【工場ルポ】冷凍納豆を1日約8~9万カップ製造、安全性にこだわり【日東食品】

大豆をカップやPSP容器に充填した後、被膜やたれ、からしを添付
大豆をカップやPSP容器に充填した後、被膜やたれ、からしを添付

納豆メーカーの日東食品(埼玉県桶川市)では、業務用の冷凍納豆や、給食・外食用の冷凍納豆を製造している。出荷先は主に千葉、群馬、埼玉など。1日に約8~9万カップ製造しているという。本紙では同社の工場を見学するとともに、納豆業界の課題について、長谷川健太郎社長(全国納豆協同組合連合会会長)に話を聞いた。納豆製造に数日を要することから、急激な需要の高まりに対応する難しさについて触れた。

製造工程について、まず、洗浄機で汚れや異物を除去したあと、大豆を浸漬させる。浸漬は時期にもよるが約16時間~20時間、ひきわりの場合は約2時間だ。この工程で生大豆120kgが、240kgにまで増えるという。浸漬槽の底にはチューブが設置されており、浸漬した大豆はチューブを通って下のフロアへ落とされる。

次に、下のフロアにある釜で大豆を蒸煮する。蒸煮した大豆に納豆菌を吹きかけ、大豆をカップやPSP容器に充填する。被膜やたれ、からしを添付し、パッケージフィルムをかけた後、金属検知器や重量検知器で金属の有無や重量を確認する。裏に賞味期限を打刻するが、同社が製造するのは冷凍商品のみのため、賞味期限は1年と長く、西暦のみ打刻している。

製品をコンテナに入れて、発酵室に入れる。時期や品種によって違いはあるが、経過時間に応じて室温を40~60度に変化させ、15時間以上発酵させる。発酵が終わったら、粗熱を取って冷蔵庫で熟成させたのち、冷凍し、段ボールに詰めて出荷される。

同社で重視しているのは安全性だ。品質管理室では、微生物検査を製造ロット毎に行っているという。納豆の粒を潰して培養し、雑菌がいないか確認している。また、段ボールは別室で開封し製造室に持ち込まないようにしている。器具洗浄室も別室に設けている。

〈製造に3~4日かかり即時供給に難しさ、人口減少の中で需給バランスが課題に〉

長谷川社長は、「納豆は単価が安いので、1時間あたりの生産量が大事だ。多く作った方が安く済む。しかし、生産が早く終わったとしても品質管理など人の目が追い付かない。そのため、発酵室は1日1回転が限度だと思う。また、作りすぎて単価が安くなるのもよろしくない」と指摘した。

また、納豆は製造に3~4日を要することから、突然需要が高くなってもすぐに供給できないという側面もある。すでに効率性を高めた体制で納豆を製造しているメーカーも多く「裏返せば、増産が難しいメーカーも多いということだ。人口が減っているなかで、(消費量の減少も見込まれるので)需給のバランスを取るのが難しい」との見方を示す。

原料動向について尋ねると、国産大豆と輸入大豆で価格差が縮んできたことから、国産に切り替えるメーカーも一定数見受けられるようだ。一方で、「国産を使用したからといって販売価格をアップできるとは限らない」と話す。「消費者は価格に引っ張られる傾向にある。国産も重要だが、要素の1つに過ぎない。産地より価格の方がやはり重視される」と述べる。

日東食品 長谷川健太郎社長(全国納豆協同組合連合会会長)
日東食品 長谷川健太郎社長(全国納豆協同組合連合会会長)

〈大豆油糧日報2025年12月24日付〉

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