日清オイリオグループ・三枝理人取締役専務執行役員「価格改定の完遂という最優先課題を断固やり遂げ、強固な事業基盤の再構築を」【製油メーカー役員インタビュー】

日清オイリオG 三枝理人取締役専務執行役員
日清オイリオG 三枝理人取締役専務執行役員

――まずは上期の総括を

極めて厳しい経営環境での展開を余儀なくされた。諸々のコスト高騰が継続し、主要原料の油脂コスト圧迫が一層深刻化した。物価全般の高騰による節約志向や生活防衛意識が強まり、市場環境は著しく冷え込んだ。急激なコスト上昇を吸収するため進めた価格改定の浸透は、想定よりもはるかに難航した。

物価上昇の影響を受けやすい家庭用は販売数量の大幅な減少を招いた。業務用は価格改定を優先した結果、一部販売ロストが発生し、販売数量はわずかに減少した。

価格改定が計画通りに進まなかったことによる粗利単価の低下と販売数量減の二重苦で、食品事業は大幅な減益となった。下期の収益回復に向けて課題解決に取り組んでいる。

同時に、価格改定を最優先としたことで、業務用、家庭用とも販売量が市場平均を下回ったことも課題だ。10月以降は市況全体に動きがみられる中で、大手流通の理解も進み、面としての一定の改定が浸透している。年内には計画の7~8割程度の実勢化に向けた交渉を鋭意進めているが、目標の改定幅には届いておらず、年明けも引き続き価格改定に注力していく。

――下期の方針について

上期の大幅な減益結果を重く受け止め、背水の陣で収益回復に取り組む。価格改定の完遂という最優先課題を断固としてやり遂げ、適正な収益性を確保することともに、販売面の課題を確実に乗り越え、利益を生み出せる強固な事業基盤の再構築をやり切る。

〈業務用は機能性油脂の販売強化、拡大戦略を20年間取ってきた成果出ている〉

――業務用の施策は

前中計から継続して、既存顧客の販売量回復と新規開拓に取り組んでいるが、価格改定を進める中で、特に汎用油の斗缶製品は計画通りの物量を確保することができず、全体として前年をわずかに下回る結果で着地した。一方、「長持ち油」や「吸油が少ない長持ち油」など機能による差別化を訴求したフライ油は順調に伸長し、販売量の底上げに寄与した。

下期以降は厳しいコスト環境が想定される中、価格改定による適正価格での販売を実現することが最優先課題だ。最需要期の10~12月で目指す価格改定の水準にまで実勢化できるかがポイントとなる。現時点では加工メーカー向けは段階的に浸透しているが、今後パッケージ品を中心に粘り強く丁寧な説明を重ね、顧客の理解を進めて適正価格の販売を維持していく。

人手不足や食品の品位維持、おいしさと健康価値の向上、フードロス対策などユーザーが抱える多様な課題に対し、これまで培ってきた油脂技術を駆使して課題解決を行ってきた。引き続き、需要が多い炊飯油、炒め油、麺さばき油などの機能性油脂の販売強化を進めていく。この秋に発売した「日清炊飯油CH2」は、5℃以下の温度帯でもご飯の老化を抑制し、おいしさを維持できる商品だ。最近増えている鮮魚売場の寿司や低温流通されるセントラルキッチンの米飯商品などの用途で高い品質改善効果が得られると、好評を博している。

当社の持つ課題解決情報をより広く届けるため、飲食店向けの業務用向けサイト「日清オイリオ業務用お役立ちサイト」を更に充実させるとともに、メルマガ配信やキャンペーン企画も活用し、大手企業を中心に顧客との接点を広げ、新たな顧客の開拓につなげていきたい。

――家庭用市場は数量・金額とも減少している

家庭用は単純に数量が元に戻るとは思っていない。足元だけではなく、中長期的な課題になる。汎用油はこれまで、価格が下がれば量が増えるトレードオフだったが24年、25年上期は両方減っている。

高齢者や単身世帯が増え、共働き世代が増加しているが、当社では20年前からこういった変化は予想していた。

業務用の拡大戦略を20年間取ってきた成果が出ている。とはいえ、いよいよ20年前に予測したことが、この5年前ほどから現実化しているという印象だ。ましてや、中食は更においしくなっており、冷凍食品の味も向上している。ますます調理機会は減っていくのではないか。足元では米の高騰とともに、食品価格が上がっていく中、家計が圧迫され、加えて家庭での調理変化(オカズの皿数減少、麺類へのスイッチ)が起きていることも市場縮小の要因となっている。

製油業界ではこれまで、原料価格の高騰と為替の影響でコストが上下するたびに価格改定を行っていた。最近はそこにユーティリティーコストが加わり、人件費も増加し、オイルバリューの高騰という問題が顕著に表れ、この上期の業界各社の決算に顕著に影響している。この先、緩和されていくことは考えられない。オイルバリューの上昇、ミールバリューの低下、それによる採算悪化を考えていくと、汎用油では、目標としている改定幅まで到達すれば、現在のコスト環境が続く前提だが、次年度の発射台には到達することができる。

現在、残りの改定幅について、PBも含めて鋭意交渉中だ。1~3月の早い時期に結果につながるよう交渉を続けている。

〈大豆油糧日報2025年12月4日付〉

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