〈大豆ミートビジネス最前線〉染野屋 植物性肉摂取の意義伝える活動に邁進、「ソミート」ラインアップ強化

染野屋八代目・小野篤人社長
創業文久2年(1862年)の豆腐メーカー・染野屋(本社=茨城取手市)は、植物性食という言葉すら浸透していなかった約8年前から植物性肉に着手し、3年前から大豆ミートで作った植物性100%の「Someat(ソミート)」ブランドを展開している。

先駆的な立場である、染野屋の八代目・小野篤人社長は、環境負荷の要因の1つとされる動物性の肉を植物性に替えることで、地球環境の改善に繋がるという、植物性食の意義を伝えるべく啓発活動に邁進している。

活動のきっかけについて小野社長は、「2009年に娘が生まれ、地球環境について調べているうちに、異常気象が当たり前のように頻発する時代が近づいていると危惧した。自分に出来ることを考えた時、植物性たん白の代表格である豆腐製造業だったことから、食の分野から環境改善に取り組もうと考えた」と話す。

また、自身が植物性食にシフトしたことで、体の調子が良いことを実感し、植物性食は地球環境の観点だけでなく、健康的であり、ひいては動物愛護にもつながることも、取組の推進を後押しした。

当初は豆腐ナゲットから始め、7年前には「ソミート」ブランドの商標を出願登録、約3年前に「ソミート」の「炙り焼き」を発売した。現在は、「炙り焼き」(冷蔵100g・税込380円)に加え、「しょうが焼き」(冷蔵100g・税込380円)「唐あげ」(冷凍500g・1,890円)をラインアップ。全ての商品が、ベジタリアン・ヴィーガン対応で、添加物は使わず、有機しょうゆやてんさい糖など原料にこだわる。

染野屋・ソミート「炙り焼き」

染野屋・ソミート「炙り焼き」

また、植物性肉の一層の広がりには、バラエティの多様化も重要と考え、近々レトルトカレーや、ハンバーグやミートボールのひき肉系メニュー、餃子やラーメンを発売予定だ。
 
〈「弾力」にフォーカス、豆腐作りで培ったこだわり活きる〉
植物性肉の商品化にあたって重要なのは、我慢しないで続けられる「おいしさ」だと強調する。特にこだわったのが弾力だといい、最適な弾力を安定的に出すことに苦労したという。「豆腐作りにおいても、豆乳を天然にがりで固める工程は非常に難しい。少し加減が違うだけで、固まり過ぎたり、柔らかくなり過ぎてしまう。まさに職人技だ」とし、豆腐作りで培ってきた製造へのこだわりが、商品開発に活きたと語る。
 
植物性肉の注目が高まる中で、「ソミート」の引き合いも高まっている。今年に入っての売れ行きは、前年比300%の推移を見せている。
 
染野屋は、移動販売(関東圏・静岡)とAmazonで商品を販売している。「これまで『ソミート』はAmazonを中心に販売していたが、最近では移動販売先でも『ソミート』を求めて来る方が増えている」とし、そこで大切にしているのが、直接消費者に説明できる強みを活かし、環境負荷の低減につながる植物性肉の意義を説明することだ。
 
小野社長は「ここ3年、日本でも気象変動をリアルに感じる災害が発生している。地球環境が大変なことになっていると知っていても、何も出来ないことにストレスを抱えている人も多いのではないか。1人が普段食べている肉の3分の1の量を植物性に代替するだけで、1年間でテニスコート1面分の森林が復活する。環境改善に参画できる機会を提供していく」と話す。
 
さらに小野社長は、「向こう5~10年で、日本は世界トップレベルの植物性食大国になるのではないか」と見ている。一方で、そうなるためには啓発活動が不可欠と指摘する。「なぜ植物性食が必要なのかの教育が、欧米と比べ進んでいない。そこが埋まれば、(市場拡大への)スピード感は早い」と考えている。
 
その上で、「講演会のほか、発信の手段の1つとしてユーチューブチャンネルの開設などに取り組んでいる。引き続き啓発活動を進めていきたい」と今後の展望を語った。
 
〈大豆油糧日報2020年10月5日付〉