スーパー「バロー」兵庫に初出店、競合多いエリアでどう戦う 開業翌週も大勢の客で賑わう

バロー尼崎潮江店
バロー尼崎潮江店

9月12日、「バロー尼崎潮江店」が開業した。今回の出店でバローは兵庫県初進出を果たした。これまでも関西の地場の小型食品スーパー(八百鮮、やまた)をM&Aしているほか、中部フーズが運営する惣菜店やドラッグストアの中部薬品など、すでに傘下の店は続々と増加している。バローは「遠くても買い物に行きたい店 ディストネーション・ストア」を掲げ、近隣のみならず広域からもバロー目的での集客を見込む。また、19日には地元である岐阜県に「バロー中津川駒場店」を開業。攻め込みだけでなく、地盤固めの手も緩めない。

岐阜県に本社を置くバローは現在、大阪府7店、京都府4店、奈良県1店、滋賀県16店を展開している。滋賀県はバローからしたらお膝元に一番近い近畿地区となっていることもあり、店舗数も多い。そして12日、ついにバローとして兵庫県に初進出を果たした。昨年のトーホーストアの閉店劇でバロー傘下の店が兵庫県内に一気に増加したことも記憶に新しい。昨年10月にはチルド、冷凍、ドライ食品などを扱う「枚方物流センター」を開設し、今後さらに関西で存在感を強めていく姿勢が見て取れる。すでに関西ではバロー自体を目にすることはなくともバロー傘下の店が生活圏内に入り込んできている。

魚売り場(画像はイメージ)
バロー 魚売り場(画像はイメージ)

〈基本に忠実な進化型スーパーマーケット〉

阪急オアシスが営業していた「アミング潮江ウエスト2番館」の1階に後を受け継ぐ形で「バロー尼崎潮江店」が開業した。JR尼崎駅北口から徒歩4分とほど近く、周辺は競合が多いエリアだ。徒歩圏内、どころか店から見える位置にも多くの食品スーパーがある。すぐ向かいの「アミング潮江ウエスト1番館」には毎年大量出店している「サンディ」が19年から営業している。10月も大阪府下に5店の出店が控える、関西随一のディスカウンターだ。

バロー尼崎潮江店 地図
バロー尼崎潮江店 地図

道路を挟んではす向かいには大型のショッピングモール「あまがさきキューズモール」がある。平和堂が運営する「アル・プラザあまがさき」や尾家産業が運営する業務用食品専門店「ももひこや」、食品を中心にした阪神百貨店「あまがさき阪神」のほかカルディや成城石井も内部に含む。

また、東側の県道74号を渡ると兵庫県や大阪府内でも人気の「スーパーマルハチ 尼崎駅前店」が、南口には「マックスバリュ金楽寺店」があり、2km圏内まで広げると「コストコホールセール 尼崎倉庫店」「ロピア 尼崎島忠ホームズ店」まである。さらに尼崎市内には18日、バローと同じくEDLPの価格戦略を取る「オーケー武庫之荘店」も開業した。これまでも他県の食品スーパーの出店も受け入れられてきた土壌があるため、今回のバローもすぐに受け入れられるのではないだろうか。

開業から翌週の平日の昼間でも多くの客で賑わっていた。すでにオープニングセールのポップなどはなかったが、広告の品や目玉と表記されている商品はどれも安さを前面にアピールした価格設定になっていた。惣菜も充実しており、ベーカリーコーナーではひっきりなしにパンが焼き上げられている。人気の「手作りピザ」コーナーも充実している。

毎日店舗で焼き上げるパン(画像はイメージ)
バロー 毎日店舗で焼き上げるパン(画像はイメージ)

向かいの「サンディ」は生鮮や惣菜が多いわけではないため、差別化できているように感じる。また、近隣では一番売り場面積の広い平和堂「アル・プラザあまがさき」とも商品展開が異なる。バローは中部地方の食品スーパーらしさも残しつつ、地場で求められる商品もバランスよく配置している。店内の雰囲気は「ロピア」に近いが大容量品がメインではなく、どれも手に取りやすいサイズ感で販売されている。お客にとって「ちょうどいいスーパー」であることが売り場の端々から伝わってくる。

バローは34年3月期には全体で1兆2000億円にまで成長することを目標に25年から27年3月期までの中期経営計画の成長戦略において「関西500億円構想」を掲げている。すでに滋賀県内のシェアの約1%は獲得しているため、さらにこの先10年間では滋賀県を除く関西エリアの市場規模を約27兆円と想定した場合の1%のシェア獲得を想定して約2500億円売り上げを目指していく。現在の中期経営内では関西エリア向け新プロセスセンター計画や大阪市内の一等地への惣菜店開業など、さらに関西エリアで拡大を見越した動きに注目が集まる。

かつて大手食品スーパーの社長にインタビューをした際「食品スーパーの運営は明確な勝ちへの道筋があるわけではなく、基本に忠実にしていくことが大事だ」と聞いた。バローの店舗を見ると、スタッフが多く活気がある店内は「基本に忠実に」食品スーパーのあるべき姿そのものだった。さらに時代や顧客ニーズをつぶさに捉えた進化型でハイブリッドな一面も垣間見えた。

〈食品産業新聞2025年9月25日付〉

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=税込15,811円、6ヵ月=税込30,305円、1年=税込57,974円