「アメリカの日本食レストランでNo.1を目指す」くら寿司のアメリカ展開、その戦略と展望【くら寿司USAトップインタビュー】
「くら寿司」はアメリカでのチェーン展開に力を入れている。「くら寿司」のアメリカ初進出は2007年、和食レストランだった。しかし、これは軌道にのらなかった。2009年に本業の回転寿司として出店し、「くら寿司」カリフォルニア州アーバイン店を開業した。こちらは軌道にのって店舗数も増えていき、2019年には「くら寿司USA」がナスダックに上場した。店舗数は2025年12月の時点で22州とワシントンD.C.に83店舗を展開している。
年間20%増の新規出店を目標とし、出店計画中のものを含めると2026年にはアメリカで100店舗を超える見込みだ。「くら寿司」アメリカ展開の戦略と今後の展望について、「くら寿司USA」のCEO姥 一(うば はじめ)氏に話を聞いた。
――2025年の「くら寿司USA」を振り返り、いかがでしたか。
2025年度の前期(8月31日まで)を振り返ると、「くら寿司USA」の売り上げは約2億8,200万ドルでした。日本円にすると、約400億円。売上を昨対比で見ると、既存店の売上は昨対比98%でした。既存店売上の昨対比が下がってしまったのは、自社バッティングが原因です。同じ地域で複数出店した場所があったので、お客様を奪いあってしまったと分析しています。
――今後の成長戦略を聞かせてください。
当面は年間20%以上の新規出店という成長率を維持することを目標としています。利益よりも成長を重視するということです。店舗の新規出店を抑えて、売上の良い店舗に注力すれば利益は上がります。一方で、新規出店には初期費用のコストや、うまくいかないリスクがあります。しかし、“回転寿司チェーンをアメリカで展開しているのは「くら寿司」だけ”という現在の状況には大きな価値があると考えています。
この先駆者利益を最大化するため、今は利益よりも成長を最優先とし、出店数を増やして「くら寿司」をアメリカに根付かせることに注力しています。社外のアナリストに分析を依頼したところ、アメリカ全土で300店舗は見込めるとの答えが返ってきました。私個人としては、500店舗はもちろん、1,000店舗も可能だと考えています。
――「くら寿司USA」の強みは何ですか?
アメリカでは回転寿司という業態モデルがとても珍しいので、まず注目してもらえます。アメリカでも「ビッくらポン!」や「オーダーレーン」などを導入していますが、これらもとても人気があります。
「ビッくらポン!」はアメリカ進出当初は導入していなかったのですが、その後に導入した店舗では導入前と比べて売上が30%アップという次元の違う売上になりました。客単価にして1人あたり2ドル上がったというデータもあります。これはつまり、「ビッくらポン!」導入後には1皿分多く食べてもらえるようになったということです。
アメリカの「ビッくらポン!」は日本と少しシステムが違い、15皿食べると必ず1つ景品がもらえるという仕組みです。このハードルが高いという意見がありました。「くら寿司USA」でお客様が食べる皿数は平均1人6皿です。子ども2人の4人家族で来店された場合、4×6で24皿が平均ということになり、30皿は確かにハードルが高い。そこで、1つ目の景品は15皿目で、2つ目の景品は25皿目でもらえるように「ビッくらポン!」をリニューアルしました。
また、注文した寿司が高速で席まで届く「オーダーレーン」も人気があります。寿司が高速で運ばれてきて目の前で寸分たがわずピタッと止まる様子を、動画で撮ってSNSにアップしてくれる方も多く、それが新しいお客様への広告にもなっています。アメリカでは電車などの停車位置も大雑把なので、目の前でピタッと止まるところに“日本らしさ”を感じて、楽しんでもらえているようです。
――「くら寿司USA」は、どのような価格帯で提供していますか?
アメリカの個人寿司店と比べると、「くら寿司USA」の価格帯はおよそ半分です。
「くら寿司USA」では毎月フェアをやっていますが、「本まぐろトロフェア」と「和牛フェア」は毎回盛況です。「本まぐろトロ」も「和牛」も1皿2貫を3ドル85セントで提供しています。和牛はアメリカでも人気がありますが、アメリカの個人寿司店で和牛寿司を食べたら1皿15ドルから20ドルはします。“アメリカでこの値段で和牛を出せるのは「くら寿司」だけ”、そのことをお客様もわかっているので和牛フェアは毎回大盛況です。
――アメリカでの人気メニューは?
1位炙り牛肉、2位サーモントロ、3位炙りサーモンマヨ、4位クランチーロール、5位サーモンです。ロール寿司はやはり人気で、7位にゴールデンクランチロール、8位にカリフォルニアロールがランクインしています。
ちなみに、日本での人気メニューは、1位熟成まぐろ、2位サーモン、3位はまち、4位ねぎまぐろ、5位炙りチーズサーモンです。

――アメリカでまぐろの人気がないのはなぜですか?
まぐろは生魚特有の味と香りが強いのと、そもそも生のまぐろを食べる習慣がないからです。サーモンも生で食べる習慣はないですが、それでもまぐろよりはサーモンの方がアメリカ人にとって身近な魚です。
まぐろの赤い色も血を連想させて食指が伸びないという理由もあるかもしれません。それに対して、サーモンは脂に甘みがあって食べやすく、見た目がオレンジ色なのも受け入れやすい理由です。
――アメリカで寿司を出すにあたり、工夫している点はありますか?
日本人が寿司と聞いてイメージする握りや軍艦はメニュー数を絞り、ロール寿司、ハンド寿司(手巻き寿司)を充実させています。また、寿司(生魚)が苦手な人でも日本食レストランとして楽しめるように、ラーメン、うどん、てんぷら、デザートなどのメニューも充実させています。
アニメなど日本のカルチャーが好きなアメリカ人と、「くら寿司」の親和性は高いです。ラーメン、とんかつといった日本食も人気ですが、アメリカ人はそういった日本の食べ物をアニメで知ったという人が多い。“アニメで見たあの食べ物だ”という憧れがあり、寿司もそのひとつです。
「くら寿司USA」に来てくださるお客様は、日本のアニメやゲームが好きな人が多いので、任天堂のゲーム「星のカービィ」とコラボしたところ大盛況でした。今後も日本のアニメやゲームとのコラボを積極的にやっていきたいです。
――今後の目標をお聞かせください。
「くら寿司USA」は現在、アメリカの持ち帰りを除く寿司チェーンの中で売上No.1です。今後の目標としては、数年後には持ち帰りを含めた寿司チェーンの中で売上No.1を目指し、ゆくゆくはアメリカの日本食レストランの中で売上No.1を目指します。







