2020年11月に香川県三豊市の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が確認されて以降、2020-21シーズンの発生事例は3月末までに18県・52事例(75農場、1施設)にまで拡大を見せ、殺処分羽数は過去最悪を記録した。発生農場では飼養衛生管理が必ずしも順守されていたとは言えず、農場内にヒトを介してウイルスが侵入した可能性もある。また殺処分を含む防疫作業では、埋却地確保が徹底されていないケースもあり、防疫体制に課題を残した。

食品産業新聞社「畜産日報」編集部では2020-21シーズンの発生事例や、各県での対応状況・ウイルスの特徴を振り返るとともに、農水省消費・安全局の石川清康動物衛生課長に過去最悪の発生となった今シーズンの総括及び今後の対応策を聞いた。

2020-21シーズンのHPAI発生は、52事例にまで拡大し、殺処分羽数は987万羽に至った。殺処分の内訳では、採卵鶏が832万羽と8割以上を占めたが、肉用鶏も74万羽、肉用種鶏も6.8万羽を殺処分した。都道府県別の発生事例では、18県のうち香川、宮崎、千葉、徳島の4県で複数事例が確認されたが、他の14県では単発での発生に留まった。

2020-21シーズンは2020年11月に香川県三豊市で1例目(約32万羽)が確認され、初発から大規模農場での発生となった。その後、初発から約2週間のうちに同県内で7例(関連農場含み11農場)が確認され、130万羽を超える殺処分に及んだ。11月末には福岡、兵庫でも発生し、12月には養鶏県の宮崎に感染が拡大した。その後も西日本での感染拡大が確認された。12月24日には千葉県いすみ市の100万羽を超える“メガ級”農場でもHPAIが確認された。結果12月末までに46事例・480万羽を殺処分する事態に至った。

2021年に入っても、千葉では“メガ級”農場での発生が続き、あひる農場でも事例が確認された。2月には茨城、3月には栃木でも確認され、2020-21シーズンは18県・52事例での発生となり、過去最悪の殺処分を記録した。

各発生農場では農水省の疫学調査チームによる、現地調査が実施され、多くの農場で何らかの飼養衛生管理基準の不備(手指消毒や衣類交換の不徹底など)が確認されたほか、ネズミなどの小動物が侵入可能なすき間や、農場周辺では水鳥類が確認された。農場入場時の消毒や長靴の履き替え、鶏舎ごとの消毒衣類・長靴の交換不備が指摘されるケースもあり、ヒトを介して農場内にウイルスの侵入を許してしまった可能性が指摘された。

さらに2020-21シーズンは千葉でバイオセキュリティーが比較的高い“メガ級”農場での発生が3例確認されたほか、複数事例が確認された香川、宮崎、千葉では発生が短期間に集中し、限定された地域での続発となり、環境中のウイルス濃度が高まっていた可能性が高い。防疫作業に当たっては、埋却地を確保できている県・農場と、できていない県・農場とに二分され、防疫作業そのものの進ちょくに差が出てしまった。

防疫作業に慣れている県では、早期に殺処分を開始し短期間での防疫作業完了を行えたが、慣れていない県では埋却地の確保ができず、相当の時間を要した。

さらに一部の地域では県だけでは手に負えず、殺処分を安易に自衛隊への災害支援要請を行うケースも散見された。過去最大の発生事例となり、一部地域では防疫作業に遅れが見られたこともあり、政府は防疫指針及び飼養衛生管理基準の見直しを進めている。

〈畜産日報2021年5月18日付〉