ソディック食品機械事業部、製麺プラントの技術を活かし無菌包装米飯・豆腐麺などにも取り組み/神野久彦事業部長

ソディック食品機械事業部・神野久彦事業部長
(株)ソディックは横浜市に本社をおく放電加工機や射出成形機などを製造する工作機械メーカーだ。同社で唯一食品機械を製造している食品機械事業部は製麺機や茹でプラントなど、製麺関連機器600機種以上をラインアップする。 前身となる(株)トムは今から30年前、兵庫県伊丹市で創業した。同社は1995年、阪神・淡路大震災で工場に被害が出たため、石川県白山市にあるソディックの工場の一部を借りて製造・販売を展開、2004年には本社を白山に移転し、ソディックの資本参加を得て(株)トム・ソディックとなった。その後、12年には(株)ソディックの食品機械事業部として新たなスタートを切った。 北陸に移転して22年目となる16年、ソディック加賀事業所内に新工場を竣工し移転、新たなスタートを切った。神野事業部長は本年3月に事業部長に就任、今後の展開について聞いた。

――現況について。

神野 18年上期の売上は31億円、今期は68億円を見込んでいる。検収の遅れもなく、目標は達成できるだろう。近年はCVSベンダーによる設備投資が活発化しているほか、大手メーカーの新工場建設など、麺業界は活気づいている。毎年2~3件の新工場ができており、数多くのベンダーの内、キーベンダーが新工場を作っている。大手への集約が進みつつある。海外市場も同様だ。このほど、中国の大手メーカーが冷凍麺設備6ラインを発注、7月に契約の調印式を執り行った。

――今後の展開は。

神野 7月に開催された、前身であるトム設立30周年を祝う式典で「これからの30年は総合食品事業を目指す」と宣言した。現在、製麺プラントの技術を活かし、無菌包装米飯の製造ラインや豆腐麺の製造ラインなどにも取り組んでいる。製麺プラントのシステムは、麺以外の食品製造にも応用できる。連続装置のラインとして流すことで生産効率が向上する。麺には熟成という段階があるが、これはパンにおける発酵の段階に置き換えられる。無人化やスピードアップにつながり、食品業界全体の効率化や品質向上につながると考えている。LL(ロングライフ)麺の殺菌装置と冷却システムは無菌包装米飯製造に転用され、大手メーカーが採用している。漬物の殺菌にも応用可能で、まだまだ可能性は広がっている。各業界からの引き合いも強い。

〈今秋には新製品を発表〉
――めん業界に向けて。

神野 当社には創業以来のユーザーも多く、その要望をかなえていきたい。人手不足も深刻で、無人化についての相談も多い。ソディックではAIにも取り組んでおり、精密な技術を食品機械にも応用できれば、と考えているが、開発費の問題もあり、難しい課題となりそうだ。16年に工場内に新設した研究室ではできあがった食品を科学的に分析するための機器をそろえ、専門のスタッフが研究に取り組んでいる。温度や水分、食品の品質管理には細かい数字が必要だ。また、近年では即席カップ焼きそばでヒット商品が生まれた。研究所のレベルは上がっており、新しい製品が生まれるだろう。技術革新がありそうだ。ユーザーとともに価値のある製品を生み出すために、ともに研究を進めていきたい。

――目標は。

神野 3年以内で売上100億円を達成したい。今秋には玉取り機の新製品を発表する。長年お世話になっている既存ユーザーを大切に、“食文化の発展を通して社会に貢献する”という理念をもって取り組んでいきたい。

〈月刊「麺業界」2018年10月号より〉