(株)大阪堂島商品取引所(中塚一宏社長)によるコメ先物の本上場申請をめぐっては、監督官庁である農林水産省の「不認可」判断→廃止の可能性が高いというのが大方の見方だし、本紙でもそのように報じざるを得なかった。だが、ここに来て、「一転、認可」の光明も見えてきた。

まず事実関係から。最初にコメ先物の試験上場が申請されたのは今から15年前のことで、このときは「不認可」判断が下された。理由は「コメの生産に著しい支障を及ぼす恐れ」があったから。具体的には、(当時の)米政策と「整合的でない」から。監督官庁が不認可判断を下す場合、「意見聴取」しなければならないと、この当時も今も法制度に明記してある。逆に云うと、(不認可でなく)認可を前提としている場合は「意見聴取」という手続きが不要になる。つまり、「意見聴取」を実施すること、イコール、不認可と考えるのは、ごく自然な見方なのである。その5年後の2011年(平成23年)、今度は一転、試験上場が認可され、72年ぶりにコメ先物が復活した。ただし試験上場期間は2年(普通は3年なのに何故か2年)。その延長を繰り返し、気づけば10年たっていた次第だ。前々回、4年前の延長の際、監督官庁は「これが最後」と釘を刺した。前回である2年前は、いったん本上場申請を「不認可」とし、試験上場の延長申請を出し直させ、再び「これが最後」とした。そして今回だ。7月16日、堂島商取は本上場を申請。7月27日、農水省は「意見聴取」を実施する旨、通知・公表。前述した通り「なるほど農水省は不認可にする気なのだな」と捉えるのが自然だ。事実、農水省は同日夕刻、共同取材に応じ、「本上場要件を満たしていない」と明言した。

だが堂島商取側にしてみれば「青天の霹靂。驚天動地」(7月29日の緊急会見で中塚社長発言)以外の何ものでもない。当たり前のことだが、それまで農水省と堂島は非公式な協議を重ねてきたし、そのなかで「ここがダメ」といった話は一切出ていない。にもかかわらず、堂島商取の「定例」取締役会前日の「意見聴取」通知、その日の朝刊における一部報道というタイミングが、とても不自然に見えてしまうのは致し方ないところだろう。7月16日〜27日の約1週間(営業日にしてわずか3日間)の間に「何かあった」と考えるのは、決して邪推ではあるまい。また堂島商取が「我々は本上場要件を満たしていると考えている。仮に不認可になったとしても試験上場は申請しない」と決断したのも、無理からぬことだ。農水省の説明(通知)によると、不認可判断の理由は、直接的には「当業者の参加が増えていない」ことだそうだ。しかし2年前の試験上場延長の際、農水省が自民党に提出した資料に、「当業者の参加が増えている」という表現が登場する(当時いったん本上場を不認可にした理由はひとえに出来高の不足と説明された)。堂島商取によると、「2年前に『増えている』と指摘された当業者の参加数は、さらに増えている。農水省の説明は矛盾する」(7月29日の緊急会見で中塚社長発言)わけだ。8月5日の意見聴取では、この点を丁寧に説明する、とも。同じ場で中塚社長は、「意見聴取が、文字通り一方的な聴取の場にすぎないことは承知している。しかし、あれだけ頭の良い方々がこのような理不尽を貫くとも思えない。我々は本上場要件を満たしていることに自信を持っている。我々だって廃止したいわけではないが、“お上”がやめろというものには逆らえない。だから仮に不認可となった場合でも、試験上場の申請はしない」と憤る。

仮に廃止となった場合を考えてみよう。まず、平成2年(1990年)の「自主流通米価格形成の場」以来、現物か先物かは別にして連綿と続いてきた価格指標がなくなる。すると、どうなるか。「見える」価格はスポット市場だけになるから、明らかに現物価格は乱高下する。予言でも何でもなく歴史が証明している。それから今のところ開店休業状態の大連商品取引所(中国)が息を吹き返し、日本産米の値決め主体をジャポニカ先物市場に奪われる。対中輸出どころの騒ぎではない。ほかにも色々思いつくが、これらで十分だろう。廃止になったら、実は誰も喜ばない、得をしないのである。少なくとも日本国内の関係者は。よもやそんなことはないと思うが、総選挙の年、農村票をアテにした某政党の勘違いによる忖度ではあるまいな? 確実に逆効果である。

おっと、本紙連載でも「最後のハードルは『感情を逆なでしない』こと」と指摘したところだ。ここは冷静に、意見聴取とその後の推移を見守ろう。物理的には8月20日までに「正常な判断」を下してくれれば、市場も途切れずに済むのだから。  (岡野)

〈米麦日報2021年8月2日付〉