太子食品工業「なめらか食感豆腐バー」クリーム状の豆腐を凝固、なめらかな食感とたん白質10gを両立/開発者・東海林愛美技術開発部係長インタビュー
最近の健康志向によるたん白質ブーム、人口増加を背景としたたん白質不足の懸念に伴い、手軽にたん白質を摂取できる食品の需要は今後も増えていくと予想される。
太子食品工業は、同社が培ってきた豆腐や油揚げの製造技術を用い、ワンハンドでそのまま食べられる「なめらか食感豆腐バー」で需要に応える。2月1日から全国で発売し、「かつおだし味」「ブラックペッパー味」「麻婆豆腐味」の計3品で展開する。
ワンハンドとした理由について、開発者の東海林愛美技術開発部係長は、「サラダチキンの市場が伸びていたことに数年前から着目していた。加えて、女性が社会進出したことで調理時間が減少している。豆腐を手軽に食べられるようにするには、味をつけること、ワンハンドで食べられることが必要だと思い、バー形状になった」と話す。
豆腐の好きな点を太子食品工業が調査したところ、「大豆の風味」や「柔らかく、なめらかな食感」が支持されていることが分かり、消費者が豆腐になめらかさを求めていると推測。絹ごしのような柔らかい食感を出すために、2017年に発売した「きぬ練りおあげ」の製法(きぬ練り製法)を使った。きぬ練り製法は、クリーム状の豆腐を揚げて作る、豆腐業界では珍しい特許技術だ。
また、充填豆腐のように豆腐クリームをパッケージごと加熱することで、人の手や酸素に触れず大豆の風味が逃げないようにした。
開発では、なめらかな食感の実現だけでなく、たん白質10g分を配合するのにも苦労したという。たん白質10gは、従来の充填豆腐の2.5倍に相当する。太子食品工業では、豆腐の水分を抜くのではなく、元々水分が抜けている豆腐クリームを凝固させることで、口当たりの良さとたん白質量を両立させた。
〈約200回の試食のすえ和洋中のバリエーションを展開、毎日食べても飽きない味で〉
味については、消費者が想像しやすいものを選んだという。豆腐の生地と相性の良い味を探し、約200回試食した。毎日食べても飽きない味にしたいとの思いから、クセのある味は外した。「最初からバリエーションを持って棚を作りたかった。和洋中で展開し、毎日楽しんでもらいたい」と話す。
このうち「麻婆豆腐味」では、挽き肉に見立てた大豆ミートを生地に練り込んだ。大豆ミートにも味をつけ、均一な味わいではなく、「豆腐バー」の味の濃度に差をつけた。さらに、「麻婆豆腐は家庭によって味が違う。その中で、なめらかな食感に合う麻婆豆腐が何かを考えて味を作り上げた。辛いのが苦手な人もいること、また飽きずに食べられる味を踏まえて開発した」という。バイヤーからは「パンチが少ない」との声も上がったが、「食べきれること」に重点を置いた。
「ブラックペッパー味」では、パッケージにチキンの画像を載せ、後味もチキン風味とした。チキンエキスなどは使用せず、アミノ酸でチキンのような味わいを実現している。
パッケージにもこだわり、ビニール袋に入れても切れないよう四つ角をまるくしている。これは「サラダチキンのユーザーの一人として不便に感じていた」という東海林係長の実体験から着想を得ている。デザイン面では、シズルと味付きである旨を記載した。「自分たちのこだわりを消費者に押し出すのは違うと思った。この商品が何なのかを教えるパッケージにしている」とする。
今後の目標については、「(首都圏で実施した)アンケートはポジティブな結果だったが、改善の要望も来ている。ブラッシュアップし、リピートされるようにしたい。大豆由来のおいしさを多くの人に届けたい」と語る。
〈大豆油糧日報2023年2月1日付〉