【食用油の市場動向】各種コスト上昇/オイルバリュー50%超えの異常事態、下期は価格改定に注力

食用油売場
食用油売場

物流費をはじめとした各種コスト上昇に加え、為替の円安傾向も続く中、オイルバリューは一時50%を超えた。「オイルバリュー」「ミールバリュー」とは、大豆を搾油した時に得られる油と大豆かすの相対的な価値比率を指す業界用語だ。

オイルバリューの上昇は、裏返せばミールバリューの低下を意味する。製油メーカー役員への取材では、「かつてミールバリューが50%を下回ったのは記憶にない」と話し、異常事態であることを物語る。

もちろん企業努力だけで吸収できるはずもなく、昨年10月から今年の4~5月、9月と製油メーカー各社は3回の価格改定を行ったが、まだ道半ばという声が多く聞かれる。下期は必要な改定幅までの価格改定の完遂に注力する方針を各社とも掲げている。

家庭用は汎用油の物量減と金額減のダブルパンチで危機感が募る中、キャノーラ油の3分の2を占めるようになったこめ油や価格上昇が落ち着いたオリーブ油の販売強化に取り組み、業務用では引き続き、付加価値品の提案を進めるもようだ。

物流費やエネルギー費などのユーティリティーコストや人件費の上昇が製油メーカー各社のコストを圧迫している。これらは全産業の共通課題で、今後も上がることはあっても下がる可能性は低い。世界的な食用油の需要増やエネルギー需要との競合はここ数年の流れだが、今年6月に国環境保護庁(EPA)がバイオ燃料の混合比率の引き上げ計画を発表したことで、オイルバリューの上昇、ミールバリューの低下が一層進んだ。国際相場に左右されるミールの販売価格低下による油脂コストの上昇なども加わり、上期(4~9月)の各社の油脂事業の営業利益は大幅減益を余儀なくされた。

価格改定の進捗について各社は、「想定よりもはるかに難航した」、「段階的に留まり、改めて価格形成の難しさを痛感した半年だった」、「ある程度の理解は得られたものの、要求水準まで改定できたとは言い難い」としており、引き続き粘り強く交渉し、最優先課題として必要な改定幅までの理解を得ることに努めている。

〈家庭用食用油の金額は3.4%減の886億円、こめ油はキャノーラ油の3分の2まで成長〉

日清オイリオグループによると、家庭用食用油の4~9月の市場動向は、金額は前年同期比3.4%減の886億円、物量は4.7%減の13万tと、ともに減少した。金額では、汎用油は10.8%減と2ケタ減だった。付加価値型のごま油は2.9%減、オリーブ油は8.2%増、サプリ的オイルは昨年好調の反動もあり17.6%減(前々年同期比13%増)となった。こめ油は5.7%増の91億円となり、キャノーラ油(138億円)の3分の2のボリュームまで成長している。

汎用油は物量でも7.9%減と落ち込んでいるが、オリーブ油は物量も7.3%増と、主産地スペインの生産量回復もあり市場回復の兆しがある。

ごま油は物量でも4%減とマイナスだが、引き続きオリーブ油に次ぐ金額でナンバー2の位置を維持している。

〈大豆油糧日報 2025年12月10日付〉

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=税込15,811円、6ヵ月=税込30,305円、1年=税込57,974円