アイリスフーズ取締役社長・北尾利徳氏「秋冬シーズンに向けてフルアクセル、もっとお米をアピール」【インタビュー】

アイリスフーズ 北尾利徳新社長
3月1日付でアイリスフーズの山田次郎社長から北尾利徳新社長にバトンが渡った。今回、本紙「米麦日報」では北尾社長に来歴や今後の事業展望について聞いた。

――まずはアイリスオーヤマでの来歴を。

2003年に32歳でアイリスオーヤマに入社してから20年目になります。入社当時のアイリスオーヤマは現在ほど家電商品などを取り扱っていたわけではなく、収納インテリアやペット用品、ガーデニング用品といった生活用品を主に販売していました。私は主に、それら生活用品をチェーンストアに提案する仕事に携わってきました。伺う先はGMS(総合スーパー)、SM(スーパーマーケット)、ドラッグストア、ホームセンターです。訪問する部署は変われど、アイリスフーズで食品と飲料の提案をするうえで、訪問先は基本的に同じですね。また、法人向けのLED照明の提案や、建装什器の提案にも携わりました。

――ちなみにアイリスオーヤマ以前は。

新卒で機械関係の商社に勤めていました。自動車関連の部品や製造ラインを担当していて、これも非常にやりがいのある仕事でした。ただ、色々な取引先メーカーと仕事をし、30歳を過ぎて、より製造に近い仕事に興味が湧いてきたのです。そんな頃、東名道で裾野(静岡)に向かっていた際に、アイリスオーヤマの工場(富士小山工場)が目に入ったのがきっかけになりました。

――アイリスフーズに移られてからを。

最初は全国流通の量販店の営業担当となりました。アイリスオーヤマでGMS、SM、ドラッグストア、ホームセンターを回っていた経験を活かすことができる部署です。前社長の山田(次郎)はアイリスオーヤマ時代からの先輩です。

同じ部署で働いたことはないのですが、今にして思うと私の経験が生きる部署に配置してくれたのだと思います。それから2021年になって東日本支社長に就任。東日本全体の営業を担当した後、アイリスフーズの社長として全体の責任者になりました。

――では、社長就任時のお気持ちは。

大山(晃弘・アイリスオーヤマ)社長から辞令をいただき、その一時間後に大山(健太郎・アイリスオーヤマ)会長から電話がありました。私も社長就任にあたっての食品・飲料事業の展望を語り、今後の展望を共有させていただきました。アイリスグループで唯一、専業で食品・飲料を取り扱っていますが、生活用品や家電と比べて非常に店頭での回転率が高い商品です。今後のグループでの位置づけについても共有させていただきました。

――今期(2022年12月期)の進捗について。

前期を上回る水準で進捗しています。巣ごもり需要はひと段落したともいわれますが、パックご飯、飲料がけん引しています。特に飲料はこれからがトップシーズンなので、高い伸びを期待しています。

――主要事業の販売内訳を。

創業から行っている精米事業が最大ボリュームです。そして、パックご飯事業。2021年2月から自社飲料事業として飲料販売を開始しましたが、すでにパックご飯に近いボリュームになっています。それと、ボリュームはそこまで大きくありませんが、もち事業、その他食品事業を展開しています。

――精米事業の進捗は。

全体の取扱量は残念ながら微減です。ただ、伸びている分野もあります。「アイリスの生鮮米」は各地のブランド米を小分けパック(無酸素ラミ袋+脱酸素剤入り)にして販売しており、これは前期比で横ばいを維持しています。急に大きく伸びる商品ではありませんが、付加価値商品として一歩ずつ伸びています。吉沢亮さんを起用したテレビCMでもPRを続けており、さらに認知度を上げていきたいと考えています。

また、温度管理にこだわった「低温製法米」は、通常の精米が市場環境から前期を下回る動きですが、無洗米は前期を上回る進捗で、製造ラインもフル稼働を続けています。

――パックご飯事業について。

こちらは市場が拡大していることもあり、当社も市場動向に近い伸びを見せています。今年の4月末には角田工場(宮城県角田市)の製造ラインを2ラインから3ラインに増強しました。

また、先日発表しましたが、鳥栖工場(佐賀県鳥栖市)に精米・パックご飯と・飲料の製造ラインを導入します。2023年3月に精米ラインを稼働、2024年3月にパックご飯1ライン目、2025年3月に2ライン目稼働を予定しています。具体的な品種などは未定ですが、九州産のブランド米の商品化も視野に入れています。

――西日本で本格的に精米・パックご飯を行いますが、原料米の仕入れは。

当社は従来からアイリスグループの舞台アグリイノベーションから原料米の仕入れをしており、西日本での製造でもそれは変わりません。現在も日本各地の原料米を舞台アグリイノベーションから仕入れています。

――飲料事業は。

飲料は以前から発売していましたが、2021年2月に自社飲料事業が本格的に動き出し、「富士山の天然水」、「富士山の強炭酸水」を発売しました。2年目を迎えており、ここまでは計画通りの進捗をしています。これから夏の販売も期待しています。

――もち事業の動向は。

季節商品として考えれば上期(1~6月)の動きはそれほど大きいものではありませんが、特徴的な動きをしています。ここまでの実績は前期を上回っており、年間を通しておもちを食べる方に支持いただいているようです。

――今後の事業展開について。

市場が拡大しているパックご飯ですが、新米の出る秋冬シーズンに向けてフルアクセルで展開していきます。2年目の飲料もさらに競争力を高めていきます。そして、精米はもっとPRを進めていきます。秋の新米の価格がどうなるかは見通せません。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻の影響から、今年の秋も小麦の価格は高くなるといわれています。世の中の方に、もっとお米を手に取ってほしいとアピールしていきます。

会社を成長させていくには、食品・飲料とももっと規模を拡大させなければいけません。また、いま取り扱う商品から派生するような新たな事業展開も考えていきます。

――ありがとうございました。

〈アイリスフーズ取締役社長・北尾利徳氏 略歴〉
きたお・としのり 1971年1月13日生まれ。2003年アイリスオーヤマ入社、2009年同社東京支店長、2016年同社LED事業本部関東営業部長、2018年BtoB事業グループ建装什器事業部長。2020年にアイリスフーズに異動し、全国チェーンの量販店の営業を担当。2021年に同社営業本部東日本支社長、2022年3月に同社取締役社長に就任。

5月15日開催の福島舞台ファームの南棚塩圃場での田植えイベント トラクタに乗る北尾社長

5月15日開催の福島舞台ファームの南棚塩圃場での田植えイベント、上はトラクタに乗る北尾社長、下は参加者と北尾社長

〈米麦日報2022年6月7日付〉