〈令和3年3月の需給展望 牛肉〉枝肉高・正肉安の展開つづく、相場は前月並みの予想

〈緊急事態宣言の解除も高級物は苦戦、スソ物中心の流れ変わらず〉
例年2月は不需要期で相場も低迷する時期だが、2021年は和牛5〜4等級の枝肉相場はほぼ前月並み〜やや反発に転じた。和牛2等級や交雑、ホルスはヒレ、ロースの不振から前月から下げて前年と同水準にあるものの、各畜種共通して量販店向けに切り落とし材の引合いが入っており、結果的に「高級部位不振・スソ物堅調」「枝相場高・正肉安」という構図が続いている。

3月は新型コロナウイルス感染症予防のための緊急事態宣言が6府県で解除され、飲食店の営業時間短縮が緩和されるなど、落ち込んでいた外食需要の改善が期待される。小売り向けも期初のセールで切り落としや焼材の動きも出てきそうだ。卒入学シーズンなど催事需要の手当ても予想される。このため、枝相場も下げ要因は少なく、ほぼ2月並みの価格を維持するものとみられるが、同時に部分肉ではバラ、モモの価格引上げとヒレ、ロース、カタロースの在庫消化が課題となってきそうだ。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、3月の成牛出荷頭数は8万8,900頭と見込んでいる。前年同月の出荷が少なかった反動もあり、前年同月比では9.9%増とかなりの程度上回るとしている。このうち和牛は3万9,300頭(前年同月比16.8%増)、交雑種1万9,500頭(前年同月比8.0%増)、乳用種2万8,500頭(前年同月比3.1%増)と見ている。

ただ、一部では2020年末の早出し出荷の影響もあり、実際は機構予測を下回ることや、品質も仕上がりのバラツキが大きくなる可能性がある。一方、3月の輸入量品はチルドが1万9,500t(前年同月比21.7%減)、フローズンが2万2,200t(前年同月比1.8%減)と、現地価格の高騰、出船遅れなどの影響でチルド中心に少ない予想だ。ただ、輸入品の代替として、単価の高いホルス、さらに交雑種に引合いが強まるかは微妙なところか。

〈需要見通し〉
緊急事態宣言が6府県で解除された。自治体によってマチマチだが、飲食店の営業時間短縮および酒類のオーダー時間が1時間ほど伸ばされるが、この1時間の差は業態によってもプラスの影響が異なると思われる。とくに焼肉やしゃぶしゃぶなどファミリー層中心の店舗では客足の戻りが期待される。実際に関西の問屋筋にはスソ物に加えて、バラの発注が増えているという。ただ、接待などで使用される高級業態などは、残る首都圏1都3県の解除、あるいは「GoToトラベル」が本格的に再開するまでは厳しい営業が続くとみられる。

一方、量販店など小売需要は切り落とし中心で、今後、月末にかけては卒入学などの催事需要も強まるとみられる。このため、モモやバラ、スネなどの引合いは堅調だが、ステーキ材などは輸入品が中心となっている。中間流通としては昨秋以降、枝肉高・正肉安の環境に置かれているなか、末端の切り落とし材の納品価格を引き上げるか、あるいは不振のロースも併売に応じてもらうかが正念場といえる。

〈価格見通し〉
2月の牛枝肉相場は、末端需要が振るわないなかで、和牛の上位等級は1月並みの価格を維持した。3月2日現在、1都3県の緊急事態宣言の解除は不透明だが、春先需要も控えており、相場の下げ要因は少ないとみられる。2月に下げた交雑種も上物に引っ張られる形で反転する可能性もありそうだ。

ただ、和牛でも歩留まり等級B、Cクラスや、同等級間でも仕上がり状況や個体差で価格はマチマチとなりそうだ。3月はやや中だるみがあるものの、月間平均(東京市場)では、和牛去勢A5で2,700円前後、和牛去勢A4で2,450円前後、和牛去勢A3で2,220円前後、交雑去勢B3で1,550円前後、交雑去勢B2で1,450円前後、乳用種去勢で1,020円前後と予想する。ただ、決算期でもあるため、部分肉ベースでは、今後ロースのチルフロ在庫など投げ玉が出てくる可能性もある。

〈畜産日報2021年3月3日付〉