アイルランドのグラスフェッド乳製品を日本へ

アイルランド産乳製品の対日輸出量・金額は10年前に比べ300%超に
アイルランド産乳製品の対日輸出量・金額は10年前に比べ300%超に

提供:アイルランド政府食糧庁Bord Bia(ボード・ビア)

アイルランドのグラスフェッド乳製品が、世界市場で存在感を高めている。2024年の乳製品輸出額は前年並みの推定63億ユーロとなった。160万トンを超える製品が、世界140カ国以上へ輸出された。

24年のアイルランド産乳製品の対日輸出量は1万2570トン、輸出金額は5180万ユーロだった。輸出量、金額共に前年から減少したが、10年前の14年比では輸出量326%、輸出金額309%と大幅に伸長した。

過去10年間でアイルランドのチーズ輸出量は10万トン以上増え、その多くを日本向けが占めた。過去5年間の平均で年間約1万5000トンが日本へ輸出された。18年に発行した日EU経済連携協定(EPA)が対日輸出拡大を後押しした。

このほか日本へは、バターやカゼイン、乳製品スプレッド、油脂、FFMP(植物性油脂添加粉乳)、乳幼児用品、ミルクプロテイン、SMP(脱脂粉乳)、ホエイ、ヨーグルトなど、幅広い乳製品を輸出している。

乳牛は年平均240日間を牧草地で過ごす
乳牛は年平均240日間を牧草地で過ごす

◆食の持続可能性を追求

アイルランドでは、家族経営の伝統的な酪農法で育てられた乳牛の生乳に先進技術を組み合わせ、高品質な乳製品をつくっている。原料となる生乳を生みだす乳牛は毎年平均240日間牧草地で過ごし、主に牧草(95%)を食べている。

また、アイルランドでは、食品・飲料の生産者たちの食の持続性をサポートするサステナビリティプログラム「オリジングリーン」も導入している。農場から食卓まで独立した検証を行う国家的な仕組みだ。

「オリジングリーン」は、食品・飲料業界の成長と長期的な供給保証に対し、重要な役割を担っている。これまでの成果として、例えば、2013年から2023年の過去10年間で、SDAS(乳製品スキーム)メンバーによるCO2排出量を牛乳1単位あたり平均13%削減した。

ボード・ビア、日本・韓国マネージャーのジョー・ムーア氏は、日本市場における今後の展開について「引き続きアイルランド産チーズの輸出拡大に重点的に取り組み、バイヤーや消費者に対し、品質と多様性を発信していく。ホエイ製品も注力分野のひとつに位置づける」とする。

◆チーズやホエイ製品の輸出拡大めざす

現在、日本でチーズを展開するカーベリー社は、アイルランド最大級のチーズメーカーだ。アイルランド南西部ウェストコークの4つの協同組合が所有する乳業企業で、1168戸の酪農家と連携し、年間約6万4000トンのチーズを生産している。50年以上にわたり自社スターター(乳酸菌)の研究を続け、味や機能性に応じた多様なチーズを開発している。

同社のチーズは、日本向けのアイルランド産チーズ供給量の30%以上を占める。日本向けの主な原料・製品は、グラスフェッドチェダー(マイルド~ヴィンテージ)、高タンパク・低脂肪・耐熱性に優れた機能性チーズのほか、スペシャリティチーズ、パスタフィラータ、モッツァレラなどがある。 日本市場専用で「ウマミゼンチーズ™」も展開する。

同社では、2017年から日本へチーズを輸出している。2025年にはモッツァレラチーズと各種チェダーチーズの合計販売量は3000トン弱に達する見込み。主要取引先の丸紅、伊藤忠商事と連携し、日本の大手プロセスチーズメーカー数社と長年にわたる関係を維持している。

モッツァレラチーズは主にシュレッドチーズとして小売業や外食産業で利用され、カーベリー社は日本国内大手のピザチェーンや外食企業に供給している。 また、機能性栄養の需要拡大に対応するため、販売代理店のラクトジャパンと提携し、プレミアムプロテイン原料を発売した。

アイルランドの高品質な乳製品および植物性原料のポートフォリオを擁する、農業食品・栄養企業のティルラン社も、チーズ業界をリードする存在だ。家族経営の農場ネットワークを持ち、高品質な製品とカスタマイズされた原料を100カ国以上に輸出している。

ティルラン社は高品質な製品とカスタマイズされた原料を100カ国以上に輸出している
ティルラン社は高品質な製品とカスタマイズされた原料を100カ国以上に輸出している

チェダーチーズ技術において60年以上の歴史があり、20年以上前から日本へチーズを輸出している。当初はプレミアムチェダーチーズに注力していたが、その後、「CheddMaxアプリケーション」へと事業を拡大した。

近年ではラクトジャパンなどのパートナーと連携し、大手食品サービスおよび小売ブランド向けにカスタマイズした原料を提供している。ティルラン社は、日本で急速に成長するインスタント食品、ベーカリー、調理済み食品カテゴリー向けに製品を提供している。

このほか、アイルランド南部ミュンスター地方・ゴールデンバレーに根差す酪農協同組合のデイリー・ゴールド社も、同国の乳製品業界をけん引する企業だ。1900年代初頭に始まった地元農家の協同組合活動を原点とし、1990年に複数の組合が統合して現在のデイリー・ゴールド社が誕生した。栄養科学と伝統的な酪農文化を融合し、乳児から高齢者までの幅広い世代に高品質な栄養を届けるグローバル乳製品メーカーとして成長している。

日本向けの主な原料・製品として、高品質なチーズ、乳製品栄養原料(乳児用調合粉乳、プロテインパウダーなど)のほか、全乳粉乳、脱脂粉乳、脂肪増量粉乳、レンネットカゼインなどを展開。 約90%脱塩ホエイパウダーなどのホエイ製品も提供する。

■アイルランド政府食糧庁(ボード・ビア)

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昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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