味の素・西井社長、コロナ影響「海外冷食が厳しい」、中計戦略は推進/2020年3月期決算説明会

〈減塩・高齢者栄養、北米テイクアウトを強化〉
味の素は5月27日、2020年3月期の決算説明会をオンライン開催した。西井孝明社長は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響について「日本国内は内食需要でかなりカバーできるが、海外はできないとみている。中でも外食の構成比が比較的高い冷凍食品が厳しい」と話した。

2020年度業績への影響は大きいとする一方で、「中計で掲げた構造改革は止めない。長引くコロナとの闘いには、当社が得意とする食生活の改善とヘルスケア事業を通じて貢献できる」とした。“食と健康の課題解決”企業へ向けて、中計戦略のアクセルを踏む。

2019年度の売上高は1兆1,000億円で前年比2%減収となった一方、事業利益は992億円で6%増となり過去最高を記録した。減収の主因はアフリカ豚コレラによる動物栄養事業の減収。増益には国内冷食事業も貢献した。

2020年度の売上高は1兆0,480億円で前年比5%減、事業利益は780億円で22%減と見込む。COVID-19の業績影響として現時点で、売上高で約760億円、事業利益に約230億円のマイナス影響を織り込んだ。同社が事業展開する主要国の経済回復は2021年度以降になると想定する。特に海外の冷食は外食向けの比率が大きい北米、欧州が影響を受ける。

事業活動においてはこの間、生産部門と営業部門の苦労が大きい。北米と南米では生産従事者にも罹患者が出た。都度、ラインの停止と全消毒などの措置を行ったうえでの再開を続けている。グループ従業員の罹患者は5月26日現在107人で、米国、南米がほとんどを占めるという。

外食用冷凍食品を主力に生産している米国、欧州の工場は、需要が激減し一定期間の生産調整も余儀なくされた。また厳しい都市封鎖が実施された欧州とフィリピン、マレーシアでは操業を落とさざるを得なかったという。 他方、日本の家庭用食品は一気に需要が拡大したため、生産が追い付かず、物流もパンク状態が続いた。そのため小売事業者へ特売中止を要請したり、一部商品を休売したりして主力品に集中するといった、東日本震災の時に構築したBCP計画を発動させて凌いでいるとした。

今後、秋以降に予定している新製品開発の遅れや設備投資の遅れが、課題だ。 コロナとの共存期の巻き返し策として▽活動制限で中断していた“減塩”“高齢者の低栄養”解決の販売促進と製品開発を強化して再開すること▽EC(各国内、日中の越境)や日本、米国のネットスーパーでの販促強化▽アミノ酸サプリメントのEC出店や調剤薬局へ販路拡大の3項目を掲げた。この追加施策によって業績の底上げを図る。

冷凍食品では北米では外食業態が力を入れているテイクアウトへの提案やECチャネルへの対応を強化。日本では生協など宅配への対応を強化する。テイクアウトに対しては「保存性や保湿性など添加物の利用方法なども組み合わせて提案していきたい」(西井社長)とした。

〈冷食事業は売上2,112億円、うち日本は977億円〉
味の素の2019年度冷食事業は売上高が2,112億円で前年比18億円減少、事業利益は前年の18億円の損失から水面上まで回復した。

日本が売上高977億円で前年比4億円増とほぼ前年並みに、事業利益は62億円で前年より21億円増加した。家庭用は「ギョーザ」を中心とした主力カテゴリーの販売拡大継続等により増収となった一方、業務用は主力カテゴリーの販売が拡大したものの、一部製品が前年の販促影響等を受けたことで減収となった。利益面については生産性改善や業務用の値上げ効果等により大幅増益となった。

家庭用と業務用の売上比率は57対43となった。前年よりも家庭用が3ポイント増加している。

家庭用のギョーザ類について、同社の市場シェア(同社推定の消費者購入ベース)は2019年度、市場規模512億円に対して、前年並みの49%を確保した。また20年度の市場規模は6~7%拡大すると見込む。

海外の冷食は2019年度、売上高が1,131億円で前年より22億円減少、事業利益は8億円で4億円減少した。北米、欧州におけるアジアン製品の販売が引き続き拡大したが、換算為替影響とアモイ・フード社売却の影響等により減収となった。

利益面について、北米は現地通貨ベースでの増収や生産性改善による大幅増益となったが、欧州における新型コロナウイルス感染症の影響とデザート事業の不振により、全体で大幅減益となった。2020年度の冷食事業は売上高1,874億円で前年比238億円の減収、事業損益は41億円の損失と前年より42億円の減少を見込む。

国内について、家庭用は「ギョーザ」等の主力カテゴリーの需要が伸長する一方、業務用は外食・給食向け中心に需要が大幅に減少し、減収を見込む。海外はリテール向けで需要が大幅に増加する一方、フードサービス向けの需要が大幅に減少し、減収を見込む。減収による影響で大幅減益を見込んでいる。

〈冷食日報2020年5月28日付〉