〈令和2年7月の需給展望 牛肉〉動向は外食需要の戻り次第、新型コロナの動向も懸念

〈和牛・ホルスの焼き材は堅調、枝相場も小確りの展開予想〉
新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言が5月25日に解除され、6月19日には県境をまたぐ移動制限も解除となり、大きな打撃を受けていた外食需要が徐々に戻りつつある。

牛肉も外食店の営業再開に伴って在庫の補充買いの動きがみられ、枝肉相場(東京市場)も6月後半になって和牛中心に緩やかに上昇、月間平均相場は和牛去勢のA5で2,303円(前年同月比467円安)と前月から67円上昇、同A3で1,671円(同564円安)と53円値上がりした。ただ、交雑種は和牛の相場安の影響で需要が低迷し、去勢B3が1,200円(449円安)で83円下落、B2で1,044円(497円安)で93円も値下がりするなど、対照的な展開となった。

7月は基本的に梅雨で需要が低迷する時期だが、外食需要が戻りつつあることや4連休が控えているため、例年のパターンとは違った展開が予想される。ただ、コロナ対策やインバウンド需要がないため外食需要も戻り切れず、また民間のボーナス減額など景気悪化や、学校の夏休み入りの短縮など需要喚起につながる要素が少ないのも事実。

しかも、このところの新型コロナの感染者数の増加による、外食や行楽地への消費マインドの低下も懸念される。現状では先行き不安要素が多く、枝肉相場は和牛を中心に前月からわずかな値上がりに止まる、小確りとした展開となりそうだ。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、6月の成牛出荷頭数は和牛で4万4,100頭(前年同)、交雑種で1万9,600頭(同8.5%減)、乳用種2万7,400頭(同4.7%減)となり、成牛全体では9万2,700頭(1.9%減)と少ない予想だ。また家畜改良センターの個体識別情報から予想すると、乳雄は1万3,600頭(6.4%減)とみられる。

一方、機構の需給予測によると、チルド牛肉の輸入量は2万2,700t(17.2%減)、フローズンで2万8,600t(18.4%減)と少ない見通しだ。5~6月のチルドの輸入量は、新型コロナによる北米の現地工場の稼働率低下で少ないとみられるが、その後の生産回復で7月の輸入はバラを中心にやや増えてくるとみられる。

〈需要見通し〉
6月の量販店の売れ行きは、「父の日」需要こそ焼き材やステーキ材が好調だったものの、全体の販売としては前月に比べて大分落ち着いているもよう。駅の併設店など立地によっては客数が伸びず、昨対割れとなった店舗もあるようだ。また、店舗内混雑を避けるなど感染拡大予防から「思い切った販促ができない」(大手バイヤー)という。

7月も4連休を含め需要動向が読み難いなかで、庭先や近場でのBBQ商材の提案と、和牛スソ物を中心とした切り落としの訴求といった、異なる作戦で「日替わりチラシを含め、どっちに転んでも大丈夫なように柔軟に対応する」(別の大手バイヤー)ところもあるようだ。外食も需要回復のペースは遅く、接待自粛で居酒屋やホテル、高級焼肉店の需要は厳しいと予想される。売れ筋も、低等級物、低級部位が中心となり、和牛高級物、高級部位は苦戦が強いられそうだ。

〈価格見通し〉
7月の枝肉相場は、前半は外食需要の戻りの流れが続くものの、補充買いも一巡して中旬にかけて一服するとみられる。問題は後半で、本来ならば焼肉需要の活発化で強含みを期待したいが、コロナの動向次第では、消費者も再び外出を控え、外食需要の低下も懸念される。7月も需要が見通し難く、相場は和去A5で2,310円、同A3で1,680円、交去B2で1,040円、乳去B2で1,015円と予想される。とくに、交雑は和牛と乳去の狭間で上げ材料が乏しく、和牛・乳去も上げても小幅なものにとどまりそうだ。

〈畜産日報2020年7月3日付〉