全国油脂販売業者連合会、創立70周年記念式典を開催、油脂の安定供給と市場拡大に大きく貢献

全国油脂販売業者連合会「創立70周年記念式典」農林水産大臣感謝状の授与の様子
全国油脂販売業者連合会「創立70周年記念式典」農林水産大臣感謝状の授与の様子

全国油脂販売業者連合会(全油販連)は10月24日、都内のホテルで創立70周年記念式典・祝賀パーティーを開催した。

それに先立って開催された記念講演会は、元農水省事務次官の皆川芳嗣農林中金総合研究所理事長により、「内外の政治・社会・経済の変化を体験的に振り返り未来を考える」を演題に行われた。

記念式典・祝賀パーティーの冒頭、全油販連の宇田川公喜副会長(宇田川商店社長)があいさつした。「戦後、油糧配給公団が解散して統制が解除されたのは昭和25年だ。朝鮮戦争の特需が起き、2年後に戦争が終わると、新3品と言われた先物の油脂、ゴム、皮革が大暴落したことで油脂業界も大混乱に陥った。各メーカー・問屋が大変な状況だったことから組織をつくることになり、昭和28年3月2日に全油販連が設立された。初代会長は、館野洋一郎現会長の曽祖父に当たる館野榮吉商店の館野榮吉社長が務めた。その年の株式は史上4番目の大暴落となった。日経平均は約360円だったが1日で37円下がり、10%の暴落となった。結果的に250円くらいまで下がり大混乱となった。発足した全油販連は当時まだ高級なものだった食用油を全国に広めること、安定供給、製販の団結を願って立ち上げた」と振り返った。

来ひん祝辞と乾杯の発声は日本植物油協会の新妻一彦会長(昭和産業会長)が行い、「全油販連が設立された昭和28年は、日本が戦後復興に力強く踏み出し、朝鮮動乱の景気高揚と反動がある激動の時代だった。植物油業界ではその後、油糧種子の輸入が自由化され、油脂を利用する加工食品業や外食産業の発展、大型小売店の誕生などに伴い、単なる卸業務に留まらず、市場ニーズの把握や合理的な流通を担う存在へと変貌を遂げた。油脂販売における唯一の全国団体として、油脂メーカーと車の両輪のごとく、一体となって連携を強め、油脂流通の円滑化と需要開拓に積極的に取り組まれ、油脂の安定供給と市場拡大に大きく貢献された」と称えた。

その上で、「油脂業界では歴史的な高値を記録した植物油の価格もひとまずピークアウトしたが、エルニーニョによる干ばつの影響、ウクライナ紛争の長期化、中近東での新たな紛争も始まり、エネルギー価格高騰や円安の継続などの外的要因が加わり、依然として植物油を取り巻く環境は厳しい局面が続いている。この難局を乗り切るためには、製販の関係者が『アウアチーム』で一体となって、さらに『絆』を深めていくことが必要だと感じている」と述べた。

〈新しい食用油の需要開拓、安定供給の枠組み構築、役割・機能果たしていける経営確立〉

式辞で館野洋一郎会長は、「全油販連は70年前、戦後の統制解除後の原料製品の品不足と朝鮮戦争後の輸入原料の供給過剰が短期間に生じた混乱期において、政府への各種要請、油脂メーカーとの協調連携を図ることを主眼に設立された。東京、関西、愛知を中心に1都16府県におよぶ各地域の油脂卸が大同団結した体制だった。食用油の消費増進、油脂販売店の保護育成、適正利潤の確保を長期事業計画として展開していった。このうち食用油の消費増進は、戦後の国民の栄養不足を高カロリー食で改善しようと、当時の農林省食糧庁や現在の日本植物油協会の前身である日本油脂製造業会の後援を受け、油脂を使った調理法を講習する油脂教室などイベントを行った」と説明した。

続いて、「昭和40年代の高度成長と狂乱物価の時代に入ると、これに対応した新たな油脂流通システムの構築が課題となった。定期的に開催するようになった油脂メーカーとの製販懇談会は、油脂の安定供給や市況問題について意見を交わし合う大きな役割を果たすようになった。最近では、油脂業界の未来図を描く若手経営者や従業員向けに企画する『油の花フォーラム』や『未来油脂セミナー』も毎回有意義な機会となっている。全油販連が時代ごとのさまざまな課題を乗り越え、今日まで前進して来ることができたのは皆さんの理解と支援の賜物で改めて感謝したい」と述べた。

さらに、「近年、油脂業界を取り巻く環境は大きく変わった。価値観の変化によって生じた新しい需要への対応、地球温暖化や国際情勢の変動を踏まえた油脂の安定供給の在り方は喫緊の課題となっている。今後は70年間の歩みの中に指針を見出しながら、原点に立ち返った事業展開、取り組み、活動が重要になると考えている。需給両面でパラダイムシフトが生じている今だからこそ、新しい食用油の需要の把握・開拓と、新たな安定供給の枠組みの構築、そのような役割・機能を果たしていける経営の確立、これらに向けて歩みを進めていければ」と抱負を語った。

農水省の宮浦浩司大臣官房総括審議官(新事業・食品産業)の祝辞に続いて、農林水産大臣感謝状と大臣官房長感謝状の授与が行われた。農林水産大臣感謝状は、全油販連の金田雅律理事(マスキチ社長)、浅井修副会長(富田産業会長)、木村顕治副会長(マルキチ社長)、宇田川公喜副会長(宇田川商店社長)、太田健介理事(太田油脂社長)の5人が受賞した。

大臣官房長感謝状は、酒井英彦理事(大釿社長)、大家章嘉理事(大家商店社長)、佐橋徳洋副会長(徳万商事社長)、大家正光理事(合資会社大家商店)、中川雅弘監事(中川油脂社長)、木村真治理事(ナニワ社長)、伊藤盛康監事(東海油化学商事社長)、穴水健治監事(穴水社長)の8人が受賞した(中川理事は欠席)。

全国油脂販売業者連合会「創立70周年記念式典」大臣官房長感謝状の授与の様子
全国油脂販売業者連合会「創立70周年記念式典」大臣官房長感謝状の授与の様子

受賞者を代表して、マスキチの金田社長が謝辞を述べた。その後の油締めは、全油販連の木村副会長と佐橋副会長により行われた。

〈大豆油糧日報2023年10月26日付〉

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