ヤマキ醸造「原料を作るところからこだわりを持って」消費者に届ける、原料生産者・食品メーカー・消費者が支え合うことで持続可能な経営スタイルを展開
みそ、しょうゆ、豆腐を製造するヤマキ醸造(埼玉県児玉郡神川町)では、1902年の創業から長い時間をかけて、造り手、買い手、また環境にとっても持続可能なビジネスモデルを構築してきた。
1974年には、消費者の御用をする会社として、「御用蔵」ブランドを立ち上げる。「お客様から大豆や米、小麦などをお預かりして、みそやしょうゆにして返す。これがヤマキ醸造の始まり」。ヤマキ醸造グループの販売部門を担う別会社ヤマキの吉田頌氏が説明する。
グループの母体である「ヤマキ醸造」を中核とし、安全な原料を育てる「農業生産法人 豆太郎」、安心な食品を届ける販売部門の「ヤマキ」が一丸となって理想のものづくりを追求している。生産者や消費者から御用を賜る蔵「御用蔵」の精神を大切に、育てる人、食べる人をつなぐ顔の見える関係づくりを大切にして事業を展開している。
同社は、原料を育てる土づくりから始め、原料から製造、販売までを一貫して行うことで、安心・安全な食品を消費者に届けている。「畑づくりに2年、作付から収穫、乾燥させて選別するまでに1年、それから、みそは1年、しょうゆは1年半の熟成期間が必要となる。しょうゆは、畑作りから換算するとトータルで4年半かかる」。
みそやしょうゆ造りでのこだわりは昔ながらの天然醸造だ。「高くても安心安全でおいしいのがヤマキ醸造のやり方だ。そこだけ間違わなければ、お客様は離れないと信じている。お客様は自然な形を求めている。お求めの食品を探し求めて、うちにたどり着く人が多い。値上げは負担になっていると思うが、原料の生産者がいて、食品を造るメーカーがいて、食べてくれる人がいて、みんなで支え合い持続可能な循環ができている。当社は原料や製法を守ってできた商品を購入してくれるお客様につなげる。お客様も理解してくれている」。生産者と買い手の絆は深い。
〈契約農家栽培の大豆や米は全量買取、農家との信頼がこだわりの商品作りに不可欠〉
「『豆太郎』で作った大豆はすべて買い取りしている。良いのだけ買って、悪いのは買わないのでは生産者も困る。農家にしてみれば、作っている大豆も、掛かっている手間も同じなのだから、全部買い取ってほしいのが本音だ。うちは全部買い取るので、有機大豆を作ってくださいとお願いし、農家は安心して作業に当たることができる。国産大豆にこだわり、豆腐、みそ、しょうゆに使うことで、最後まで無駄なく、原料を使い切ることを徹底している。おからやしょうゆ粕などの製品を作ることで、ロスを極限まで抑えることに努めている」。こうした農家との良い関係によって、こだわりのある商品は作り出されている。
今では主力商品になっている「玄米みそ」は、消費者から玄米みそを作っていないかと問い合わせを受けたことから開発が始まった。「玄米は加工が難しい。殻が付いていることで発酵させるのが難しく、みそになりにくい。しかし、どうにか技術を確立して対応することができた。しかし、有機玄米は探すのが大変だ。農家は手間をかけて玄米を作りたがらない。そこで当社では全部買い取ることを保証するからこちらの要求に対応してくれる。また、100年以上の歴史の中で培ってきたお互いの信頼によって、農家は玄米を作り、当社は玄米を手に入れる環境を築くことができた」と自信を見せる。
豆腐製造は、「大豆と水とにがりだけなので、いつもと違う原料が入ると味がすぐに分かる。そんなことがないため、当社では、トリプル有機認定工場としての認可と、FSSC22000認証も取得しており、いい素材を使って、きれいな工場でものづくりをしている」と胸を張る。
〈大豆油糧日報2023年9月8日付〉