神明と木徳神糧、合弁会社を設立/神明の九州工場を共同運用

左から木徳神糧の鎌田慶彦社長、神明の藤尾益雄社長
左から木徳神糧の鎌田慶彦社長、神明の藤尾益雄社長

神明と木徳神糧は11月10日、都内で米穀事業における合弁会社を設立することを公表した。合弁会社は日本精米センター(株)という名称で、設立日は来年の4月1日を予定。代表取締役会長に木徳神糧の鎌田慶彦社長、代表取締役社長に神明の藤尾益雄社長が就く。佐賀県の鳥栖市にある神明の精米工場として稼働している工場を分社化し、木徳神糧が出資する形となる。株式保有は50:50。

直接的な端緒は木徳神糧の福岡の拠点が地主の都合で立ち退かなければならなくなったことにある。別の場所に新工場を建設するとなると莫大な資金が必要となる。他方で九州という限定した市場エリアでは、生産効率を上げることが大きな課題でもあった。このような事情から提携関係にある神明に協業を打診したという。

もっともその背景には、米穀卸業界を取り巻く経営環境の変化がある。人口減少や食生活の多様化にともなう米消費量の減少に加え、農業従事者の高齢化や気候変動による不作など供給面でも不安定な状況が続いている。燃料費や物流費の高騰、労働力不足による人件費の上昇なども加わり、経営を圧迫する要因は増している。地方における配送網の維持は困難を極めており、効率化と協業体制の構築が急務となっている。

さらに大規模生産者は数社が集まって法人化し、乾燥施設や精米施設を協働運営するケースが増えており、生産者の直売も急速に増加している。こうした流通の変化も背景にある。さらに今般の米騒動では、旧来の米卸の高コストが批判にさらされる局面もあった。今回の合弁事業は米卸の生き残りを見据えた、コスト低減への挑戦でもある。

このような経営環境の下、精米工場は単なる加工拠点から「地域農業のハブ」「消費者価値創出の場」への進化をし、消費者・生産者・流通業者をつなぐ中核として、柔軟性と高付加価値を両立する体制づくりが必要だとする。

加えて消費者ニーズの多様化と流通構造の変化に対応し、品質管理・小ロット対応・付加価値創出などの役割を担う重要な拠点(高品質・安全性の確保、多品種・少量生産・健康志向への対応、環境配慮)と位置づけ持続可能な工場運営を行っていく必要があるとの両者の認識が一致し、米穀事業を中心とした新たな事業展開を目的とした合弁会社の設立に至ったという。

合弁会社の主な取り組みは、

〈1〉環境対応への取り組み=省エネルギー設備の導入及び太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用を推進し、環境負荷の低減を図る。

〈2〉高効率・省力化の実現=高効率な設備の導入と自動化を進めることで、少人数での運営が可能なコンパクトかつ低コストな工場体制を構築する。

〈3〉高度な工場・品質管理体制=国際認証の取得やSDGsへの取り組みを通じて信頼性の高い製造環境を提供する。

〈4〉柔軟な在庫機能の確保=原料サイロを活用し、十分な在庫機能を確保することで、産地からの物流課題に柔軟に対応できる体制を整える。

〈5〉共同配送による物流効率化=九州全域へのアクセスに優れた工場立地を活かし、参画企業感での共同配送を実施。物流の効率化を図るとともに、地域の物流課題に対応する

――以上5つとなる。

現状九州工場の稼働率は50~60%だが、合弁化することで80~90%を見込めるという。原料の調達は従来通り各社で行うとしている。なお工場収容能力は 180tサイロ×23基で4,140t。

方式の異なる無洗米について、木徳神糧の従来の九州工場には設備を備えていなかったが、今後は製造設備の設置も検討する考えを示した。

神明の藤尾社長は日本精米センターを作った意義として「今回の合弁会社を作った大きな目的の一つが、やはり日本の農業、食を守るということで、当社と木徳神糧が協業することにより、将来にわたるお米の安定供給、農業の安定への貢献を目指していきたい」と述べた。

〈米麦日報2025年11月11日付〉

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