【2025年冷凍食品動向】家庭用数量は前年並み、業務用は数量・金額ともに堅調推移【冷食協会・藤江会長】

藤江太郎会長
藤江太郎会長

日本冷凍食品協会(冷食協)は12月9日、記者団に向けて年末記者会見を開催し、藤江太郎会長(味の素会長)が冷食業界を取り巻く環境などについて話した。2025年の冷凍食品国内生産量は、1月~10月は前年同期比98.3%で推移した。主要メーカーの上期の実績や下期の取り組みなどをふまえた2025年の国内生産量は、前年並みの152万トン~155万トン、金額ベースでは、各社の価格改定の効果もあり前年を上回る見込みだ。

冒頭のあいさつで、藤江会長は次のように話した。

「はじめに、冷凍食品の価値に見合った適正な価格転嫁の必要性を広く知っていただきたいと思っている。わかりやすい例として、ビッグマック指数に対する冷凍食品のグラム単価でお伝えすると、日本のビッグマック指数は約480円、これは日本の冷凍食品のグラム単価で約4割にあたる。一方アメリカでは、ビッグマック指数は約900円、アメリカの代表的な冷凍餃子を例にとると、グラム単価では約6割となる。少なくとも日本でも6割の価値は十分あるのではないかと考えている。

会長に就任してから、賃上げと値上げと景気の好循環について言及してきた。もちろん各社コストダウンの努力も継続していただきながら、適正な価格転嫁を許容できる社会づくりに向け、協会としてもしっかりと取り組みを進めていく。

次に、変化への対応。目まぐるしく変化する社会環境において、何が起こるかわからないという前提のなかで、実力をつけそれを継続していくことが重要だ。協会としては、変化に関する情報を素早くキャッチし、加盟企業に発信することで、各社の迅速な対応につなげられるよう尽力していきたい。

最後に、協調領域の取り組み強化を推進していく。具体的には環境、物流、食品表示、協会運営の4点に注力する。食品表示では消費者庁における表示ルール廃止への対応、物流ではD+2への対応や予約システムへの課題、将来的なパレットの活用の推進などの取り組みを進めていく」

〈家庭用・業務用の各市場動向と認識〉

「2025年度の家庭用冷凍食品の生産動向について、数量ベースでは前年並み、金額ベースでは前年を上回ると予測する。各社の価格改定効果や、テレビCMなど販売施策を積極的に打ち出したことが奏功したとみる。一食完結型のワンプレートタイプなど生活者のライフスタイルに沿った新しい価値を創造した商品や、米などの価格高騰を反映した主食用の商品が好調であった。

家庭用の商品開発では、多様化する消費者のニーズをふまえ、手軽さや時短のみならず、品質、健康志向、環境配慮など、いろんな切り口での提案が広がっている。特に個食志向やライフスタイルの変化から、小容量や多品種、簡便調理型の商品が拡大している。健康関連でいえば、塩分や糖質、野菜の摂取量を意識したバランス型のメニューも増えている。

業務用商品は、外食、中食、給食などにおける調理現場での人手不足の拡大に伴う需要増で、金額・数量ベースともに堅調に推移しているとみる。今後も単身世帯の増加や家庭での個食化の進展に加え、女性や高齢者の社会参加の拡大により、時短や簡便化といったニーズを重視する人々の意識の変化は継続していくと考える。また外食、中食、給食などの調理現場における人手不足の深刻化による需要増は引き続き高まっている。こういった理由から、調理工程の効率化を支える商品や、本格的な美味しさを追求したような商品の開発や提案が進んでいるようだ。

業務用冷凍食品を手がけるメーカーでは、家庭用と同様にここ数年価格改定をしている企業が多いが、価格改定によって需要が落ち込む例は業務用では少ないという声が多い。

このように社会環境の変化はまさに冷凍食品需要への追い風と言える状況で、今後さらに大きくなっていくものと考える。引き続き冷凍食品に対するニーズをしっかり捉えて、業界が成長していくことが重要だ」(藤江会長)

〈冷凍食品業界のコスト環境について〉

「ご存知の通り、海外からの原材料や燃料は、円安基調から高騰が継続している。国内でも、天候不順で農産物の収穫が不安定であることに加え、特に米不足の影響による米価の高騰により生産コストが上昇傾向にある。

これらの理由から会員各社の多くはここ数年、複数回にわたって価格改定を実施してきた。冷凍食品は値上げによって売上が落ち込む商品も一部にはあるとはいえ、米価格高騰により主食用商品が伸長していたり、ワンプレート型商品などは依然として好調であるため、食品の中では数少ない成長分野であるといえよう。

米などの原料価格の動向は、現在かなり高止まりしている。今後価格が下がっていくということも想定はされるが、一方で天候などに左右されるため不安定であることは変わりない。これまで以上に生産者の皆さんとの関係構築に各社取り組まなければならない」(藤江会長)

藤江太郎会長
藤江太郎会長

〈2025年における協会活動の成果と課題〉

冷食協では主に広報活動と品質・技術事業の2つの軸で取り組みを進めている。

はじめに広報活動について、今年度は10月18日の冷凍食品の日にあわせ、10月17・18日に消費者向けのPRイベント「手間抜きレストラン」を開催した。

イベントの手ごたえについて、藤江会長は「大変有意義なイベントとなったが、その中で特に印象が深かったのが、ゲストの大友花恋さんが「手間抜き」という言葉を『手間を分け合っている』というポジティブな言葉で表現したことがとても印象的であった」と語った。

手間抜きレストラン
手間抜きレストラン
手間抜きレストラン試食
手間抜きレストラン試食

地方メディアミックスについては、今年は横浜・大阪・静岡の3地域において、ラジオ番組とタイアップしたイベントなどを行った。どうしても協会が東京に位置するということで、イベントが東京に偏りがちだが、冷凍食品のファンや会員企業は全国に点在しているため、地方に向けた広報活動は、エリアバランスなども考えながら今後も積極的に行っていく方針だ。

消費者向けPRイベントは、来年度以降も若年層に向けたアプローチを考えている。今年度のイベントの結果や会員の声をふまえ、現在事務局で検討を進めている。

新しい認定制度や認定マークをより多くの人に知ってもらうために、協会ホームページでの周知活動も展開した。今年は協会ホームページをリニューアルし、利用者にとってわかりやすく親しみやすい設計とした。

2026年度は、引き続き冷凍食品認定制度と新認定マークの周知活動を行うとともに、表示改正への対応を進める。

〈冷食日報 2025年12月10日付〉

媒体情報

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
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