30年産新潟コシヒカリ販売計画は14.5万t 相対据え置き、業務用米転換に卸から歓迎の声多数=新潟米懇談会

全農新潟県本部は12日、新潟市内で「新潟米懇談会」を開催、30年産コシヒカリの販売計画を14.5万t(前年比0.5万t減)、こしいぶきを3.3万t(0.9万t増)とした。

冒頭、全農新潟県本部運営委員会の今井長司会長は「29年産の作況指数は96と思わしくなく、充分な数量をご提案できずにご迷惑をおかけした」とし、「30年産は7~8月の記録的な猛暑でご心配をおかけしたが、こしいぶきの品質は未熟粒・胴割粒の混入も平年並で、ひとまず胸をなで下ろしている。これからコシヒカリの刈取が本格化するが大きなブレは無いだろう」と話した。また、今井会長は懇親会後の囲み取材で、相対価格を据え置いたことについて「コシヒカリは事前契約が85%まで積み上がっているので、その契約に沿っていくと今の価格で売れると考え、据え置いた」と説明している。

同じく挨拶に立った全米販の木村良理事長は、7月の食糧部会で示された需要見通しに触れ、「(近年の)消費減少の大きさを考えると、(生産と流通が)互いに消費拡大に協力していかないといけない」とし、「これから30年産を迎えるにあたり、国際的にもこれから輸出を増やしていこうというなかで、特に新潟コシと北海道銘柄は世界的にも名が通っている。これを大いに海外に売り、互いに納得できる価格で消費減少を止めたい――というのが卸の発する願い。こうしたことを生産サイドと協力して進めていきたい」と話した。

【新潟県農林水産部農産園芸課・牛腸眞吾課長】
昨年5月に策定した「新潟米基本戦略」に基づいて方針を説明。

需要拡大と生産者所得の最大化を柱に、今年度もコシヒカリは需要減に見合った量、食味重視の生産を行う一方、業務用米・加工用米などは需要拡大を図ると同時に、多収やコスト低減の取組を進めるとした。その業務用米については、県の29年度補正予算でコシヒカリから多収性品種への種子転換を支援した結果、30年産多収性品種の作付面積は種子供給ベースで5,000ha(29年産比1,200ha 増)を見込むとした。

県全体の30年産生産見込み量はコシヒカリ32.6万t、こしいぶき7.5万t、新之助1.1万t(前年は0.6万t)、ゆきん子舞・つきあかり・あきだわらなど3.3万t(前年は1.9万t)。このほか、新たに「新潟米図鑑」という冊子を作成。品種特性や相性の良い料理などを実需者らに紹介するパンフレットで、五ツ星お米マイスターの評価なども掲載されている。

【全農新潟県本部・風間秀樹米穀部長】
昨年8月に決定した基本方針に基づいて説明。基本目標は、新潟米シェアを需要実績ベース7%台前半から10年で8%まで拡大するとし、重点取組事項に▽マーケットインに基づく販売強化▽新潟米ブランド強化と多様な品揃え▽需要に応じた生産と水田フル活用▽JAグループへの出荷結集と担い手への結びつき強化――を挙げた。

30年産以降の作付については、コシヒカリの作付比率減に触れた上で「一部地域のコシヒカリは不足感が生じている面もあるので、需要動向を見極めていく」とし、加工・米粉・輸出・飼料用米は拡大、備蓄米は現状維持の方向性を示した。多収性品種はあきだわら(晩生)、つきあかり(早生)、ちほみのり(極早生)、あきあかね(晩生)のほか、8月中旬に収穫できる極早生品種として「葉月みのり」の生産を開始する。

集荷は、契約栽培や買取集荷を増やし、聖籠町の広域集出荷施設を核にフレコン集荷に努める。広告宣伝活動は昨年に引き続き、テレビCMに浅田真央さんを起用。首都圏・中京・関西・県内で10月にCMを放映し、首都圏・県内では11月以降も放映予定。

【大和産業(株)・川上修己会長】
新潟コシヒカリの販売数量がだんだん減ってきており、新潟米は少し元気ないんじゃないかと心配している。集荷を大手町含めてもう少し一緒にやって、20万tくらい集める気持ちになってもらわないと。特に今年は北海道の作柄が悪く、今年は7万t出るか心配してる。弊社の近辺で言えば名古屋や三重も悪い。西日本の米は今年全滅だと思う。新潟も足りなくならないか心配だ。まずは元気よく集荷して販売してもらいたい。単協の組合長もいらっしゃっているが、県本部に米を持っていってもらえれば卸も頑張って販売するので、まずは集荷に頑張ってもらいたい。

