健康制限を超えて「選ばれる嗜好品」へ 南青山発スイーツ、競合不在で成長 海外進出も視野に

B&H 取締役社長 島村 ピコ 可奈 氏
B&H 取締役社長 島村 ピコ 可奈 氏

東京・南青山の閑静な街並みの中に、異彩を放つパティスリーがある。低糖質やアレルギー対応といった健康志向の文脈で語られることの多い要素を前面に打ち出しながら、食味と事業性の両立で存在感を高めているのがBEYOND SWEETSだ。2025年のクリスマス商戦は、ケーキの受注数が前年比6倍に伸長した。ECのリピート購入率は7割を超え、全国へ顧客層を広げている。ブランドを率いるB&Hの島村ピコ可奈社長は「食事制限がある方だけでなく、昨日は食べすぎたけど甘いものが食べたい。そんな時に選んでいただける、日常の選択肢のひとつになれれば」と語る。

◆独自の開発力や技術力を“資産”に、参入障壁を築く

BEYOND SWEETSは2024年1月にカフェ併設店をオープンした。三軒茶屋の自社アトリエで製造したスイーツを同店やECで販売している。クリスマスやバレンタインなどの催事期には関東エリアの百貨店にも出店する。25年秋にJRのトレインチャンネルで紹介されたこともあって認知度が急上昇し、BEYOND SWEETSの売り上げは前年比2桁増で伸びている。

同ブランドの特徴は、複数の食事制限を満たす商品設計にある。すべての商品は小麦や白砂糖を使わずにグルテンフリーで仕上げており、志向に合わせて選べるよう3カテゴリー別に展開している。「BEYOND1」では美容・ダイエットを意識している人へ向けてスーパーフード等を用いた健康的なスイーツを提案。「BEYOND2」は血糖値コントロールを行う人やアスリート向けに、糖質を5g以下に抑えた商品をラインアップする。「BEYOND3」は食物アレルギーがある人やヴィーガンの人も想定し、プラントベース主体の商品を取り揃えている。

ショーケースには色鮮やかなケーキが並ぶ
ショーケースには色鮮やかなケーキが並ぶ

一般的な洋菓子店の客層は女性客8割といわれる中、BEYOND SWEETSでは男性客が4割を占める。リピーターの多くは週1回以上、月に複数回など、高頻度で購入しているという。「食事制限がある人だけでなく、日常的な体調管理を意識する方にも選んでいただけているようだ」(島村氏)。

店舗の売れ筋は、エクアドル産アリバ種のカカオをベースに、ジャスミンとパッションフルーツの華やかさを加えた「チョコティージャスミン」(税込935円)や、豆乳とナッツをベースに使用した「ティラミス」(858円)など。焼菓子は1つ200円台から販売し、詰め合わせにも対応する。

焼菓子は詰め合わせにも対応
焼菓子は詰め合わせにも対応

◆製造委託先が撤退し、18年ぶりにパティシエに復帰

創業以来、成長を続けるBEYOND SWEETSだが、実は店舗オープンの1カ月半前に最大の危機が訪れていた。当初は製造を外部委託する予定だったが、その取引先が音を上げたのだ。すでに店舗は完成していたため、計画の白紙撤回か、業態変更か、強行突破かの選択を迫られた。

「大きなチャンスが目の前にあるのに、ここで諦めたくはない。やるしかない」。島村氏は一念発起し、18年ぶりに自らパティシエとして現場に立つと決めた。冷凍庫中心だった厨房にオーブンやダクトを追加し、原材料の仕入れ先探しから再スタート。製造、販売、ブランド管理、EC立ち上げを同時並行で進めた。「当時は寝る間もないほど忙しかったけれど、喜んでくださるお客様が必ずいるという確信があった。それならば誰よりも早く、私たちが最初に世の中へ提案したい」。結果的にはこの山を乗り越えたことが、外注コストを削減し、ブランドの表現や意思決定のスピードを高めることにつながった。

人気商品の「チョコティージャスミン」
人気商品の「チョコティージャスミン」

◆チョコレートもクリームも自社で製造

さまざまな健康食材の制約がある中でおいしさを併存させるには、高度なレシピ開発力が求められる。乳化剤の入った市販のチョコレートを使えない商品群があるため、BEYOND SWEETSではチョコレートそのものを自社で作っている。ケーキに使うクリーム等も同様だ。味わいを左右する甘味の代替や油脂設計には、羅漢果やアガベといった天然素材、植物由来の油脂などを使い、数値検証と試作を繰り返して独自のノウハウを確立してきた。「前例がない難しさもあるが、ジタバタと試行錯誤するうちに、独自の技や知見が積みあがってきた」。

効率や生産性が求められる時代に、手間をかけて技術を集約し、付加価値を築くBEYOND SWEETS。将来的には量産化やOEM、コラボ品展開に加え、海外進出も視野に入れているという。島村氏は「お客様からの『ありがとう』が、すべての原動力になる。一人でも多くの方に、スイーツを楽しんでいただきたい」と笑顔で語る。

店内は海外のアトリエや図書館のような雰囲気
店内は海外のアトリエや図書館のような雰囲気
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食品産業新聞

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
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