〈シグナル〉「適正な売価での販売」が必須

食品業界でも「過去最高」の売上・利益という決算発表が数多くあった。しかし、我が世の春というわけではない。むしろ、いばらの道を潜り抜け、数年ぶりに一息ついたというのが実感ではなかろうか。

2020年の春にコロナ禍に入ってから、毎年の変化のスピードが非常に速いように感じる。

21年にエネルギーコストなどが上昇し始め、食品では油脂を始めとした原料の価格が急上昇し始めた。製油メーカーの方から、「営業に配属された21年春入社の社員が大変そうだった。会社としても値上げのノウハウをすっかり忘れた中で値上げをしているのに、それを新入社員がリモートでやるとなったら…」という話を聞いたことがある。かなりヘビーな社会人生活のスタートだったろう。

22年2月のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、それまで上がり基調だった穀物の価格も急上昇した。

その後、中東の紛争、海上チョークポイントの混乱、円安などなどがあり、「上がっていないコストはない」という状況の中、粛々と値上げをしながら各社とも商売をしてきた。

23年度が好調だった企業は「適正な売価での販売」を要因に挙げる。23年度に業績回復が追いつかなかった企業も多く、24年度も引き続き食品業界全体で「適正な売価での販売」が必須だ。この流れを安売り合戦でつぶしてしまったとしたら、もったいないどころの話ではない。