変化するみそ市場 液状みそが売場のど真ん中に、使いやすい顆粒みそが追随

スーパーのみそ売り場
新型コロナウイルスによる巣ごもり需要の影響で、2020年のみそ生産量は4月に前年を上回ったが、それ以外は1月から5月まで前年を下回って推移している。5月はその特需の反動が出て、厳しい経営を強いられているところもある。

売場では液状みその販売に力を入れるところが増えてきた。棚の一番目立つど真ん中で販売されるケースが多く見られる。第3の形態の顆粒みそも振りかけて使うという使いやすさとおいしさがバイヤーからの高い評価を受けており、注目が高まってきている。

全味(全国味噌工業協同組合連合会)がまとめた2020年1月〜5月の生産量は前年比2.6%減の16万5065tとなり、出荷量は同3.0%減の16万501tと、ともに前年を下回って推移している。

生産量では、新型コロナウイルスの影響で4月は前年を上回ったが、それ以外は前年を下回った。出荷量では3月が前年を上回ったが、それ以外は前年を下回っている。

総務省の家計調査では、支出金額と購入数量がともに、3月〜5月は前年を上回り、特に購入数量は4月・5月と2ケタ増になっている。これは新型コロナの影響で家庭用商品の数量が伸びているものの、外食の落ち込みなどが影響して、業務用商品が大幅に前年を下回っていることを意味している。

マルコメ、ハナマルキ、ひかり味噌の大手3社の2020年1月〜5月の業績は前年を上回って推移している。これは、家庭用または業務用において売上比率が偏らず、みそ以外の即席みそ汁やその他の商材が好調で、みその業務用商品の落ち込みをカバーしているからだと推測できる。

一方、地方の中堅メーカーは、地場の小学校給食や外食などに売上の比率が偏っているケースが多く、新型コロナによる巣ごもり需要の恩恵だけでは落込みをカバーできない状況が出ている。

新型コロナ以前と以後では、個食化から多食化に変わってきているようだ。家族全員が家にいる時間が以前よりも長いため、家族の人数分を、時間かけて作るケースも出てきている。

ただ、時短・簡便・作り置きといったトレンドは継続しており、調理にかかる負担をいかに減らすかというニーズは相変わらず高い傾向にあるようだ。

即席みそ汁に関しては、カップ、多食用ともに好調で、即食需要も依然として高いニーズがある。また、輸出に関しても、150%、200%で伸びているメーカーが存在しており、国内外でのダブル需要に対応しているケースもあると聞く。

〈豊富なバリエーションが消費者の選ぶ楽しさを刺激〉
みそ売場では、消費者の目線の位置に液みそを据えるところが散見され始めた。おいしさに加え、使い勝手の良さがようやく浸透してきており、マルコメだけではなく、マルサンアイの「とろける味噌」シリーズなどバリエーションが豊富になってきたことも消費者の選ぶ楽しさを演出しているようにも思える。

マルコメでは液みその発売から11年目で2020年6月に累計出荷数量5000万本を達成した。同社が液みそ既存ユーザーに実施したアンケート調査では、液みそと固形の生みその併用率は9割となり、液みそは味付けやソース作りにも使われていることが明らかになった。

また、液みそユーザーの4割弱が複数のフレーバーを使い分けていることも判明。女性より男性、さらに男性でも年代が若いほど併用率が高く、男性20〜30代の液みそユーザーでは半数近くが複数を使い分けていることが分かった。

マルコメの青木時男社長は、「まだ、液みそを知らない人がいる。使い方の訴求をさらに強化すれば、伸びしろはまだまだある」と更なる意欲を見せている。

顆粒みその動向にも注目だ。マルコメはかねさを子会社化し、顆粒みその製造技術を受け継いだことで、みその新しい需要の掘り起こしにも力を入れる。顆粒はどんな料理にも振りかけて使えることで、海外の人にとっても、魅力的な調味料となると見ており、同社では顆粒みそのグローバル展開も強力に推し進めていくとしている。

神州一味噌でも、「パパッと味噌パウダー」の販売に力を集中させており、みそ汁サーバーにおけるみそパウダーの需要掘り起こしにも意欲的にアプローチしている。

〈食品産業新聞 2020年7月30日付より〉