナダ産の部位を国内提携工場で加工することで、ユーザーにとっても品質の安定化や検品の手間を省くことができるというメリットにつながる。もちろん、カナダ産のチャックアイロール、ストリップロイン、リブアイロールなどもTPP11発効を機に引合いが増えている状況だ」と小穴部長は強調する。

カナダ産以外にも今年はウルグアイやアルゼンチンの南米産牛肉を原料にした業務用加工品の取組みにも力を注ぐ方針だ。双日食料では、2003年12月の米国でのBSE発生直後から南米産牛肉原料をタイへ輸出、現地で加工し、冷凍食品などの加熱加工品を日本に輸出してきた。こうした長年培ってきたノウハウを生かし、これまでタイで現地加工していたものを、輸入解禁を機に日本国内で加工することを検討しているという。「とくに南米産牛肉に期待するポイントはナチュラル・ビーフであり、抗生物質不使用かつホルモンフリーで、赤身が非常に強く、風味が優れていることを生かした業務用加工品として展開していきたい」(小穴部長)。

米国産牛肉に関しては、今後予定されている輸入月齢制限を踏まえ、カウの再肥育牛肉も新たな加工原料としてラインアップに加えていく計画だ。月齢制限後は再肥育牛を供給することができる。これから畜種や肥育日数、品質などに赴いて検討していくが、日本ではステーキなどの需要が見込めるほか、バラ関係も含めて焼き材なども可能性が高い」と小穴部長は期待を込める。

このほか、TPPにベトナムが参画することで、アジアでの現地加工など海外事業の取組みも強化させる。具体的には、双日グループの日配総菜の製造販売・畜肉原料の加工製造販売を行うベトナムのジャパン・ベスト・フーズ(Japan Best Foods Co., Ltd.、JBF)との協業の強化や、タイでは業務用食品卸会社エフビー・フードサービス(FB Food ServiceLtd.、FBF)で、南米産や豪州産のホルモンフリーの牛肉を原料とした加工品を現地市場に販売していく方針だ。

池本副本部長は「新たな貿易の仕組みが変わろうとするなか、これをチャンスと捉え、双日食料が培ってきたノウハウと国内パートナー企業、さらにミートワンとの協業を通じて、各社の技術力を結集させ、より良い商品を届けていく。とくに、カナダと南米に関しては、双日米国会社、アルゼンチン会社、ブラジル会社など双日グループの海外拠点の手厚いサポートを得ることができる。今年一年、海外のサプライソースとの関係を深めながら、双日食料のオペレーションを強化拡大させていく。

双日グループの『誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造する』姿勢のもと、『NEW WAY NEW VALULE』を胸に、サステナビリティに配慮しながら、安全・安心で高品質な商品日本のみならずアジア市場を含めたなかで展開していきたい」と意欲を語る。

〈畜産日報 2019年2月20日付〉