17年度チーズ消費 33.8万tで過去最高 健康機能が購買動機、今後は値上げ影響に注目(2)

17年度チーズ市場の特徴は、健康機能が注目されたカマンベール、パルメザン、ブルーチーズがトライアルユーザーを大きく取り込んだこと。これら商品は、スライスチーズやシュレッドチーズと比べ価格が高く、「価値を感じるものにはお金を払う」消費傾向がチーズでも表れた形だ。業務用チーズ市場(約20万t)は、物量、金額ともに約5%増。ナチュラルチーズの伸長が大きく、プロセスチーズ関係は前年並みにとどまった。売上伸長率は、製パン向けは2%増、外食向けは7%増、食品メーカー向けは3%増、コンビニ向けは1%増のもよう。

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「製パン、外食、食品メーカーともに、チーズメニューに期待する売上の安定感と、健康ブームも加わり、チーズ使用のメニューの開発意欲は非常に強い」(業務用大手の宝幸)。一方で、チーズ油脂加工品も数多く開発されていることもあって、価格競争が激化しており、今後は競争優位の戦略を明確にしながらも、コストアップに対する値上げ不足分をどのように転嫁するかが課題となっている。

18年度家庭用市場は、4、5月の出足は前年を上回っており、乳業大手3社が値上げした新価格に対する影響、買い控えが若干起こる可能性も想定されるが、今の消費パワーが続けば金額ベースで1~2%は拡大できる見込み。輸入自由化に向けて、国産チーズの競争力強化に大手各社は動いており、雪印メグミルクは北海道産生乳100%使用の「さけるチーズ」を、明治は北海道十勝の原料を使ったほろほろ食感の「スマートチーズ」を、森永乳業は北海道の生乳を使った「フレッシュモッツァレラ」を、欧州品が日本で買いやすい価格になった時の対抗価値の商品にすえ、一層の競争力強化に取り組む構えだ。日本のプロセスチーズ製造技術力は、世界に誇る高いレベルといわれ、この技術力を駆使した製品、または鮮度が勝負の国産ならではのフレッシュ系チーズに、競争優位性があり、今後の各社戦略商品に注目だ。

輸入のテーブルチーズについては、量販店向けでは引き続きひとつまみで食べやすいおつまみ系、アソートパックなどが好調に推移しそうで、近年は高質スーパー並みの上質品の品揃えも進んでいることから、ブルーチーズの定着とともに幅広いユーザー層の取り込みが進みそうだ。一方高質スーパー向けは若干客が量販店に流れ苦戦、百貨店向けは客層が異なることから量的拡大は厳しくも、当面は固定客に支えられ堅調に推移する見込み。自由化に対する期待については、「関税が安くなるのは歓迎だが、昨年から開始された乳製品の動物検疫をはじめ、取り締まりがよりきつくなってくるので、空輸のテーブルチーズに関しては他の製品と比べそこまで恩恵がない」(商社)との見方もあり、原料チーズとテーブルチーズ、船便、空輸の違いで恩恵には差が出てきそうだ。

国際乳製品市場は、世界的な人口増や新興国の経済成長で、需給ひっ迫、乳原料不足が予測されており、日本もこれに備え、原料確保に向け布石をうつ動きが活発化してきている。「今後は値段でなく、供給をいかに確保するかが重要となる」(大手商社)。消費量が3年連続過去最高の有望市場だけに、旺盛な需要の一部を取り込もうとイミテーションチーズが再び存在感を強めてくる動きもあり、各社のチーズ事業の持続的成長に向けた今後の取り組みに関心が集まる。

〈食品産業新聞 2018年7月19日付より〉