セブン-イレブン、「セブンカフェ 水素焙煎コーヒー」を全国発売へ、雑味のない澄んだ飲みごたえとフルーティでまろやかな酸味でノンユーザーにもアプローチ
◆UCCの世界初技術を採用、味わいと環境配慮を両立
セブン-イレブン・ジャパンは10月28日、全国の店舗で「セブンカフェ 水素焙煎コーヒー」(税込160.92円)を順次発売する。コーヒーの焙煎熱源に水素を用いた「水素焙煎」は、UCC上島珈琲が世界で初めて量産化に成功した技術であり、二酸化炭素(CO2)を排出しない革新的な製法だ。セブン-イレブンの定番ブランド「セブンカフェ」に、味わいと環境価値の両立という新たな視点をもたらす取り組みとなる。

発表会でセブン-イレブン・ジャパンの阿久津知洋社長は、「水素焙煎と聞くと環境の印象が強いが、まず“おいしい”から採用を決めた。雑味のない澄んでいながらも飲みごたえのある味と、フルーティーでまろやかな酸味が特長で、コーヒー好きだけでなく、普段あまりコーヒーを飲まない方も楽しめると思う」と述べた。通常のセブンカフェに比べ、よりすっきりとした味わいに仕上げたといい、「朝は定番のセブンカフェ、昼は水素焙煎」といった飲み分け提案も見込む。
おいしさの秘密は、水素だからこそできる火加減にある。これまでの焙煎に比べて幅広い温度で焙煎できるため、水素焙煎ならではの味覚をつくり出すことができる。

水素焙煎コーヒーの価格は、定番の「セブンカフェ ホットコーヒーR」税抜130円(税込140.40円)より約20円高い税抜149円(税込160.92円)。ただし、発売後1週間は特別価格の税抜129円(税込139.32円)で販売する。まずは多くの人に新しい味わいを試してもらう考えだ。
水素焙煎コーヒーを提供するセブンカフェのマシンは、既存マシンを活用しつつ豆の特性に合わせた抽出条件を新たに設定し、全国店舗での提供を実現する。

セブン-イレブン・ジャパン商品本部FF・冷凍食品部FFマーチャンダイザーの石橋利彦氏は、「試作を重ね、すっきり感とボディ感の両立を目指した。UCCと何十回も協議を重ね、ようやく納得できる味にたどり着いた」と語った。

UCC上島珈琲の芝谷博司社長は、「水素焙煎はCO2を一切排出しない焙煎法であり、2杯飲むと植林1本分のCO2削減効果に相当する。味と環境配慮を両立した“未来をつくるコーヒー”」と説明。山梨県のグリーン水素を熱源に用い、同社の富士工場(静岡県富士市)では、今春から大型水素焙煎機「ハイドロマスター」を稼働させて量産を開始した。芝谷社長は「セブンカフェという日常的なチャネルを通じて、水素社会の姿を多くの人に感じてもらえる意義は大きい」と語った。
UCC上島珈琲執行役員サステナビリティ経営推進本部長の里見陵氏は、「今回のセブン-イレブンでの展開は、水素焙煎コーヒーにとって極めて大きなインパクトになる。日本の水素社会実現に向けた消費者接点としても、歴史的な意味を持つ」と強調した。

水素はこれまで燃料電池車など一部用途に限られてきたが、「日常のコーヒーを通じて、多くの人が水素に触れることができる世界初の事例」であり、社会的理解を広げる契機になると語った。また、UCCではすでに業務用・直営店舗・ECチャネルでも水素焙煎コーヒーを展開しており、「ホテルやオフィス、カフェでの採用が広がりつつある。今回のセブンカフェでの全国展開により、一般消費者への認知が急速に高まる」と期待を示した。

味覚面では、UCCコーヒーアカデミーの土井克朗専任講師が登壇し、「水素焙煎はクリーンな熱による焙煎で、雑味が少なく、セブン-イレブンのスイーツやパンとの相性が非常に良い。特に焼き菓子の香ばしさを引き立てる」と説明した。会場ではペアリング提案として、「発酵バター香るアーモンドボール」「レーズンサンド」「金のしっとりバウムクーヘン」「フィナンシェ」などを紹介。軽やかな後味の水素焙煎コーヒーが、菓子の甘味を引き立てる組み合わせとして提示された。また、「ジューシーハムサンド」、「ソースが決め手の焼きそばパン」、「3種チーズのミートソースドリア」とも相性が良いと語った。
両社は2025年大阪・関西万博会場での試飲イベントで7月22日に約1,200杯を提供し、来場者の約9割から「すっきりして飲みやすい」「雑味が少なく新しい」と高評価を得たことを受け、自信をもって全国展開に踏み切ることができたとする。
セブンカフェは2013年の販売開始以来、今年4月に累計90億杯を突破した。2026年秋には100億杯の大台に達する見込みだ。日本最大規模の販売チャネルに水素焙煎技術が加わることで、環境に貢献する水素社会の実現を一段と加速させる可能性がある。

阿久津社長は「セブンカフェは挑戦の歴史。味と環境の両立で新たな価値を提供し、街の人を幸せにする一杯にしたい」と締めくくり、UCCの芝谷社長も「味わいを楽しみながら未来を考える。コーヒーの可能性を広げる第一歩になる」と語った。日常の一杯が、未来のエネルギー社会への橋渡しとなりそうだ。







