ファミマ、値下販売の「涙目シール」をフリー素材として無償提供/社会全体の食品ロス削減を後押し、東京都目黒区の一般店舗で導入
ファミリーマートは、おむすびや弁当などの中食商品を対象とした値下販売に使用しているファミマのエコ割「涙目シール」を社会全体に広げ、食品ロス削減につなげるため、新たに4種類のデザインを加えた「涙目デザイン」のイラストをフリー素材として無償提供する。10月22日、東京・芝浦の本社で発表会を開き、マーケティング本部サステナビリティ推進部の大澤寛之部長らが概要を説明した。

〈2025年3月から導入の「涙目シール」とは〉
同社では食品ロス削減の取り組みの1つとして2021年7月から、消費期限の迫ったおむすびや弁当などの中食商品に、バーコード付き値下シールを貼り値下販売する店舗値下システム「ファミマのエコ割」を導入し、全国の9割以上の店舗で活用している。「涙目シール」は、値下シールに値下金額だけでなく、「心に響くメッセージ」なども添えることで、消費者と一緒に食品ロス削減に取り組むことを目的とした取り組みとして、2024年10月の実証実験を経て2025年3月から全国展開を開始した。
値下販売のシールに「たすけてください」というメッセージと「涙目」のキャラクターを記載することで、消費者の心に直接語りかけて共感を得ながら、一緒に食品ロス削減に取り組むユニークなコミュニケーションツールとして活用。昨年10月の実証実験では、従来のシールに比べ購入率が5ポイント向上した。今年3月に全国展開を開始し4~9月の期間、中食の廃棄量は前年比5%削減されたという。

また、「値下商品の購入は恥ずかしかったが、助けるためだと思えば購入できる」という声も聞かれ、涙目シールが消費者の値下商品購入への心理的ハードルを下げ、食品ロス削減対策に新たな視点をもたらしている面もあるそうだ。
〈「涙目シール」フリー素材化、店舗POPや食品ラベルへの活用を促進〉
発表会に登壇した滋賀県立大学人間文化学部の山田歩准教授によれば、「涙目シール」は人間の心理行動的な傾向を踏まえ、人々がより良い選択を自発的にとれるよう手助けする「ナッジ型コミュニケーション」に分類され、行動科学的に捉えると「FEASTフレームワーク」、すなわちFun(楽しい)、Easy(簡単に)、Attractive(印象的に)、Social(社会的に)、Timely(タイムリーに)という要素を持ち、上から目線のコミュニケーションではなく人を動かす要素が数多く含まれることから、買い物客の気持ちに寄り添い自然と目標となる行動を達成させている面があると効果を解説した。
今回、この「涙目シール」による食品ロス削減の効果を同社店舗だけでなく、社会全体へと広げていきたいとし、「涙目シール」のイラストをフリー素材化することを決定。より多くの販売店に活用してもらえるよう、既存のおむすびのデザインに加え、新たにパン・肉・魚・ケーキの4種のイラストを追加して22日より、同社公式ウェブサイト内、サステナビリティページで公開した。ダウンロードして活用するほか、ファミリーマート店舗のネットワークプリントで印刷することもできる。

同社では、使用する企業・店が独自に作るシールでイラストを使用したり、POPなどとして使うことを想定しており、今後、他の小売・外食企業にも活用を呼びかけていくという。

〈東京都目黒区の一般店舗で導入開始〉
また、環境にも財布にも優しい買い物を推奨する「めぐろ買い物ルール」を推進する東京都目黒区では、食品ロス削減の取り組みをする「食べきり協力店」(全103店舗)で「涙目シール」を活用。まずは区内6店舗で導入するとし、発表会には青木英二区長も駆けつけた。

ファミリーマートでは環境に関する中長期目標「ファミマecoビジョン2050」を策定し、温室効果ガス削減、プラスチック対策とともに、食品ロス削減に積極的に取り組んでおり、店舗での食品ロス削減を2018年比で2030年に50%削減、2050年に80%削減する目標を掲げている。

これまでもガス置換包装など商品包装の改良によるロングライフ化や、おむすび等米飯類の炊飯・製造工程見直しによる消費期限延長、一部地域で今年9月から実施する冷凍弁当の導入、発注精度の向上、「てまえどり」の継続実施など様々な取り組みを実施してきた。特に2021年7月からは実施する店舗値下システム「ファミマのエコ割」を導入し、今年4月から、「涙目シール」も活用している。
これら施策により、2025年上半期の食品ロス削減量は2018年比32.0%減と、2030年の50%削減目標に向け順調に進捗しているという。
【冷食日報 2025年10月24日付】







