自民党の「米の需要拡大・創出検討プロジェクトチーム(PT)」は6月8日、第一次提言をとりまとめ、農林合同に報告した。

副題は「~日本の水田農業と地域を持続可能にするために~」。この若手議員中心のPTは進藤金日子氏(参・比例)を事務局長、鈴木憲和氏(衆・山形2区)を座長に据え、2021年4月から計12回の関係者ヒアリングを行ってきた。提言では「2030年を目途に約50万tの市場拡大を目指す」と具体的な数値目標を盛り込んだほか、長粒種の推進や小麦業界を巻き込んだ方策、需要拡大関連予算の拡充など、踏み込んだ内容となっている。「第一次」とあるように、PTは「米の生産者が真に豊作を喜ぶことのできる環境を整備できるまで、引き続きPDCAを回しながら取り組んでいく」と提言を結んでいる。概要は以下の通り。

【現状認識】
▽需要減は人口減によるものだけではない。米を減らし、たんぱく質摂取量を増やすという“中高齢者”の食生活が要因になっている一方、若年層の消費はまだ伸びる余地がある(昨年6月に公表した中間報告では、若年層は想定以上に米の消費意欲が高いとしている)。

▽従来の米政策は真にマーケットインではなく、失敗を重ねている。一例は、「あるから使え、というプロダクトアウトの発想でやってきた米粉」(鈴木座長)。

▽一方、同じ主食である小麦製品は常に新商品を投入し続けてきた。そうしたメーカーの努力によって、人口減の現状下でも一定のマーケットシェアを維持している。加えて、米を利用した商品開発にも注力している。

▽マーケットインの視点では、品種特性により注目すべき。例えば中山間で長粒種を栽培し、パン・麺に適した米粉の増産を、パン業界や製麺業界も巻き込んで実現していく可能性が開けてきている。

▽輸出は伸びつつあるものの、人的・金銭的資源が不足している。国を挙げての戦略や一部市場でのコスト面の課題対応が急務。

【用途ごとの可能性】
▽主食用米=高価格帯は家庭用・中食・外食のいずれも需要の伸びが限定的。しかし、低価格帯は中食・外食・輸出に可能性がある。▽低価格帯の業務用米=外国産米が使用されていた低価格帯の業務用需要に、国産米が応えられる可能性がある。なおヒアリングでは、国産を使用していた大手外食チェーンから「産地との価格の折り合いが付かず、あまり食味の変わらないカリフォルニア米に切り替えざるを得なかった」との声も。

▽加工用米など=パックご飯は家庭用・中食・輸出、米菓は輸出に可能性がある。なお、パックご飯は(国内)家庭用需要の高まりによって輸出需要に対応できなかったとの声も。

▽米粉用米=家庭用・中食・外食・輸出のいずれも可能性がある。ただし主食用品種を仕向けるのではなく、長粒種やパン・麺に適した専用品種による生産が重要。▽酒米=日本酒の国内需要は低迷しているものの、輸出に可能性がある。

【早急に着手すべき8項目】
〈1〉外食などでの利用拡大=まず基本は外食事業者のニーズであり、川上・川中がマーケットインの視点から緊密に連携可能な体制を整備する必要がある。学校給食の面では国と自治体が連携強化を図るべき。国際ルールにも配慮しながら、品質・量・価格面で事業者ニーズに応え、国産米が安定的に供給される誘導策が有効。

〈2〉中高齢者向けの広報戦略=炭水化物(制限)ダイエットに関心が高い消費者や、米の消費が大幅に減少している中高齢者層を主なターゲットに据え、栄養士学会などと連携しながら健康に着目した広報を進めていく必要がある。既にさまざまな需要拡大の広報はあるが、SDGsやフードマイレージなど、新たな観点で有効性を発信する取り組みも必要。

〈3〉小麦粉の一部を米粉で代替=米粉の需要拡大の上で必須となるのが「消費者に選ばれる商品づくり」。まずは主食用品種だけでなく、新たに長粒種などのパン・麺適性を評価する必要がある。その上で「もっちり・しっとり」という米粉の特徴を活かしながら、美味しく、小麦製品と変わらない価格での新商品作り・マーケティングを推進。また、製粉・加工段階での低コスト化のための新技術開発や、米粉用米の品種改良など推進する必要がある。「いくら米業界だけでやっていても限界があるので、やはり大手即席麺メーカーなど、いま『麦業界だ』と思われている皆さんとも連携して、思い切った展開しなくてはならない」(鈴木座長)。

〈4〉新商品の開発・販売促進=炊飯中心という従来の消費形態に加え、販売力のあるメーカーや流通事業者などと連携して米を利用した加工品を開発するなど、思い切ったモデル事業の展開が必要。

〈5〉輸出促進=一部市場で飽和しつつある高価格帯だけではなく、日本産米全体の市場を拡大させる必要がある。需要に応じた品質の確保と同時に、生産コストの低減などによる価格競争力強化、パックご飯の供給力強化が求められる。また、日本産米同士の競合を避けるため、品目団体によるオールジャパンでの取組などを通じ、ジャパンブランドとしての輸出促進を徹底すべき。

〈6〉流通形態の多様化推進=業務用や加工用といったマーケットのシグナル(品質や価格)が生産現場になかなか届かない流通形態になっている。シグナルが産地に直接届くよう、米流通の再編を促す施策も必要。また「米マッチングフェア」や「スマート・オコメ・チェーン」など、既に始めている取り組みを早急に拡大すべき。

〈7〉生産コスト削減と生産者収益向上=先進事例を整理して横展開すべき。先進事例のイメージとしては、マーケットインの視点から生産コストと収益を見据えた価格を設定し、それに見合う取り組みを生産基盤・技術・流通に至るまで徹底しているもの。

〈8〉予算充実=需要拡大のためにはKPIを明確に設定し、予算の重点的措置が不可欠。関連予算をパッケージ化して、各段階のプレイヤーが連携しつつ必要な事業を選択し、最大限の効果を発揮させる取り組みを推進することも有効。

【施策展開の方針】
長粒種などの新たなマーケットや海外マーケットを創出・開拓するためには、概ね10~20年スパンの具体的な年限を設定すべき。また、仮に需要拡大策が軌道に乗った場合の市場規模を目標値として設定し、PDCAサイクルを回しながら民間とともに取り組む必要がある。

【市場規模試算】
2030年目途は、現状と比べて約50万t増。米粉の部分については単純な小麦粉代替ではなく、消費者が好んで選択するような商品が開発されることで新たなマーケットが創出され、長粒種など消費者ニーズに合った米粉用米が需要に応じて生産される場合の数字。「米粉28万tのうちわけは私が勝手に作ったのだが、家庭のパン用(小麦粉)から5%、麺用5%、菓子用10%置き換え――と、積み上げている」(鈴木座長)。また、輸出の部分については、主にカリフォルニアのジャポニカから市場を奪う想定。「例えば、カナダはアメリカから7万t、サウジアラビアは5万tを輸入しているが、これらの国に入っている日本産米はゼロ」(鈴木座長)。

【結びに】
今後新たな需要を創造し、国内外の消費者に定着するようになるまで、民間事業者には試行錯誤が求められる。ビジネスとして成立するまでのバックアップ体制を含めて、農林水産省と各事業者が「協働」の意識をもち、密接に連携をとることの必要性を痛感している。また、国と自治体の連携強化も極めて重要である。まずは米の需要を下げ止め、その後、国内外のマーケットを創造することで、米の生産者が真に豊作を喜ぶことのできる環境を整備できるまで、引き続きPTはPDCAを回しながら取り組んでいく。

〈米麦日報2022年6月9日付〉