〈中高年層へのフォローで奥行拡大へ〉
チーズの総消費量が17年度(4~3月)前年比5.3%増の33万8344t(農水省「平成29年度チーズの需給表」)、3年連続で過去最高を更新し、拡大を続けている。

家計調査でも支出、購入量ともに8%増で、堅調な家飲み需要と、認知症予防や血管年齢若返りなどチーズの健康機能が注目されたことによる中高年層取り込み、ユーザーの間口拡大が主な理由。認知症予防のカマンベールチーズブームは、1年以上経っても冷えることなく奥行きが拡大しており、次なるブームのブルーチーズも同様の流れになれば、消費量をまた一段上に押し上げそうだ。

一方、取り巻く環境は国内の生乳不足に伴う乳価引き上げ、輸入原料チーズ価格上昇など乳原料コスト増が続き、乳業大手3社は家庭用チーズを5、6月から値上げ、これに対する消費量への影響が懸念される。日EU・EPAやTPP11による輸入乳製品の自由化も控え、環境は大きく変化しており、国産チーズの市場競争力の強化策、関税引き下げに向けた欧州産チーズの準備策など、各社の事業の舵とりに関心が集まる。
2017年度のチーズ需給表

「予防医学を切り口としたチーズの健康機能が、消費者を突き動かす原動力となっており、報道効果が続けば単年度でもう1~2%(金額ベース)は市場を押し上げると見ている。値上げしても、今のレベルではそのくらいのパワーはあるとみる」(乳業大手)。

家庭用チーズの値上げは乳業大手の雪印メグミルク、森永乳業が5月1日出荷分から、明治が6月1日出荷分から、中小企業も7月頃から行っているが、今回は値上げしていないメーカーもあり業界全体としての足並みは揃っていない。ただ今回の値上げは国内乳価引き上げと、消費量の85%を依存する輸入原料チーズの17年度積みの価格上昇分に対する措置であり、値上げを踏みとどまったメーカーも、今年7~12月積み輸入原料の価格上昇(豪州産5~8%アップ)でもう一段上のコスト増に見舞われることから、この原料を使うタイミングで、値上げ追随の可能性もある。

値上げしても消費量を大きく落ち込ませない対策が、近年の市場成長を支えているトライアルユーザー、中高年層に対する継続的な啓蒙活動であり、チーズ慣れしている40代前後と、初心者の60代以上のそれぞれに合わせたプロモーション施策が重要となってくる。

「チーズを使った料理訴求に走りがちだが(それは慣れた人向けで)、チーズのベネフィットを違う形で訴求していくことも大事」(メーカー)。認知症予防や血管年齢若返り、カルシウム補給などでトライアルユーザーを取り込んできた経緯からも、まずはそのまま食べる、そしてアレンジ篇としてレシピ紹介していく流れが自然であり、ここを一足飛びにしない消費者目線に立った普及活動が求められる。

「チーズはそのまま食べられるという特性が幸いし、家庭内調理が減れば減るほど買い置きが増えるのではないか」(乳業OB)。堅調な家飲み需要とベビーチーズの著しい成長がセットで見られがちだが、実は酒を飲まない層の簡便志向や食べ切りニーズも、背景にあるものと見られ、この層の消費動向を細かく分析する必要もありそうだ。

17年度家庭用チーズ市場(本紙推計で13万t強)は、物量ベースで7%増、金額ベースで6%増。直近2年間も物量で5%ずつ伸びており、量的拡大が着実に進んでいる。〈この項、続く〉

〈食品産業新聞 2018年7月19日付より〉