【(株)神明・森竜哉上席執行役員管理本部経営企画室長】
28年産は作況108、29年産は作況96と新潟は厳しい年が続き、供給は大丈夫かなと思っていたが、結果的には29年産の作柄低下が新潟産米のタイト感を出す形になり、末端価格が安定して端境期まで来た。各県の銘柄と比べても安定した状況だ。一方で、全国的にも米の価格は作柄と比例することなく、27年産から3年連続で上がっている。消費は毎年8万t減のトレンドと言いながら、ここ数年は10万t以上の減少。新潟は日本最大・最高品質の米産地ということを皆さん認めている。やはり新潟の稲作を守っていく意味でも、国内マーケットの消費回復は必要だ。消費拡大のためには米生産と安定供給、そして安定した出荷力が大前提になっていく。相対価格は総体として上がっている状況のなかで新潟は据え置きという判断をされた。我々としては非常に賢明なことではないかと考えている。勿論、生産現場では再生産価格が困難な状況だとは思うが、我々卸も利益確保が困難な状況になっている。

また、末端で起こっている大きな問題にも目を向けて戴く必要があるのではないかとも思っている。業務用需要は伸びているが、それを牽引する中食・外食の現場は激しい人手不足に見舞われている。2017年、アルバイトの担い手となっている若者世代(15~24歳)は545万人だが、20年前と比べると284万人も減少している。時給を上げても人が集まらず、食材価格を抑えないと儲けを出すことができない。外食ではFLコストというものがある。Food(食品)コストとLabor(労働者)コストだ。Labor コストが上がったことでFoodコストを抑えないといけない。特に我々卸は、米を使用する実需から需給や作柄に関わらず毎年値下げするよう言われるのが事実。新潟は多収品種の取組を拡大して戴いているので、同じ面積で量を積んで手取りを確保する方向にシフトして戴くことも不可欠だ。

家庭では炊飯シーンが激減している。我々は業務用でも新潟コシを使ってもらっているが、一番大きな容量は500kgのフレコン。一番小さな容量は150g(1合)。150gの商品はバラで販売しており、販売価格は138円だ。kg換算すると920円で割高ではあるものの、お客様は買っていく。我々もこういう商品が増えると手間がかかって量が出ないということにはなるが、こうした小容量の引き合いは確実に増えている。日本一の米どころだからこそ、国内の米消費を回復させるための発信を一番やって戴けるのは新潟だと思っているし、その使命を持っているのも新潟だと思っている。

【(株)ミツハシ・三橋美幸会長兼CEO】
今年は生産調整廃止元年。その年に(新潟が)主食用米の作付を増やしたことは大変心強いと考えている。米どころ新潟がしっかりそうした数字を増やしていくことが大切だと思うし、さきほど「8%」(10年後、需要実績ベースで新潟米シェア8%まで拡大)の話があったが、是非とも8%と言わずに2ケタを目指して戴きたい。また、業務用が伸びておりその対応が不可欠だが、業務用米を安いものと決めつけるのは如何なものかと個人的に思っている。ただ、やはり安いものを求める需要は非常に強い。特に3年連続で価格が上がったなか、そうした要求は強まっている。新潟はつきあかりやゆきん子舞の作付を増やしており、今後ともそれを更に推進してもらいたい。我々も安いものだけではなく消費者の求めるものに応えていきたいと考えているが、実は消費者が何を求めているかという実態は掴みづらく、販売してみないことには判らない。その意味でリスクはあるが、それを恐れずにチャレンジして参りたいので、一緒にやらせて戴ければありがたい。

【伊丹産業(株)・的場伸一相談役】
各県が新品種を投入し、高価格帯は飽和感がある。その一方、業務用や低価格帯が不足するという観測があるため、各県が多収穫米やB銘柄に生産をシフトしている状況。つまり、各県が全く同じ動きをしており、需給状況が逆転するのではないかと危惧している。特に新潟コシは作付が減ってビックリしている。新潟コシはトップブランドで、他に代替品が無い。量販店からは毎年安定した量を要望されており、消費者にも愛用者が多い。多収品種やB銘柄へのシフトは良いことだが、新潟コシの需要をよく見て戴いて、供給を続けて戴きたい。

【むらせ(株)・村瀬慶太郎社長】
(新之助について)弊社に入ってくる良食味新品種をチェックしているが、弊社データでは新之助の食味値は最高点だ。蛋白質含有率も平均5.8%で、全銘柄のなかで最も低い。そして千粒重も最も重い。29年産は数量が限られていたので、弊社は2kgに絞って販売した。非常に評価が高く、価格も2kg 1,500円以上を維持しながら販売した。我々としてもしっかり利益が取れる米でありがたい。

30年産相対価格を据え置かれたが、バイヤーの懸念はやはり品質。29年産と当然同じ品質を求めて買うだろう。新之助はライバルが多いが、最も高い数値を出しているので、こうしたことをしっかり生産者にフィードバックして戴いて、モチベーションに変えて戴きたい。

〈米麦日報 2018年9月13日付より〉