〈令和4年4月の需給展望 牛肉〉物価高騰で和牛・高級部位は苦戦、焼材中心の動き

〈交雑・ホルスは堅調、和牛上位等級はマチマチ〉
3月21日に新型コロナウイルス感染症対策の「まん延防止等重点措置」が全面解除されたことを踏まえ、前月は決算期ながらも飲食店やホテル関係など業務用筋からの引合いが出始め、枝肉相場も月後半から少しずつ待ち直し基調となった。

それでも末端需要は接待やインバウンド需要の減少など、コロナ以前の状況には戻り切っておらず、むしろ、相次ぐ物価上昇と景況感の悪化から和牛上位等級のロースなど高級品ほど動きは弱い状況となっている。輸出需要の伸び悩みによる影響も大きい。

これに対して輸入品の代替として交雑とホルスは堅調。ホルスに関しては品不足もあり、3月も去勢B2で1,100円前後を付ける日が続いた。4月はコロナ関連の規制が解除されたことで、久々のゴールデンウィーク(以下、GW)需要が期待され、需要は活気が出てきそうだが、前述の要因から、和牛高級物、ロース系の高級部位は苦戦を強いられそうだ。このため、枝肉相場も第4週までは上昇が見込まれるものの、月間平均としては前年実績を下回るとみられる。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、4月の成牛出荷頭数は前年同月比1.3%増の9万1,900頭とされ、このうち和牛が4万2,800頭(同1.5%増)、交雑2万1,500頭(9.2%増)、乳用種2万6,200頭(4.2%減)と、乳用種以外は昨対を上回ると予測している。先月の「まん延防止措置」の全面解除や新年度明けによる在庫補充の動きによる相場上昇を見据えて、前倒しを含めて出荷が増える可能性が高いが、ホルスは依然として供給タイトであり、それを交雑の下位等級でどこまでカバーできるか注目される。

同じく、機構予測では4月のチルドの輸入量は1万7,800t(30.4%減)で、外貨高と入船遅れの影響で前年よりも3割減となるもよう。年度替わりの関税引下げで通関数量が増加するフローズンも2万2,500t(24.3%減)とこちらも大きく下回ると予想されている。

〈需要見通し〉
気象庁によると、4月は北日本を中心に平年よりも気温の高い日が多いとみられている。流通各社も焼材中心の棚割りが進んでいる。とはいえ、物価上昇の影響で消費者の節約意識は強く、売れ筋は交雑種やホルス、または和牛スソ物の焼材、切り落とし系が中心のようだ。

とくに、GW期間中は地方への人出の増加もあり、都市部の店舗は仕入れコストが上昇するなかで昨年・一昨年の実績をクリアするのに苦労を強いられそうだ。外食や地方の観光需要の再開でロイン中心に引合いが出ているものの、和牛の特定産地・銘柄を除いて交雑種にシフトしているもよう。とくに高級和牛のロースは輸出需要の不振から在庫がたまっており、枝相場とパーツ相場のギャップが生じている。

今年度が事業最終年度となる「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」も一部の事業実施団体・事業参加者の実施数量が確定しておらず、確定しても数量は前年度よりも減らすとの見方もあり、少なくとも今月前半は同事業に関連した枝肉の手当ては少ないとみられる。外食需要も以前のような勢いはなく、問屋筋も発注分以上の在庫を持つことは極力避ける動きが続くと予想される。

〈価格見通し〉
例年、4月上旬は、決算期明けの在庫補充買いで相場は強気となり、中旬は中だるみ感が出るが、今年はホルスが足りないため、ホルス・交雑の2~3等級は4月4週目末まで堅調に推移するとみられる。これに対して和牛の上位等級はロースが不振のため、上値を出し難く、産地・銘柄によってかなりの価格差が生じるとみられる。このため、和去A5で2,600円前後(東京市場、以下同)、A4で2,500円前後、A3で2,250円前後。交去B3で1,600円前後、同B2で1,450円前後、乳去B2で1,100円前後と予想する。

〈畜産日報2022年4月5日付〉