訪日客には抹茶味が人気、健康志向とMATCHAブームで

抹茶を使った菓子や飲料のインバウンド需要が拡大している。健康志向の世界的な高まりやMATCHAフレーバーの浸透を背景に、訪日客の購入品に選ばれている。財務省貿易統計速報値によると、2024年の抹茶を含む緑茶輸出額は約364億円となり、過去最高を記録した。
また、日本政府観光局の発表による2025年4月の訪日外客数(推計値)は、前年比28・5%増の390万8900人となり、単月の過去最高を更新した。食品関連企業ではこうした状況を好機と捉え、抹茶アイテムの販促に力を注いでいる。
セブン‐イレブン・ジャパンでは、全国のセブン‐イレブン店舗で、宇治抹茶を使ったスイーツやアイスなどを数量限定で販売する「めっちゃまっちゃ」キャンペーンを5月26日まで実施中だ。新茶シーズンという季節性に加え、安定した需要が見込めることから、抹茶を積極的に打ち出すプロモーションを企画したという。「直近ではインバウンド効果で外国のお客様からも求められており、メーカー各社の新商品も、抹茶味の提案が増えている」(セブン‐イレブン・ジャパン)。
そこで一部店舗では、同キャンペーンに紐づけて抹茶味の卸売菓子を集めた売り場を展開する。「単品ではなく『面』で訴求するほうが、お客様にとって魅力的に感じられ、手にとっていただきやすいと考えた」(同社)。抹茶味の卸売菓子の売れ筋は200円前後の定番商品で、「濃い」味わいが人気だという。

ネスレ日本の「キットカットオトナの甘さ 濃い抹茶」は、インバウンド菓子の代名詞的な存在だ。世界90カ国以上で展開するキットカットブランドの認知度の高さが強み。スーパー、ドラッグストア、CVSと全国の幅広い業態で購入できる点からも支持されている。
抹茶味のキットカットとしては、マレーシア産の製品が現地で販売されているが、甘さが強いこともあり、世界的には日本産の品質や抹茶の濃い味わいへの人気が高い。
日本では2013年の定番化(当時はネスレ キットカット ミニ オトナの甘さ 抹茶)から年々、口コミで広がり、「日本のお土産としてもらった方が、来日時に自分で買い求める好循環ができてきた」(同社)。日本人のビジネスパーソンが、出張時に海外で配る機会が増えたことも喫食機会の拡大につながっているという。

片岡物産の辻利も好調だ。2025年3から4月の同ブランドの売り上げは、出荷金額ベースで前年比30%増となった。
売れ筋の「辻利 抹茶ミルク お濃い茶仕立て」は、茶匠が厳選した宇治抹茶を100%使用した粉末のインスタント飲料だ。2017年秋冬に限定品として発売し、2018年から通年展開し、定番化した。「京都宇治の辻利ブランドとして広く定着し、濃い抹茶を求める方から指名買いされている」(同社)。
近年は人気インフルエンサーを活用し、旅前客へ向けた情報発信に力を入れてきた。これがブランド全体の活性化に結びつき、直営店「辻利 宇治本店」の売り上げも伸長している。2025年3月から4月の同店の売り上げは、2019年比で3倍以上に拡大し、うち8割をインバウンド客が占める。

ヨックモックも、焼き菓子のシガールを中心に、抹茶を使った商品展開でインバウンド需要を掴んでいる。2024年度ヨックモック空港店舗の販売実績は、前年から55%増と大きく伸びた。
今春は、国内空港の一部店舗で「Japanese Scenery ジャパニーズ シーナリー」シリーズ全4種を順次、発売している。外国人顧客へインタビューを行い、日本旅行の手土産に買いたくなるパッケージデザインを考案し、四季や城のイラストを取り入れた。
売れ筋の「マッチャ ビスキュイ アソルティ」は、シガールと日本を想起する味わいの抹茶サンドクッキーを詰め合わせた。「2種類のクッキーを食べ比べできる空港限定商品でインバウンド顧客のニーズにマッチし、売り上げにつながっている」(同社)。