〈シグナル〉愛飲家への説得が欠かせない

10月から11月にかけて、アサヒビール、サントリー、キリンビールが相次いで主要なビール類のリターナブル商品(瓶・樽)の価格改定を発表した。アサヒが来年3月から、サントリー・キリンが4月から実施する。サッポロビールも近々発表するとみられている。

酒類消費の多様化で、ビール類のリターナブル瓶の2016年出荷数量は08年比で約40%、同樽詰商品は約8%減少している。また、車両やドライバーの不足で物流費が上昇し、空容器の回収・洗浄・保管などの負担が増加している。

6月に施行された改正酒税法による新取引基準が見直しの契機となった。新基準では、酒類業者(製造・卸・小売)が行う酒類の取引で①正当な理由なく、酒類を総販売原価(売上原価+販管費)を下回る価格で継続して販売すること②自己又は他の酒類事業者の酒類事業に相当程度の影響を及ぼすおそれがある取引をすること――を禁止している。

現状では、各社とも瓶・樽の採算悪化が続いていることを認め、総販売原価割れとなっている、もしくは近い将来総販売原価割れとなる可能性を否定していない。

今回の価格改定で「小売店店頭でビール大瓶で10%前後の上昇となる見込み」(アサヒビール)だ。今回は主に業務用が対象だが、消費拡大のためにも、愛飲家を納得させる丁寧な説明が欠かせない。

<食品産業新聞2017年11月30日付より>