〈シグナル〉数量ピークの先にあるもの

清涼飲料市場は、長らく右肩上がりで成長を続けてきた。2024年の国内生産量は約2362万kl、生産者販売金額は約4兆7314億円と過去最高を記録した。だが、25年は販売金額が前年並みとなる一方、生産量は前年比3%減で着地した見込みだ。

キリンビバレッジの井上一弘社長は会見で、24年が飲料市場の数量のピークとし、「数量・シェアを追っていると最終的に利益が残らない」と指摘。人口減少などを背景に減少局面に入るとの通しを語った。

販売数量が落ちた要因の一つは、大容量製品の価格を各社が定価に近づけたことだ。コスト上昇が続く中、生活者に割安感のある大容量は、メーカーにとって収益性の厳しい製品になっている。

これまで市場拡大を支えてきたのは生活者の意識の変化だ。お茶や水が「家で淹れる」「無料」のものから「選んで買う」ものへ変わり、有価飲料比率が高まった。無糖や機能性、容器の多様化、自販機の進化、資源循環などの付加価値が消費の底上げにつながってきた。

一方で、価格が上がると選択肢はプライベートブランドへ移りやすい。業界ルールや環境対応の枠組みの外で供給される製品もあり、価格だけで選ばれる構図が強まれば、品質や持続性という価値が埋没する懸念が残る。

販売量を競う市場から価値を競う市場へ。メーカーも小売りも適正な利益を確保しつつ生活者に評価される製品を提案できるか。清涼飲料市場は、その転換点に立っている。